act 27

「てめーの、そうゆうトコ。マジで腹立つからやめろィ。」
沖田は神楽の体を銀時から容易く離す。そして、背中をぐぐっと押し、障子の向こうへと押しやった。
神楽は不満そうな声をあげた。が、沖田が顎を神楽の部屋の方へと合図させると、神楽はしぶしぶ部屋に入っていく。神楽自身も自分の格好が、沖田の機嫌に触れる事は理解できていたので、自分の部屋に入ってすぐ着替えを始めた。

「旦那。チャイナはいつもあんな格好でうろついてんですかィ?」
先ほどの沖田とは打って変わり、その視線を銀時に叩きつける。銀時は冷や汗を掻き、たじろいだ。
「い、いやァ、ま、毎日じゃねェよ?た、たま〜にだな…。」
新八は、銀時と同じ様に冷や汗を掻き、沖田と視線を合わせないようにした。
沖田は、その視線を新八にも叩き付けた。ビリビリとその視線が二人に突き刺さる。
すると、其処に神楽がひょこっと顔を出した。いつもの淡い赤のチャイナ服と、今日はスパッツ。
神楽も馬鹿ではない。沖田の機嫌が悪いのは目に見え、認識している。
「ご、ご飯食べよ?」
神楽は沖田の服をクイクイと引っ張った。沖田はその手を払った。
銀時と新八が帰って来た、と、言う事は神楽も必然的に万事屋に帰ると言う事。この基本的にだらしない銀時と神楽が、自分がいくら注意したとしても、いちいちそれを守るとは思えない。まして寝ぼけて布団に入るなど防ぎようがない。
それがどうしても嫌だった。

この短い時間。最初の最初から、その小さな気持ちは自分の中で既に種を撒かれていた。
だから、援交騒ぎの時、頭に血が上ったのだ。それからその種が芽をだすのは、あっと言う間の事だった。
ぐんぐんと伸びて行き、花を咲かせた。綺麗な桃色の華だ。その華を何て呼べばいいのか沖田には分からない。

その華に、神楽と名前が勝手に付いた。可愛げで、しかし棘もある。自分の思い通りにならない華。
咲き誇る華を誰にも獲られたくない。摘まれたくない。触れてほしくない。
沖田は認めてもらえるためなら何でもやる覚悟だった。だが、それと今の事とは話が別。

自分の女へと成長した神楽を、他の男と住ませるなんてできるはずがなかった。
例え神楽が家族だと言い張っても…。だ。
「旦那。こいつを、家から出してもらえやせんか?」
「それはできねェ。」
銀時は即答した。沖田はその瞳の光をさらに強くさせた。
「何故ですかィ?」
「俺はこいつを預かってる身だからだ。こいつの親父は俺を信用してこいつを地球(ここ)に置いてくれている。下手すりゃ、無理やり連れていかれちまうぞ。」
銀時の言葉に思わず沖田は言葉を詰まらせた。
しかし、嫌なもんは嫌なもんであって…。
「ねェ、沖田。銀ちゃんは家族アル。」
出た。家族。沖田は思う。家族。家族。だが所詮血の繋がりはない。赤の他人。男と女だ。
何処でどう間違って、銀時がキャバ嬢と間違い神楽に手を出さないかと不安で仕方ない。
「ベタ惚れじゃねェか。」
土方が言った。沖田がスッと視線を流し睨む。土方はふぅ。ため息をついた。
「総悟、もうちっと大人になれ。てめーの女も信用できねェのかよ。」
土方の言葉に、近藤も言葉を続けた。
「そうだぞ、総悟。お前のはやる気持ちも分からんでもない。しかし、ここはチャイナさんの事を信用してみないか?」
すかさず沖田が口を開く。
「はっきり言って信用できねェ。こんな男が居る前で、あんな格好を平然といつまでもしてるって事が問題なんでさァ。」
確かに。思わず全員が頷いた。
じゃあこうはどうだろう?近藤は口を開く。
沖田が、神楽のパジャマを何着かかってやり、それ以外は着ない。さらに夜だけは銀時の部屋は内側から開かないようにする。今出来ることをやったらどうだろうかと。
やはり沖田は近藤に弱い。さっきの視線はどこへやら、ふぅ。ため息を付いた。
「分かりやした…。」
そう言うと、身を翻した。着替えるのだと分かり、それぞれが沖田の部屋を出る。
廊下を歩きながら、銀時は神楽の首根っこをひっ捕まえた。
「おめーの所為で、近々銀さん暗殺されそうなんだけど…。」
そういいながら、銀時は神楽の顔を覗き込んだ。すると神楽が口を尖らしているのが見えた。
何か言いたそうにしている神楽。銀時は頭を掻く。何か言いたい事があんのか?そう聞く。
「何で、一人暮らし、しちゃ駄目アルカ?」
拗ねた様に口を開く神楽に、何で家を出たいんだ?そう銀時が聞いた。
「だって、だって…。」
そこまでしか神楽は言わない。銀時は、はぁぁ。息をかったるそうに出した。
ようは、そう言う事。不安なのはお互い様だと言う事。沖田が不安な様に、神楽自身も離れて暮らす事が、今では考えられなくなったと言う事。一人暮らしをすればもっと、側に居られるのではないか。沖田が何処にも行かないで、自分の側に居てくれる。そんな思いがあったと言う事だった。

「おめーらが、一年続いたら、俺がハゲにいってやるよ。」
「無理アル!」
即答で神楽は答えた。だって、きっと飽きられちゃうヨ…。そう後に続けながら…。
「大串君も言ってた様に、もうちっと、あいつを信用しろ。じゃなきゃどっちにしろ、テメーらは別れる羽目になっちまわァ。」

そう銀時はいいながら、さも当然の様に、食堂へと足を向けた。
「だって、不安なのヨ…。」
視線を落とし、ぽつり、神楽はつぶやいた…。



……To Be Continued…

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