act 26

ぎゅって、ぎゅって抱き締められた。
と思ったら、あたしに布団かぶせた。おかげで視界真っ暗。な、何事?って思ってすぐに布団から出ようとしたと所で、あいつが、銀ちゃんに口を開いたのが分かった。
だから、動けなくなった。そう、きっとそれを分かった上で、あいつ、こんな事したんだって、分かった。

だから、あたし、布団の中で、そのまま居る事にした。
こ、恐かったからじゃないアル。だ、断じて、修羅場が恐かったんじゃ…。
だって、あいつが、守ってくれるって、大人しくしてろって囁くから…。
あたしの心臓がこんな時だけど、きゅんって音を鳴らしたノ。
女の子で居たい…。守られたい、甘えたい…。ちょっとダケ、思ったンダ…。


「沖田くん?何してくれちゃってんの?こんな事させるために此処に居させた訳じゃないんだけど…。」
口調は、至っておだやか、しかし、その目だけは、明らかに普段とは違っている。
そんな銀時の瞳を、寝着のままだったが、沖田は真っ直ぐ見つめた。
「旦那が思ってる様な事は何もしちゃいませんぜ。悲しくも未遂でさァ。」
「沖田く〜ん。こいつは簡単に手ェだしていい女じゃねェって分かった上での言葉か?やりたい盛りなら、俺がイイ店紹介してやるよ?」
沖田は、銀時の言葉を鼻で笑った。
「旦那。すまねェが、俺は体だけの空っぽな女じゃ勃ちやせんぜ。」
「じゃ、どうゆうこった。この短期間でお互いが恋に落ちましたって、そんなおとぎ話みたいな話し信じると思うか?やりたい盛りのお前が、体のいい神楽見つけてって思った方がずっと、しっくりとくるぜ?」
「俺が本気だっつったら、一体旦那はどうやったら、こいつとの事認めてくれるようになりやすか?」

銀時は勿論、新八も、この言葉には驚き、目を丸くした。そして、今まで傍観者を決めていた土方の顔には、少々の笑みが浮かんだ。途中から気付いた近藤も、はっきりとした沖田の物言いに、誇らしそうに、沖田を見つめた。
頭には、寝癖が少々ついているが、その緋色の瞳だけは、真っ直ぐな光を放ち、銀時を見ている。
そこには濁りはなく、綺麗な色だけが揺れていた。

全く緊張していない訳がない。沖田の手には、珍しく汗が滲み、何度も握り返していたし、その瞳も、実は逸らしたそうに何度もぶれた。それでも其処を譲らなかったのは、間違いなく、布団の中で会話を聞いている神楽のためだと伝わった。沖田の喉仏が、銀時が口を開くまで、何度が上下した。
こんな時の銀時の表情は、まったく何を考えているのか読み取れない。怒ってるのか、笑ってるのか、さっぱり…。これには、流石の沖田も一度冷や汗を伝わした。

いつ飛んでくるやも知れぬ拳を、かわそうか、受けようかとも、真面目に考えた。
すると、銀時は沖田を通り抜け、其処に居る、隠れている女の子の元にしゃがんだ。そして、ゆっくり布団を捲った。桃色の柔らかい、ボサボサの髪が姿を現す。手をいじいじと遊ばせて。

「で、お前はどうなの?沖田君ばかりにしゃべらせてねェで、ちったァお前の言葉も銀さん聞きたいんだけど…。」
遊ばせていた手をぎゅっと握った。喉を鳴らす、俯いたままだった顔をゆっくりとあげた。
「沖田に付き合ってくださいって、あたしが言ったアル…。」
これには、皆驚いた。顔を見合わせる。そこに、沖田の言葉が入る。
「ま、先に惚れたって言ったのは俺ですがねィ。」
肩の力を抜いた沖田が其処には居た。銀時の心情を汲み取ったと言える。
「ぎ、銀ちゃん、あのね、あのねェ…。あたし…。」
そう話しかけている神楽の頭に、大きな掌がのった。何度ものせられたこの感触に、一気に神楽の力も抜けた。
「ったく、頼むからガキができましたァなんていうなよ、マジで。」
そう銀時がいい終わる前には、神楽が抱きついていた。
「ぎんちゃ〜〜ん!!」
あ〜重てェ〜。なんていいながらも神楽の体をひょいと持ち上げ立った。
神楽は銀時の首にしがみ付き、付かない足をブラブラとさせていた。新八はそんな神楽と銀時をみて、あ〜、もう又神楽ちゃんそんな格好で。女の子なんだから…。などと言う、いつもの【万事屋】の雰囲気を醸し出した。

此処にきて、改めて見る神楽の格好に、土方と近藤は唖然とした。
抱きついている所為で、神楽の服は捲れ、真っ白な太股は普通に晒されていた上、今更ながら神楽はノーブラだった。正直、沖田が神楽に毛布を被せた一番の理由は、其処にあったのかとも思えた。

ぎゅうぅぅ。神楽がしがみ付き、頭を銀時にぐりぐりとじゃれる様を見ていた沖田の影がゆらり。動いたのだった…。

……To Be Continued…

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