act 16

眠れねェ…

寝相…悪くない。居たって通常だ。
室内の温度…これも悪くない、適温でこのうえない。
イビキ?歯軋り?馬鹿言え、この俺がンな事する訳ねェだろィ
決してチャイナの野郎を土方が抱いて部屋まで連れて行ったと、ヤキモチを焼いているのではない
断じて…ない…。事もない。


分かってんでェ。
この全く持って不快なこの音。いや、声だ。
しかも隣からだ。

この声の持ち主…そんなこたァ聞いた瞬間から分かってらァ。

.......


「ちょ…もっと…違うアル…其処!其処アル!」
「ちょ、お前静かにしろ。総悟が起きたらどうすんだ」
「大丈夫ネ。あいつ馬鹿でニブチン野郎だから起きないアル!」
...

んだとクソ女…。
てめェらァの声がでかくて、コチとらとっくに起きてらァ。
しかも何だあの会話…。いやいや俺ァ騙されねェぜ?あらァ、お約束ってやつだろィ
何かと勘違いした男が、テメーら何やってんだァァ!!っつって入ってみりゃ、物体Gがァァ何て言うに違いない

ほら?な?隣でドタバタやりはじめやがった。
チャイナの野郎が飛んだァァ…何てほざいてやがらァ。
ほっとけばいいんでェ。あんな奴ら…物体Gを潰しておしめェでさァ… … 。

ほっとけば… …

....


「トッシー!飛んだアル!キャァァ!」
「ちょ、お前そんなに近づ…てか抱きつくなァァア!!」
「ヤッ!だって恐い!キャァァ!トッシー恐いアルゥゥ!!」
「だからそんなの抱き付く…っておわっ!!!」

小気味よく開けられる障子。
その瞬間冷気が部屋の中にと流れる。うわぁぁ気持ちいい――――。
なんて言えれる様な雰囲気とわ程遠い。

先ほどの土方の声とともになだれ込んだ、二つの影
神楽が強く土方に抱きついたため、土方は神楽の方へと倒れる
お約束もいい所だ。

沖田総悟が見下ろすその視界の中には、神楽を組み敷くように土方が覆い被さってるその様が映し出されていた。

....
「い、いや待て総悟…ちげェ!断じてコレはちげェぞ!!これは…」
「キャァァァ!!!」

空中を優雅に舞う。黒き物体G。

女は、開け放たれた障子の前に、えェ、そりゃもうぅ、今なら100人が切りかかって来ようが、その零下の双眼のみで
相手を戦意喪失にまで導ける程の殺気を持った男が居るなんぞ、全く目に入って居なかった。

土方十四朗が、沖田総悟に激しく弁解している間に、美味しそうな一人の女にへとGは急降下をした。
驚いた女は、目の前の大きな体で自分を守ろうと、その細い手を伸ばしその首に偲ばせ、強く引く。

土方十四朗が驚く前に、既に男と女の体は酷く密着しており、女は男の鎖骨に頭を埋め何も見たくないと
目を瞑り、その首に、離れないで、動かないで、私を守って、お前が犠牲になってと、手を強く絡ませた。

一気に冷や汗を男は掻く。
自分の目の前に立ってる男が、もはや1000人でもあってもなぎ倒せる程の殺気を放っていると言うのだ。
耳をこらせば、地響きさえ聞こえてくるではないか。
男は、パニくる女の手を、首に絡まされた手を退けようとする、が、そこで甘えた声が響いた…

「は、離れちゃイヤヨ!!絶対に離れないでアルぅぅ。トッシー。ねェトッシーこのままで居てヨ…」
鎖骨の間から聞こえてくる、こもった女の声。これには以外。
男は思わず男心を不意にくすぐられた。顔が淡く染まる。
しかし、次の瞬間、悪鬼と化した、もう一人の男が、深い情事に溺れている男と女の体を力ずくで剥がしにかかった。絡まっている女の手と、無理やり剥がされる力で、男の首はもげそうになる。思わず噛み付こうとした男は、更にもう一人の男の顔をみた時点で、戦意を喪失した。

しかし、彼女はその温度が自分から離れた事で酷く不安がり、勢いよく立ち上がる。
そして一つしかないはずの男の体がふたつある事に今更ながらに気付く。
女は男の顔を見るたび、見られて居た事実を知り、顔を意味もなく青くさせる。

すると、猛攻撃にでた物体Gが、やはり女を見つけ、その甘い香に誘われるように、女の元に優雅に羽を揺らし突進する。
女は先ほどの温度を求め、自分の目の前に立っている悪鬼をスルーし、手を男に伸ばす、そして服に手を掛けようとした瞬間、自分の体はつよく後ろへと引っ張られてしまう。

驚いた時には、既に自分は悪鬼の腕の中に強く抱き締められていた。
悪鬼は向ってくる、物体Gにその眼光を飛ばすと、戦意を喪失した様に、別方向に飛んでいき、そして床へと着地し、すごすごと神楽の部屋に再び潜ってしまった。

この時点で、ふりだしに戻る
物体Gの気配を夜中気付いた神楽が、恐くなり、咄嗟沖田に助けをと思ったが、いらいらはまだ治まってはなく、考えていた所、隣から、紙の擦れる音が微か漏れたのを察する。一目散に神楽は土方の部屋に行く。
まだこんな夜中にも仕事をしている土方十四朗を、力技で動かす。土方は沖田にでも頼め、しかも奴が起きたら厄介な事になるのは目に見えている。そういうが神楽は大丈夫と言い張る

そして、全く持って大丈夫じゃない状況へと結果。彼、土方十四朗は見舞われる羽目になった。

....
「はうぅぅぅ。Gがぁ…。」
沖田に抱かれたまま、神楽は涙ながらにつぶやいた
土方はため息を大きく付き、やれやれと部屋に戻って行こうとする。その服の裾を神楽が掴む

「この部屋でなんか寝られないアル…」
げんなりと土方は後ろを振り返る
「これ以上俺にどうしろと…」
「お前の部屋で私が寝るから、お前は私の部屋で寝るアル。」

「「はぁぁぁ!!!??」」
神楽の声に思わず沖田の声も賛同した。
「だって寝られないアル」

「あのな嬢ちゃん。総悟と取り替えてもらえ、俺ァ寝るぞ」
とスタスタ部屋に戻ろうとした所で土方はピタリと足をとめた
面倒くさいこの上ないが、部屋をチェンジしたとして、万が一総悟が神楽を襲うような事があった場合、少なくとも自分にも責任が降りかかってくる。それを考えれば、総悟と神楽の部屋を今夜離す方が懸命とも思えたのだ。

「分かった。嬢ちゃんは俺の部屋で寝ろ。ただし何も触るな。早く寝ろ。」
その短い会話で終わるはずだった。
いや、実際には土方本人もすんなり事が運ぶとわ思っていなかったのだ。だからこそ、早口でまくし立てさっさと行動に移そうとしたのだが…

「別にいいですぜ?俺と部屋をかわりゃあいいでしょう。」
やはり…土方は頭を抱えた。
「私はトッシーの部屋がいいアル」
そこに神楽も加わった事で、話しがややこしくなってきたのだ。
「テメーは黙ってろィ。クソチャイナ。」
「はぁぁ?私が当事者アル!いいからトッシー私の部屋で寝るアル。私はトッシーの部屋で寝るネ。」
そう土方の部屋に行こうとする神楽の手を沖田は捕らえた
「冗談じゃねェ。さっさとテメーは俺の部屋で寝ろィ」
「冗談じゃないアル!自分の寝るトコ位自分で決められるアル。」

もはや終始のつかなくなった所で土方は口を開いた

「てか、もぅ何処でもいいから。嬢ちゃん、総悟の部屋で寝ろ。そんで総悟は嬢ちゃんの部屋で寝ろ。ただ、途中嬢ちゃんの部屋から悲鳴でも聞こえてみろ。近藤さんに通すから、そのつもりで居ろ。」

「俺を何処の強姦魔と思ってんでさァ。」
その言葉に神楽はりっぱな強姦魔だろうがと内心思う。
が、夜も遅い。早く寝たい…そんな気持ちがあるのも本当で…。
大人しくそれに従う。

すごすごと部屋に入る。余計な事を考えたくなく、布団の中に入り、沖田の枕の上に頭を乗せると、ふわりと匂ったシャンプーの匂い…。思わず微笑んだ中、土方と沖田の声が聞こえてきた

「だから、もうそっちの部屋には入るなって言ってんだろうが。てめーマジで近藤さんに報告すんぞ」
「自分の枕じゃないと寝られねェモンでね。取替えに行くだけでさァ。」

咄嗟、障子に背を向け、枕から頭を退かし、寝たふりを決め込んだ
障子の開いた音に激しく心臓の音を鳴らすと、まもなく枕の入れ替った音が擦れるように聞こえる
神楽は、低く自分の意思とは関係なく音を鳴らす、自らの心臓を、握りつぶしたくなる

ビクリとなった背中に、男はにやりと笑う。

「お前話し聞いてただろィ?」
突然の沖田の言葉に、神楽の体は、今度こそ確実にビクリと動く。
沖田は再びニヤリと笑い、神楽の耳をあま噛みした。ひゃっッ!!っと耳をずらすように真上を向くと、耳からそのまま流れて来た沖田の口に塞がれた。

真上のチカチカとする電気を見ながら、自分の視界に入るハチミツ色の髪の毛を見ながら、自分の口内を目まぐるしく駆け回る舌に翻弄された。すると、角度を変えようと沖田が唇から離す視線とぶつかった。

恥ずかしくてたまらないのに、逸らしたくてたまらないのに、何でキスするの?とか聞きたいこと色々あるのに
その紅色見てたら何も言えなくて、ただただ見つめた。

すると沖田は神楽の頬に手をやり、今度はゆっくりちゅっと…そしてまたちゅっと…神楽の瞳を覗きまたちゅっと。
いつの間にやら、頭の後ろに回された大きな沖田の掌。まるで包むように其処にある。
唇から、温度が離れたとわ言え、その顔は、自分の僅か鼻先。
呼吸さえ止まりそうなこの男の唇が、ひどく憎たらしい。
それはまるで麻薬…。一度知ったらやみつきになる。
もっと欲しい。触れたい…そう思う。気まぐれに落としていくこの男の欠片が悔しいほど愛しく、腹が立つ程欲しくてたまらない。

神楽の目がトロンとした所で沖田はにやりと笑い今度は深く舌を絡ました
無意識に絡めて居るのか、その感触を自分が望み絡めているのかは、神楽には明白だったけれど、それをあえて無意識の言葉の所為にする。沖田の舌は、神楽の舌の音と重なり、ちゅく…ちゅく…と音が漏れる。
満足そうな目の前の男を見て、神楽は気だるそうにその男を睨んだ。


一方、土方は部屋に戻ったトコで不意に考えた。
あの公園だろうが何処だろうが、寝ることにかけちゃ天才的な総悟が、よもや枕が替わると寝られない?
そこまで考えはっとし、勢いよく自身の部屋の障子を開け廊下に足を向けた所で、神楽の、枕を抱えて戻ってくる沖田とばったりあってしまった。

土方の行動の意味が分かった沖田は、今更?とばかりにほくそ笑んだ。
土方は額に手をやり息を付き部屋に変える。

神楽は、ぐちゃぐちゃに巡らされた口内と、かまれた耳元、落とされた首筋の隠れた跡に、もはや立つ事も出来なくなっていた。
あの瞳に、あの温度に、既に自分は溺れている…そう思う心は、どこか甘く、どこか悲しかった


……To Be Continued…

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