act 24

いじけているその背中が堪らなく、沖田は噴きそうになった口を思わず手で覆った。
「オイ。」
言葉を投げかけてみるが、当然その返事は返ってこない。神楽は余計に体を丸めた。服からは体の線が強調される。いくら銀時の服だろうが、やはり短いものは短く、寝転がった事で、白い太股が大きく露出していた。ほどなく下着も見えてしまうだろう、そのギリギリの線に、思わず男である沖田は喉を鳴らす。

思わず沖田は無意識に手を伸ばす。触れるか触れないかのギリギリの所、微かな声が遮った。
「べ、勉強しようと思っただけアル…。」
沖田は手を止め、何の勉強だ?と首をかしげる。神楽は言葉を続けた。
「お前より…。あたしの方がきっと好きが強いアル。繋がったら、もっと近くに感じれると思ったけど、あたし何も知らないから…。それを…。それを…。」
沖田は声を失う。今しがた神楽から出てきた言葉が信じられなかった。あの、あの神楽がと…?
唖然としている沖田…。
「ッ帰る!もぅ部屋に帰るネ!」
神楽は視線を沖田に合わせる事なく立ち上がる。その手を反射的に沖田は掴んだ。無意識だったのか、望み、分かって掴んだのか、とりあえず考えないままに。そして少々強く引く。神楽は引かれた反動で体制を崩す。その全てを沖田は抱きこんだ、まま、今度こそ押し倒す。神楽は呆気に取られる。だがすぐに自分の状態に気付くと、顔を赤らめる。沖田のうでから逃れようとする。

沖田は自分の両手で神楽の両手を張り付ける。そのまま一気に舌をねじ込んだ。神楽の体はビクつき、鼻から悩ましげな声を漏らす。すくう、絡める。音が漏れるもそこそこで、沖田の手は、ゆっくり下に這った。神楽は開かない口から、声をあげる。身をよじる。手で阻止しようと思ったが、間も無く沖田の片手一本で阻まれた。

するりと沖田は服の下から入って来た。
神楽は首を振って、まず大きく息を瞬間すって、声を出す。
「沖ッっ、ダメ、駄目アルッ!」
「駄目じゃねェ。」
「やっぱ待っッ!!ひゃっ!」
ゴツゴツとした手の感触が、神楽の胸へと到達される。神楽は声が出ない。沖田は神楽の首に顔を埋めながら、二箇所同時に責める。神楽は、小さく、儚く声を漏らす。沖田は首筋に噛み付いた。神楽は声をあげながらも待ってという。
「無理。待てねェ。」
「そんっッ、ねェ、おきッ――  !。」
言葉を出す神楽の太股と太股の間に何かが当たって居るのが分かった。再び神楽は言葉を失う。そんな事お構いなしに沖田は神楽の服を胸元まで捲りあげた。神楽は顔に火がついたように赤面し、固まった。沖田は服に隠されていた神楽の裸体を上から眺めるように見下ろす。両手は動かない、その前に体が動かない。神楽は言葉を失いながら目をぎゅっと瞑った。電気の下、晒されるのは、真っ白い傷一つ無い体。神楽が小刻みに震えるたび、その二つの曲線も同じように揺れる。
ウエストから流れた先にあるのは、真っ白い下着、そこから続く細い真っ白な足…。
一度、沖田も言葉を失う。その裸体から目が離せない。観賞用に取っておくのもありだと、真面目に考える。
が、意識を戻し、再び神楽に覆い被さった。首元に一度欠片を落とし、そのまま下へと舌を這わしながら曲線に登る。
先端に舌が触れる瞬間、神楽は大きな声で叫んだ。
「待っ!待つアル!」
ピタリと沖田の動きが止まる。その隙に神楽は沖田の手の内から逃れ、服を直す。そして沖田の下からも逃げる。
所で沖田に捕まった。
「無理だっていったろィ。」
「あたしがもう無理なのヨ。」
「残念だったな。俺の方が無理でさァ。もうおさまらねェよ。」
神楽は意味を理解し、カッと顔を赤らめた。
「だって、こんなトコじゃ嫌アル。もっと素敵なトコじゃないと嫌アル。」
「だから無理だって言ってんだろ。」
沖田は神楽をもう一度組み伏せる。
「あたしの意思は無視アルカ?あたしの気持ちは…。そんなのあの時のお前と…一緒ネ。」
神楽の言葉が沖田の耳に入る。
沖田は面倒くさそうな表情をする。悩むように表情を変える。イライラした表情に変わった。頭をくしゃくしゃとした。沖田は舌を鳴らす。そして神楽の上から退いた。
額から、どっと出た冷や汗を拭った。正直拷問に近いものがあった。が、神楽の気持ちを優先させた。褒め称えてやりたい。

「素敵なトコって何処でさァ。」
「うっ。分からないけど、素敵なトコアル。」
「お前、非道にも程がありまさァ。」
「で、でもあの言葉に嘘はないアルヨ。ただ、ちょっとやっぱり恐いアル。DVDの女の人みたく、自分がこわれちゃいそうなのヨ…。」

照れながら、下を向く神楽を見ながら、沖田は首の後ろをトントンと叩く。神楽は何してるのだと聞く。沖田が、可愛い台詞やしぐさばかりをするなと言うと、神楽はもっと照れ、はにかんだ様な笑顔を沖田に向けた。これはこれで今の自分にはかなり辛かった。何で今が駄目なんだと沖田は思いに駆られたが、其処はあえて、この場に水を差すようで口にするのを止めた。
自分の理性を必死に繋ぎとめている沖田に、心臓を一突きする台詞を、神楽は意図も簡単に吐いた。それも、堪らない程の顔で…。
「―――沖田、好きアル。あたしと付き合って…ください…ァル。」
神楽は、視線を正座している自分の膝へと落とした。耳まで真っ赤にそまった神楽に、馬鹿見たく口を開け沖田は唖然とした。神楽はチラリと沖田を見上げる。今度こそ本気で鼻血が拭きそうだと、沖田は口と鼻を覆った。
神楽は何も言わず見つめてくる。掌の奥、のどを鳴らし、神楽を引いた。そのまま強く抱き締めた。
一瞬神楽は驚いていたが、その背中に手を這わす。

「テメー俺を暗殺する気だろィ」
きょとんとした目で神楽は沖田の腕の中から顔を出した。
「いつもとギャップがありすぎでィ。どこから習得してきたんでィ、そんな大技。」
ますます神楽は首をかしげ沖田を見上げる。桃色の髪がふわり、ふわりと沖田の手にかかる。
訳が分からないと神楽は沖田を無視してその温かい体に自分の体をピタリとくっつけた。

沖田は、自分が抱き締めたことを今更ながら、少々後悔しつつ、その桃色の髪に自分を埋めた…。

....
本当はね、お前となら、何処でもいいんだヨ。
めっさ汚い小屋の中でも、汚い部屋の中でも、きっと嬉しくて、幸せな気分になれる…。
でも、流石にあたしに、まだ、初エッチのハードルはきっと、高過ぎたノ。
だって、体がありえない音を鳴らすの。あたし、あんな音、聞いた事ないンダヨ。
あんな速さで、心臓が動くの、あたし産まれて初めてだった。
あたしの体、すっごく、すっごく変だったノ。
きゅんってナってね、世の中に、あんな甘い痛みがあるなんて、あたし知らなかった。

その痛みもね、その音も、沖田が、あいつだけがあたしに与えられる音や痛み…。
そう思ったら、嬉しくて、幸せな気持ちの反面、凄く、急に恥ずかしくなったノ。
覚悟したつもりだった。シてもいい。そう思った。うん。それは間違いじゃないんダ。
でも、あたしがあたしじゃなくなる事が、急に恐くなった。
テレビの中の向こう側のお姉さんみたいに、その何て言うの?
あんなに、口の中半開きになって、目なんかトロンとさせて、あぁ、きっとあたし絶対なってたヨ。
淫らになっちゃったりとかして、きっと沖田に嫌われちゃうネ。

だってね、あいつの手ってきっと魔法の手、触ったトコがね、わた飴みたく溶けていくノ。
気持ちよくて、気持ちよすぎて、おかしくなっちゃうって思った。
きっと、それってスキだから。あたし、沖田の事、本当にスキだから…。

だから、もう、無理だって思ったノ。
スキの容量が、パンクしちゃいそうだった。だから、もうちょっと待ってほしいって思ったノ。
だってあたし、まだまだ恋愛初心者。でも、あいつ、慣れてるっぽくて。
もしかしたら、比べられる?そんな事考えた。だってコレ、きっと沖田は笑うだろうけど、
乙女なあたしからすれば、大問題。どんな風に比べられる?そんな事考えちゃったネ。

だから、あたし、ちゃんと、ちゃんと、沖田を捕まえたい。あたしだけの人にしたい…。
だから頑張って言ってみた。あいつ、照れた顔してあたしの事、抱き締めた。
そんで、言ってくれた…。今更、何言ってんだ?って、当たり前でさァって、
あたし、込み上げて来る笑いを堪えるのに一杯一杯で、強く唇かみ締めた。
幸せが、外に出せ、出せって…。抑えるの、必死だったヨ。

あたし、すごく幸せで、隣の男に抱きついた。
だって、ねェ、こいつ、すっごく無防備な寝顔、あたしに向けてる。
これって、あたしだけの特権デショ?

あぁ、あのね、こいつ、朝からずっとだったから、早く帰してもらったんだって。さっき言ってた。
あんな風に、あたし途中でやめるなんてヒドイ事しちゃったけど、やっぱり側に居たくて、
実は我侭言ってみたノ。そしたら、とりあえず今は勘弁しろって。お前の部屋に帰れって…。
いやヨ。Hは恐いけど、くっついては居たいノ。それが乙女心ってもんナノヨ。
そしたら、沖田が頭かかえた。あたし、面白くて、思わず笑っちゃったノ。でも、あいつも譲らなくて、自分の部屋に帰れって。俺が持ちそうにないからって。

そんなの知らないアル。あたしは一緒に居たい。だから、あたし、勝手に沖田の布団出して、沖田の布団に寝てやったノヨ。そしたら、本当に項垂れて、頼むから部屋に帰ってくれって、そのままお風呂に入ってちゃったノ。
そしたらあたし、緊張し過ぎて、本当にぐっすり眠っちゃって…。

ただ今、深夜1時半。あたしはやっぱり沖田の隣に寝ていた。
あたし、もう眠れない。だって、枕元の電気スタンドに淡くうかぶ沖田の寝顔。
幸せ、あたし幸せ。Hなんかしなくても、こうやって幸せを感じる事も出来るんだ。あたしそう思った。
あたしと沖田、向かい合わせに、沖田の手はあたしの体に回されてた。

きっと温かいのは、布団だけの所為じゃないヨ。お前と一緒だから…。

勝手に込み上げて来る、微笑みを落っことすように、あたしは沖田の口に、音を落とした…。

...
犯してやろうか、このクソ女…。

――――俺は確かにそう思った。

散々俺を揺さぶって置いて、おあずけを食らわすと言う超大技を出しやがったあいつに
謙虚に俺は耐えた。確かに耐えたんでェ。
つーか、生殺しってやつを食らうのは、これで二度目だ。
アレか?考えてみりゃ邪魔ばかり入りすぎてねェ?
祟られてんのか?いや、マジで。

この俺のマラ様が治まりつくのが、どれだけ難しかったと思ってやがんでィ。
しかもだ、この俺様が丁寧に自分の部屋に帰れっつってんのにだ。
ちっとも聞ききぁしねェ。あの女どっかネジの一本、ぶっ飛んでんじゃねェのか?

布団しいて寝るなんて意味わかんねェよ。

しかし、俺の理性は踏ん張った。

なのにだ。絶対この女イカレてやがる。
狂ってやがる。いや、もう何て言っていいのかわかんねェよ。
ナンだ?こらァアレか?
私を食べてください的なモノか?そうでィ。きっとそうだろィ?
言葉で伝えられなくて、行動で表すって魂胆だろィ?そうに決まってらァ。

しかし何でだ?。何で思いっきり寝息立ててやがんでィ。てか爆睡してんじゃねェか。
ありえねェよ?見てみろィ、布団蹴ってるわ、服捲れてるわ、下着見えてるわ…。
トドメに抱き枕スタイルで…って。
いや、もういいだろィ。俺はここまで我慢した。三度目はもういいだろう。
食って、いや犯させていただきやす。

… … … … … 。

あぁもう、絶対イカレてやがる。
目の前の快感よか、このまましたら、絶対ェ泣くに決まってる、こいつの顔を見る方が堪えるなんざ…。
俺は額に手をやった。今しがた風呂に入って来たにも関わらず
汗がびっしょりときてやがる。

答えは簡単なんだよな…。
惚れてる女は、やっぱ笑ってて欲しいっつーこった。

チキショー。
だったら隣で寝るくれェいい事にしといてくれや。
てか、それはそれで、苦痛には変わりねェけど。
そんな事をごちゃごちゃ考えながら俺は電気を消す。
そして枕元の電気スタンドに移るこいつの顔を、改めて眺めた。
えっらく幸せそうに眠ってやがる。しっかし、まつげ長げェな、コイツ。
いつの間にこんなに成長しやがった?すっかり女の顔じゃねェか?まだ10代にも関わらず…だ。
こいつが大人になったら、どんな女に変身するかマジで見物でさァ。
絶対ェ誰にもやんねェけどな。

唇をそっとなぞるとポッキーっと寝言を言いながら噛み付いた。
少々の痛みと共に込み上げてきた、、、ナンだコレ?萌えっつーやつかィ?
唇から抜くと、俺の指を捜しながら、馬鹿見たく唇をパクパクとさせた。俺は吹きそうになるのを懸命に抑えた。

なんでィ。この気持ち。ヤんなくても、結構な気分味わえんじゃねェかよ。
いや、毎回こうはいかねェよ?しかし、だ。今日の所はこれで我慢してやんよ…。


そういいながら、沖田は、神楽をぎゅっと抱き締め、その音を重ねた…。


……To Be Continued…

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