act 13

どちらともなく、自然に体が離れた
名残惜しいのはどちらともなのか、手に掴まれた互いの服だけは離そうとしなくて…。
言葉を発しないその空気の中を裂くように、沖田が俯いている神楽の頬にそっと手をやった
すると神楽の体は微か動く。

沖田の指は、沿うように、神楽の頬を伝い、顎に沿わされた
その指が顎の中心に来た所でピタリと動きが止まる
ほんの少しその指に力を入れると、自然に神楽の顔は上がり、見つめていたその瞳と重なった

いつになく真剣な沖田の目が、からかう様な目じゃなく、ただ見つめてるだけの沖田の瞳から目がはなせなかった。

神楽はその視線に耐えられなくなり、この空気に耐えられなくなり、逃げるように目を瞑った
それが合図となった様に沖田の顔は傾けられ――――――。


「総悟ォォ!テメーこの書類…って何してんだ?」
スパンと開かれた障子の向こうがわを見た土方…。驚くようでも、あきれるようでも取れる目をしながら口を開いた。

走ってくる音と、開け放たれた音と共に、神楽は目を瞑ったまま、沖田に突き飛ばされた。
とりあえず、後ろ向きはさすがに危ないと感じたのだろうか、ご丁寧にクルリと反転させ、背中を突き飛ばしたのだ。

神楽が状況に激しく驚き、目を開けてみると、其処にはわずか20センチの所に畳。
息を呑んだ瞬間には、畳にダイブしていた。咄嗟かばった手のお蔭で、鼻から血を噴出すと言う災難にはならなくてすんだのだが、この仕打ちに唖然としていた。

お蔭で、障子を開けた土方の足元に、突き飛ばされた神楽が転がっていた
しかも、突き飛ばされた反動で沖田の隊服は、神楽の胸元まで上がり、その以下全身が水着一枚で隠されたのみになっていた。

「オマ!早く着替えろって…てかココで何してやがる!?」
目を吊り上げて言う土方に、黒と蒼のごちゃ混ぜになった、果てしなく怒りのオーラが神楽の周りを包んだ

「何してやがる…?そんなの…私が聞きたいアル〜〜!!!」
言うなり、神楽はすくっと立ち、土方に掴みかかった。土方は何で俺ェェェ!?と言うが、その怪力にぶんぶんと
首を揺さぶられている。
そして、一通りやり終えた後、くるりと今度は沖田の方に向きあった。

「ふふ…お前、よっぽど私に悪意があるみたいアルナ。よく分かったアル。」
そう言う顔は、とっても可愛らしく…恐い。
すると、神楽は沖田の前で隊服のボタンをぶちぶちと外しだした。
コレには土方も顔を赤くするが、そんな事全く気にしないように全部引きちぎ終えると、気持ちよくそれを脱いだ。

「どうもありがとうございました!でもコレからは自分の身は自分で守るアル!お気遣いなさりませんようニィィ!」
言葉と一緒に、隊服を沖田に叩き付けた。
フン!と鼻を鳴らしながら、水着のまま土方の前を通り過ぎ、ドスドスと自分の部屋に戻っていく神楽だった。

もぅ為すすべもなく、神楽の一連の行動をポカーンと土方と沖田はただ見ていた
そして、意識の戻った土方が口を開く
「何やらかしたんだ、テメーは…」
何となく、想像できてしまう、雰囲気に安易に自分が踏み込むべきではないと判断しつつも、要領が悪い沖田についつい言葉を発してしまった。
そんな土方をチラリと見ながら、沖田は頭の後ろをガリガリと掻いた

...
広い広い浴槽…
神楽が磨いた風呂場は気持ちよく、近藤に言われたとおり、一番風呂に入っていた。
風呂場の前には、立ち入り禁止とボードに書き、ゆったりとその風呂を堪能する
もぅ時刻は夕方近い。夜になれば隊員達が入ってくるので、少し早めに入ると言う事に近藤との話し合いで決定した。
一番風呂を一人で入れる。この広いお風呂を堪能できるとあって、
昼間沖田に頭を沸騰させ怒り狂っていた自分まで、ほわほわと何処かに飛んでいってしまった

しかし、冷静に考え見ると、どうやってもアレは…。
自分達は何をしようとしてたのかと考えると、急にバフっと頬が赤くなった

(何であんな酷い事する奴を好きになんか…)

怒り狂っただけで、嫌いになれる程人の感情は簡単ではなく…
自分の頬に触れたあの手、顎に沿った、指…。見つめてくる瞳に、何一つ自分は動けなかった
思えば、気まぐれの様に抱き締めたり、キスをしようとしたり…。
大体一番最初は危うく犯されそうになった。遊ばれないように気を引き締めなければ!
と思う自分と、もし次にあぁなったとして、動く事が出来るか不安な自分も居た

(あいつは私の事をきっと面白いオモチャくらいにしか、きっと考えてないアル)

出来るだけ自然に…。
少なくともココに居る間は…。
.......

「チャイナさん、お茶取ってくれますか?」
「チャイナさん、すいません、こっちにもお願いします」
夕食時、バタバタと神楽は走りまわるように動いていた。食堂には続々と隊員が現れ、食事をする。
今まで、お茶も自分の食事の世話や片付け、特に問題なく自分達でしていたのだが、神楽がいると言う事、
更に言えば、神楽と会話をしたい輩がここぞとバカリにど〜でもいい雑用を頼んでは、その機会を伺う

普段毒舌を切る神楽だったが、基本性格の内の内は優しい子なので常に笑顔を振り向いた
まぁ、特に自分が怒る理由がどこにも転がっていないだけだったが…。

バタバタと神楽が走った後は、ふわりと先程入ったシャンプーの残り香が鼻を刺激する
汗だくの隊員にとってそれはオアシスの様なもので、その匂いを満喫した
まだ乾いてなく、しっとりと濡れた髪にも色香を感じた。が、近藤の手前何とか平常心を決めた

時折手が触れる機会があれば、隊員はたちまち顔を赤くする。
若い隊員もちらほらと見え、視線はしきりに神楽へと注がれた。
そんな様子を、近藤は、華が咲いたみたいだなァ!と能天気に笑っていた

そんな雰囲気の中土方の視線だけが、真向かいに座っている、非常に面白くない様な顔をしている男にへと注がれた

...

ぶすぅぅとさせる表情。いかにも拗ねてます…的な。
土方は思わずため息を付く。
神楽はと言えば、あいも変わらず隊士達と話を咲かせているようだった。

一人の隊士が言いにくそうにモジモジとする。
チャイナさんと名前を呼んだのはイイが、そこから言葉が出てこないようで…
そんな様子を神楽はキョトンと首をかしげて見る。
その神楽の表情を一瞬みた隊士はたちまち顔を淡く染めた

「そ、その、食事の後、大広間でテレビでも見ませんか!?」
言った。言い切ったと自分に向けて隊士はガッツポーズをした。
「テレビ?広間にはテレビがあるのカ?見たい!見たいアル!」
神楽の食いつきは上々だ。隊士はますますガッツポーズを後ろに振り返り決めた。

すると周りから、俺も!俺も!と群がるように声が上がる。
特に神楽は気にしてない様子でニコニコとしていた。その様子を見ていた沖田はますますぶっちょう面になっていくのが土方には分かった。
沖田はそっぽを向き、無言で飯を胃袋へとやった。

隊士たちが一緒に神楽とテレビを見ることをとめる事は、土方にも出来ない。
ゆえに、この男の不機嫌さも増殖するのは目に見えていて。
ちらりと神楽に目をやると、食事の片付けをしている。傍目から見ても十分一生懸命に仕事はこなしている
この状況に頭が痛くなる思いをする土方だった


.....


大広間、大画面のテレビが備え付けられている。そのまん前に大きめのソファが一つ。
その後ろには大きめのテーブルが置かれており、10人程が座れるように椅子が置かれていた
神楽は先程の隊士に特等席である一番まん前にへと案内される。
その中心から見る大画面は迫力があり、万事屋とは比べ物にならなかった。
その画面にも驚いたが、更に驚いたのはそのド迫力の音量だった。
たかだか、普通のドラマを見るのに、どうだろうこの迫力…。神楽の胸は高鳴った

神楽の隣の席をと巡るものは多い。神楽を中心に、左側に先程の男が。右側には勝ち抜きジャンケンで勝った者が陣取った。
準備のいい左側の隊員は神楽にお菓子を渡す。
ご機嫌の神楽は微笑む。その微笑に胸を高鳴らせたのは、若い奴から年甲斐もない奴まで…。

片っ端から、無意識に男のハートを鷲掴みする神楽であった



……To Be Continued…

作品TOPに戻る

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -