act 17

自分達の曖昧ななこの関係…。溺れて行く自分…。
好きなのに、言う事も出来なくて、好きでいてくれてるのか分からないままキスに流される。
そんな事、自分とあの沖田に起こるとわ思わなくて、信じられなくて
でも実際今そうで。でも何となくずるずる流されちゃいけない。そう思ったんだ。

自分に告白する勇気が出来るまで、こんなダラダラした、フシダラナ関係は止める。
絶対止める。

神楽はそう決意した。
ただ人とは、そんな簡単に決意したからと言って自分を思うように何ぞ操れるはずも無いのは
神楽自身よく分かっていた。
自分を上手く抑えられないからズルズルになるのだから。

そう考えると、もっとも簡単なのは、近づかない事。話さない事。だった。
不自然だろうがなんだろうが、こんな関係を続けるよりはマシだと思えたし。自分の気持ちを
沖田に言える決心が付くまではと。ただ、遊ばれてると思ってる神楽には、その告白すると言う行為
がひどく勇気が居るものであり、又恐かった。

だから神楽はあの日の朝から沖田を避けるようになった。
自身から近づく事はなくなり、何かの節に近づく事や会話をする様な事があったとしても、自分の理性を総動員
させ、とにかく冷静に勤めた。

その神楽の様子にすぐに沖田は気付く。そしてそれは土方も同じだった。
神楽は土方には今まで通りであり、むしろ沖田と話す勇気が無いので、悉く土方にへと用件の際は振る
当然それを沖田は面白くないと言う目で見る。
時折、ワザと神楽に分かるように視線を向けるが、明らかに気付いていながら視線を合わそうとしない神楽。

イライラは募る。さすがにこの間のキスは強引過ぎたか…?
そう考えてみるが、そんなに嫌がっているようにも見えなかった。
では何故?考えるが全く分からない。しかも神楽が本当に土方と会話をするのをよく見かけるようになる。
土方も気付いてるが、彼はその問題に首を突っ込むのが面倒らしく、何も言わなかった。
沖田が、ワザと神楽に話題を振るが、しかもいつもなら殴りかかるような話題でさえ神楽は乗らず、適当に
返し、すぐに何処かに行く。
面白くない。そんな様子を近藤はとことん気付くはずもなく、つねに笑っていた。

一日目は、気付かなかった。二日目はアレ?と感じた。三日目は核心に変わり、四日目、そのイライラはよもやピークに達していた。
とっくに自分のモノだと思っていた。この女は落ちた。密かにそう思っていたし、それが嬉しかった。
が、それがたった一日。いや、一晩でガラリと変わり、その態度は前よりも他所他所しくなって居た

正直恋しかった。あの唇や温度。ただそれが欲しかった訳ではない
あの女のモノだから欲しかったのだ。
あの女に惚れてるからこそたまらなかったのだ。
やっと手に居れたと思った、その『形』はイミテーションだったと沖田は気付く
いや、少なくとも、あの夜あの晩までは、本物だったのだが、神楽の行動によって、時を遡り沖田にだけイミテーションにと『形』を変えたのだ。

あの部屋でのキス。思いが重なったかと嬉しかった
自分を受け入れてくれるその舌をより自分のモノだと絡めた
神楽の部屋で、神楽の香に包まれ目を覚ますまで、確かに核心を得ていた。

独占欲が自身の体を支配する。恋愛において、仕事や私生活に影響される…そんな事が自分の身に起こるとわ思っても見なく、余計そのイライラに拍車をかける。
仕事の合間、人を小ばかにした必須アイテム。アイマスクで視界を覆い昼寝を決め込むために瞳を閉じる
すると聞こえるのは落語や、土方の死体の数を数える声ではなく、人を馬鹿にした様に無視を決め込む一人の女の
声や、仕草、頬を染めた貌だった。

(クソッ…!)

乱暴にアイマスクを外すとバチンとゴムの部分が親指に当たり鈍い痛みを与えた
寝ることを諦めた様に、イライラの気持ちを増幅させたまま沖田は歩き出した

....
むしゃくしゃする気持ちを抑えようとするが、そのイライラは果てしなく募るばかりだ
帰って来ると、土方に見つかってしまう。
何処でサボってやがったとの説教に、そのイライラは募るが、ココで反抗すると、更に拍車がかかりそうな
土方の形相が面倒くさく、ヘイヘイと相鎚を適当に俺はうつ。
が、その態度にどちらにしろ逆鱗に触れる。更に説教はヒートアップされた。
が、もう何だ…面倒くせェと遠い目をしたまま聞いていた。

程なく解放された時には、日も暮れ、そんな時間まで説教していたにも関わらず、奴の耳には全くその言葉が残ってねェと土方も遠い目をさせた。
むしゃくしゃしてるのはお互い様、たまたま風呂に入ろうとすれば、バッタリと廊下で土方と鉢合わせになってしまう。
丁度風呂時と言う事もあり、他の隊士もぞろぞろとその足を風呂場に向けていた
俺が入るからテメーは入るな。いや、俺が入りやすんで、アンタは後からはいってくだせェ…
そんな低レベルな会話をしつつ、脱衣場に入ると、むわっとしたいつもの大浴場の熱気が体を包む。
一気に蒸れた体の汗を流そうと、ジャケットを脱ぎ、スカーフを首元から引っ張ると一気に首も元になんとも言えない開放感が触れた。
ベストを脱ぎ、棚の一つのスペースに乱暴に置く

すると、隣にある掃除用具の置き場となってるロッカーから物音がした。
沖田は何も考えず、シャツを脱ぎ終えたその手でロッカーを開けた。

バタン!!!

突如閉められたその音に、総悟の隣で同じようにシャツを脱ぎ終えた土方が寄って来る

「お前、何してんだ?」
「何でもねェ…」
その貌は、珍しく引きつっている。
「何でもねェって面じゃねェだろうが。」
殆ど無意識に沖田はロッカーの前に立つ。そんな事をすれば、いかにも怪しいと言ってる様なもんなのだが
それだけ余裕がないと言う事で…。
「てかいいから風呂に入ったらどうでさァ」
「てめーが隠してるものを見てからナ」
土方はにやりと笑う。何を隠してるのかは検討も付かないが、どうしても隠したいモノらしい
面白いじゃねェか…土方はテコでも動かない。

そのロッカーの中で、確実にゴトリと音がした。
これには土方も勿論気付く
「総悟、テメーマジで何を隠してやがる」
「土方さんには関係ないもんでさァ」
「関係ないかあるかどうかわ俺が決める。てか退け」
「だから、誰が退く――――」
総悟がイライラを増幅させ悪態をつこうとした時だった



「副長!!…こ、コレは」
おおぉぉ!と一気にその場は沸く。
何だァ?とそちらを同時に土方と沖田は振り向く
すると隊士の一人、かわいい真っ白の、今時の女の子が好きそうなデザインをしたブラを両手に馬鹿見たく展示していた。

棚の下の方にあるスペースに隠すように置かれていた、その持ち物…

「おまッ!!」
沖田は瞬間カッっと血が上るのが分かった。
隊士の手からそのブラを取ろうと土方を押し退け、ロッカーから背を離す。
沖田のその手にブラが治まろうとした瞬間、土方の声が後方から聞こえた

「おわッ!!」
沖田は取ろうとしていたその手を引っ込め後ろを振り返ると
一人の女がロッカーから気を失い倒れて来たその様を土方は受け止めて、しかしその衝撃でしりもちを付いてしまっていた。

女は、バスタオルを体に巻いていたのだが、その巻きがあまく、肌蹴てしまっていた
不幸中の幸いで土方が女を受け止めたその拍子、上手くバスタオルを両肩でとめた形になったため、女の華奢な体は沖田、その他隊士からは見えることは無かった

が、土方は当然、肌蹴けながら倒れたその女の体を受け止めた時に華奢な体をどうしても視界に入れなければならなかったし、またバスタオルは背中側は上手く隠されたが、前側は全く隠されていない

ゆえに、その柔らかい、女の腕、胸、腹などが土方の上半身とピタリとくっついて居た
男は真っ赤になりながらも、その女の体を剥がすと必然的にまたその視界の中に入ってくる凹凸。
だから動けずに居る。そんな男の様を、沖田は唖然と見ていた

...
「テメーら全員ココから出てけ…」
低い声で沖田はつぶやく。その声に本気の殺気が混じっている事に気付く隊士は浴場の中へと、果ては外側へと
飛び出していった。

沖田は、土方の側へしゃがむ。そして口を開いた
「その手を肩から退かしてくだせェ。俺が部屋まで運びやす…」
静かに放たれた言葉に、どうしても殺気を殺す事ができない…そんな感じを土方は汲み取る
ゆっくりと総悟の手と入れ替えにその手を離す。
すると、沖田の視線が土方の目を捉える。土方はすぐさまその意味を捉え、その視線を他へと向けた。

沖田はやんわりとその体を土方から離す。
するとこの湿った空気の中、思ったよりずっと二人の体は密着しており、ピタリとくっついて居た。
ごちゃごちゃの感情の中、タオルを巻きなおすとその体を容易く持ち上げた。
そして、先ほどの衣類を乱暴に取って、脱衣場を後にした…。

ふわりふわり…その自分を包む体は何故かとても安心する…。
朦朧とする意識の中、確かにそう思った――――。

華奢な体を布団に横たえる、流石に着替えをさす事は出来ず、バスタオルのまま、とりあえず布団に包めた。
しっとりと濡れた髪は額や鎖骨、首筋にくっついている。
比較的安定してきたその胸の上下が、沖田の冷静さまでも取り戻す

ロッカーの中で合った瞳。
既に水を帯びていたその蒼色は、恥ずかしげに何も言わず自分を不安げに見つめていた
適当に巻かれたバスタオルの隙間から、今しがたはいたばかりの下着が見えた。そして細い肩に腕、鎖骨。
パニックになった俺は、体温が上昇してるコイツを早くこの狭く蒸せる様な状況から出そうとではなく
咄嗟隠し、その後土方とのやり取りで放置。そして気を失わせちまった

自分の責任…であるにも関わらず、こいつの白い肌とあの野郎の体がくっ付いているのを見た途端、更に感情が高ぶるのが分かった。しかも悪い方向的にだ。
受け止めただけ、そんな事は分かっている。だが体が震えそうなほど怒りが込み上げた
よくアノ場で暴れなかったと俺は俺を尊敬する

こいつの冷めていく体の熱を見ていると、自分の中にも冷静と言う文字が先ほど浮かんできた
と共に、たやすくその冷静さは、消え去った。
目の前の女の唇は、水分を欲する様に、ぱくぱくと動く。
とっさ俺は買って置いたペットボトルのお茶を取る。
そしてコイツの体を抱き上げた、柔らかい感触に翻弄されるが、深呼吸をし、落ち着かせる

ゆっくりと口元にお茶を持って行くが、上手く当てられず、そして、飲み込めない様で、その水分は唇から漏れ、鎖骨の上をなだらかに滑り、バスタオルへと飲み込まれた。
水分をと動かすその唇に、俺は水分を含み、ゆっくりとおうとつを埋め、流し込む。
するとその喉はゆっくりと上下し、ゴクンと飲み込んだ。また一口含む。そして再び柔らかい唇へと埋める

力なく項垂れたその体がゆっくりと水分を帯びる。
触れたかった、触れたくて…たまらなかった…。

こんなにも自分はこの女を欲していたのかと、今更驚く。
柔らかいこの体を誰にも触れさせたくねェ…そうその柔らかい体をきつく抱き締め、今度は水分を与えること無く、その柔らかい唇に温度を与えた――――。



……To Be Continued…

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