act 14
両隣の隊員の事など、正直全く気にする事無く、神楽はドラマに夢中になっていた
その両隣の隊員達は、正直全くドラマを見る事無く、神楽にくぎづけになっていた

時折、神楽は気が向いたように、お菓子ある?と聞いてくる
突然の事に驚きながらも、隊員はお菓子を出す。まるで餌付けの飼育委員みたいだった。
隊員は、少し神楽との距離を詰める。すると肘がピタリとくっ付いた。しかし神楽はドラマに夢中で
気になどしてはない。近くに寄った事でよりその神楽の匂いが鼻腔にへと突き抜ける

丁度CMに入った所で、神楽は一息付く。
そして、神楽の手にお菓子が無くなったことを確認した隊員は、すかさず立ち上がり部屋からお菓子を取ってこようと走っていった。
テーブルの周りを囲む隊員達は、今のうちに隣に座りたかったが、再び男が帰ってくるとどちらにしてもどかなければならない。男がお菓子を持っていれば尚更だとその空いた空席を後ろから見つめた

CMが終わる瞬間、神楽の隣に男が座った。
笑顔で振り返る神楽の顔があっと言う間に変化した。

「なななん…。何してるネ!お前其処は…」
 風呂から今しがた出てき、その頭をタオルでガシガシと拭きながら沖田は口を開いた
「何でェ。席なんか別に誰が座ってもかまわしねェだろうが」
「だって其処は…」
言ってる側に、先程の隊員が息を弾ませ戻ってくるなり、顔を青ざめさせた。
「困ってるアル!、退けよお前!」
もう既にドラマは始まっている…。が,ど真ん中で口論を始めた二人のお蔭で、全く会話が聞こえない。
もともとドラマはどうーでも良かったので、その点についてはあまり考えることは正直なかったが…。
「俺が何処に座ろうが勝手でさァ」
「だから其処はさっきまで…」
言いかけた神楽に横から声が入った
「い、いえ、全然構いません!沖田隊長、どうぞそのままお座りください!」
きびっとした表情で男は答えるが、実際は泣きたかったであろう。しかし相手がこの男であるのならば、
たとえ戦う前から逃げても周りも何も言うまい。
むしろ褒め称えてくれるだろうと涙を呑んだ。
「な?イイってよ?」
ひょうひょうとする沖田に、眉間に皺を刻む神楽
「てかお前自分の部屋でテレビ見るアル。ちゃんとあるダロ?」
「今は大画面で見たい気分なんでさァ」
「お前の気まぐれで皆迷惑してるアル。皆恐がってるネ。一番隊ならまだしもきっと他の隊の人たちもビクついてるアルヨ、一体ココでどんな生活してるアルカ?」
沖田は鼻で笑った。そして後方にいる隊員をソファにもたれかかる様にしながら、首を背もたれから後ろにだらけさし見た。
隊員達は、世にも恐ろしい者を見たようにスイマセンでしたァァ!とチリチリに散らばっていったのだった。

沖田は、その体制を元に戻すと、チャンネルを変えた
「オイ!何するねネ!ドラマ見てたアル!リモコン返せヨ」
「ヤなこった!俺ァクイズ番組が見たいんでさぁ」
「お前のちんけな脳みそじゃ、一問も解けないアル!はっやく…かえすアル〜〜!!」

広間には、神楽と沖田の二人しか居ない。
隊員達は、怒り狂う神楽の傍で、涼しい貌をしながら、ふと自分達に向けられた視線。
確実に身の危険を感じた。それと同時にどうやら手をだしてはいけないものだト気付かされたのだ。
そうと決まれば、火の粉が飛ばないうちに退散するが得だと逃げてしまった。


ソファの上でリモコンを手に、両手で押し比べを図る二人。
神楽はまだそのリモコンをあきらめてはなく、重なっているその自分と沖田の手の間のリモコンを
何とか死守しようと頑張っていた。
そして、ぐぐぐ…と若干神楽の方が沖田を押したトコで手の中のリモコンが手から零れ、沖田と神楽の手は、ずれてしまう。

その反動で勢い付いた神楽の体は沖田の方にと被さった
咄嗟、反対の手で沖田が神楽の体を支えようとしたが勢いが強く、その勢いを殺す事は出来た。
しかし方向までは変えることが出来ず、落ちてくる神楽をそのまま受け止めた

そして重なった…柔らかいその唇と…。

...

ソファの上、沖田の体から、勢いよく離れた神楽の体。
唖然とした様に、ソファの上に座り、ゆっくりとその自分の唇に人差し指で触れた。

(沖田とキスしちゃったアル…)


体に巡る血がコレでもかって程、目まぐるしく回ってる
恥ずかしさが、感情の90%を占めたのが分かったノ。
それで、それで、多分後からじわりじわりと沸いてくるこの感情…。

だって、嫌じゃないんダヨ。
触れた場所が、とってもとっても火傷しそうに熱いけど、でも全然嫌じゃないんダ。
柔らかかったとか、温かかかったとか考えちゃうけど、わたし、嬉しかった…。

こんな状況で何考えてるんだって思ったけど、でも嬉しかったんだ…。
でも、まだ隣であたしみたく唖然としてる、馬鹿な男みつけて、やっぱ恥ずかしくて、立った。
それに、コイツはきっと深くなんて考えてない。
あたしだけ好きなの、ちょっと悔しいノヨ。

.....

(チャイナとキスしちまった…)

圧し掛かる様に触れていた体は、それこそ発火しちまうんじゃねェかって程熱くクラクラした
急に離れたその温度が、すげェ名残惜しく思えた。

ちらりとチャイナの方見たら、人差し指で唇をなぞってやがった。
その横顔が、心臓が停止しちまうんじゃねェかって程可愛らしくて、思わず目を伏せた

事故とは言え、ラッキーだと俺は正直思う。
触れた瞬間、柔らかさに、体中の細胞が活発になって、爆発しちまうんじゃねェかってマジで思った
あの部屋での続きがこんな所でと思うが、俺の感情は正直にその音を鳴らす。

ふと視線をあげると、チャイナが立とうとしてるのが視界に入る
俺はその手を思わず引きとめた。
いや、無意識にだ。

驚いたチャイナの顔、何だこいつの貌…こんな貌見た事ねェ。
どんな貌してやがる…まじ反則…。
そんな貌すんじゃねぇや。歯止めが利かなくなんだろうが…。

無意識…。
いや、本当に無意識だったんでィ
ただ、事故じゃなく…跡を残したかった。

淡く染めたその頬と潤んだ瞳、わなわなと振るわせる恥らった唇…
全部俺のモンでィってシルシを残したかったんでェ
誰かに見られるかもしれねェって?はっ、それならそれでかまやしねェ。
手を出すんじゃねェって思い知らせてやらァ


コイツは俺のモンでィ。誰にも渡さねェ。
わなわなと震える恥らう唇に、今度こそ俺は重ねた
隙間なんか埋めちまう程に…。息なんてさせてやんねェって程に…。

――――― チャイナ…オメーは俺の事だけ考えてろィ ―――――


……To Be Continued…

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