act 30

ふわり。座り、自分に体重をかけている神楽の匂いが嗅覚を刺激した。
沖田は、無意識に神楽を抱き締める手に力を込めた。それに気付いた神楽も同じように力を込めた。
沖田の体に神楽の全体重がかかる。それと同時に体全体に神楽の温度が伝わった。

逢いたかった。そう何度も神楽はつぶやいた。俺も。沖田はそう口に出そうとしたが、やはり少々照れくさく、いう事はなかった。しかしその思いは表情にでていた。
新撰組一番隊隊長、沖田総悟。レッテルが剥がれた気がした。もう何もかもどうでもいい。そんな思いに捕われた。
よく、あたしの気配が分かったナ。神楽が言った。俺も行こうとしたから。沖田は思わず途中まで口にする。
神楽ははにかんだ。そして沖田の隊服をすりすりと、甘えた。
神楽は沖田の体から頭を出す。沖田を見上げた。瞳が重なった。神楽はぐいっと近づき、沖田のほっぺにちゅっと音をならした。
又沖田の胸にすりすりとする。目を見張る程の甘えっぷりに、逆にどうしていいか分からず頬を掻いた。
「もっと逢いにきてヨ。全然足りないアル。」
ストレートな神楽の言葉に沖田は動揺した。決して悪い意味ではなく。だ。
何も、言えない沖田をそのままに神楽は口を開く。
「電話、携帯買ってヨ。そしたらもっとお前の声聞けるアル。声が聞けなくてもメールが出来るアル。スキって伝えられるネ。誰にも気兼ねなく話せるし、ね、沖田。ね、いいデショ?」
神楽は下から上目使いで沖田を見つめる。なんだってコイツは…。沖田は思わず掌で顔を覆った。

一瞬にして神楽の顔が曇った。沖田の胸を押し、体を離した。そして立ち上がろうとする。
その手を沖田は掴む。ただ神楽の態度の違い、その意味は分からなかった。そんな沖田を他所に神楽は独り言の様につぶやいた。
「銀ちゃんの嘘つき。新八の嘘つき。」
沖田は首をかしげ、口を開いた。
「何がでィ。」
神楽はぎょっとした。何でもないアル。そう言った。しかし、一人で一瞬考える様な仕草をした。
軽く唇を噛む。尖らせた。
「銀ちゃんと、新八が…。ほ、惚れた女の我侭なら喜んで聞いてくれるって…。」
そこで一旦切る。そして、あぁぁ!違うアル!そうじゃなくて!そう悶絶した。首を振りまくる。
神楽の長い髪がふわりふわり、浮く。沖田の頬に触れる。神楽は頭を抱える。その顔は真っ赤に染まっている。
沖田は手を伸ばす。首を振りまくる神楽の首を捕まえた、引く。
ぐしゃぐしゃの髪をそのままに、神楽は引き寄せられ、そのまま塞がれた。
軽く。鎮静剤を注入された様に気持ちが落ち着いた。

そっと目を開ける。
「アレは…そう言う意味じゃねェ。」
沖田の言葉に、何が、どう言う意味じゃないんだと神楽は首をかしげた。
「おめーが、あんまり…そのナンだ。アレだ、アレ。」
神楽は益々首をかしげる。
「っに、鈍い女でさァ。可愛らしいっつってんでィ。そのぐらい察しろ。てか気付け。」
神楽の顔は、目は開き、口をぽかんと開けたまま、固まり、淡く染まった。
まさかあの沖田から、この様な台詞がぶっとぶなどとは思わず。本気で驚いていた。
ぱちくり、目を瞬きさせた。

沖田はよほど恥ずかしかったらしく、神楽に背を向け、頭をガシガシと掻いた。
「け、携帯くれェ買ってやらァ。逢いてェっつーなら――――。ぐェ!」
神楽が沖田の背に飛びついた。首に腕を巻きつける。
く、苦しい。離せこのクソ女…。沖田は言う。神楽はもっときつく抱き締める。
俺を殺す気か…。沖田はもがく。神楽は両手をぱっと離した。そして沖田の前に回りこんだ。
ちゅ。不意打ちに沖田は固まった。ちゅ。ちゅ。ちゅぅぅぅ!。

神楽は沖田にコレでもかと甘えた。
神楽は沖田を押し倒した。神楽は沖田の上に寝そべった。ちゅ。また落とした。ちゅ、ちゅ、ちゅ。
「大好きアル。すっごくすっごく好きアル。」
神楽は沖田の上に寝そべったまま、沖田の心臓に耳をピトっとくっつけた。
その間、沖田といえば、神楽の行動に唖然としていた。やっと意識を取り戻し、神楽の脇に手を入れ、ぐいっと自分の元まで抱きあげた。

目線があった二人、どちらともなく、それは重なり、混じわった…。



……To Be Continued…

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