act 7

神楽の話にはまだ続きがあった


今度は、そのお金を、しっかりと腰に持っていたにもかかわらず、スリにあってしまい、有り金全部を取られてしまったというのである。
自分の所為かどうか分からない。ただ、今度こそ、銀時に嫌われてしまう。
本当に追い出されてしまう。前に一度聞いた、銀時からの『帰れ』
あの時は、海坊主である父と一緒にいた方が、自分のためにもいいと考えてくれたうえでの結論だった

だが今回は違う。本気で帰れと言われたら・・・

それが心の底から恐かったという。払い込みのお金も取られていたので、家はあっても、電気も水道も止められてしまい、生活が出来なかった。
スナックの二階にあるが、あまり請求を貯める為、わざわざ水道を別々にしたため、二階だけ止まってしまった。

話を聞き終わった頃には、4人とも、ため息を付いていた。どんだけ不幸なんだ・・・と。
タバコに火をつけた土方が口を開いた

「なんで、ココに来なかったんだ」 

その質問に神楽は、必然的に銀時に連絡を取られるのが恐かったと言った
下のお登勢のトコへは?お妙が居るだろうがとの連続的な質問。
お妙は、キャバクラ主催での旅行に行ってると言う。重なるように、お登勢もキャサリン、たまと一緒に旅行にいっていると話す。家賃を溜めている分際なので、自分たちは連れて行ってもらえなかったと・・


「どうやって、ココ二日生活してたんだ・飯は?」 
近藤が聞く。

「座ってたら、色々声かけてきて、ご飯食べらせてくれるって・・・」 

つまりは、神楽の容姿でよってくる男に、ナンパさせ、ご飯をおごらせてたと言う事であった。ただ、いつもの調子で食べまくると男が逃げてしまってわ困るので、普通の女の子の量しか食べられなかった
服は前に、一度、銀時が、お登勢から貰った服を着て街の女の子にとけ込んだと言う。そうした方がナンパに引っかかる男の命中率があがるとふんで・・・。
ただ、目立つのが嫌で、いつもフードを被っていたと・・・

コレを聞いた沖田が不機嫌になるのを、土方は見逃さなく、話題を変えるため、とりあえずこれからどうするかを決めようとした。

「とりあえず、万事屋には言うぜ・・・」

ため息を吐きながら土方は携帯に手をかけた。
....

「嫌アル!!」 
大きな声を張り上げたのは神楽だ。正直連れてこられた時点で予想は出来ていた
こうなるのが嫌で、最初から頼らなかったのに・・結局同じ運命になってしまったのだ

「仮にも奴は、お前の保護者だろうが。黙ってるわけにもいかねぇよ」
大きくため息をついたのは土方だ。こちらも神楽の反応が分かっていた
嫌がってくるだろうと・・・しかし連絡を取らなければいけないのも当然で・・

神楽は、首をブンブンと大きく振って、嫌がるが、仕方ねぇだろと土方は耳に受話器をあてた。
若干いたたまれないような顔を、土方はしながら・・

みるみる神楽の顔は真っ青になり、何も聞きたくないと、両手で耳を塞ぐ。

そんな神楽を気遣って、山崎は優しく声をかける・・
「チャイナさん、きっと大丈夫ですよ。」

山崎は言うが、神楽は耳に手をやり、ぎゅっと目をつぶる。
程なく電話連絡がついたのか、土方は電話の向こうの相手と話している。相手は間違うはずもなく銀時だ
手で耳を圧迫するほど強く塞ぐが、至近距離で話してる分、やはり土方の声が聞こえる

追い出されてしまう・・

また帰れって言われてしまう・・。離れたくない・・・。行きたくない・・・・。皆と一緒にいたい・・・
又怒られちゃう・・・嫌われちゃう・・・・・。思いはぐちゃぐちゃになり、とうとう我慢できなくなった

「っつ・・ふえ・・・っうっ・・・ヒック・・・エ・・・ぅえぇぇぇぇ・・・」

声をだして泣き出す。会話をしながら見ていた土方は、何ともいえない顔で神楽をみる。
近藤は頭を掻いている。

そんな中、自分の背中をさすってくれたのは、以外にも沖田だった。余計に涙が溢れる。

両手で顔を多い、嗚咽を出す
そんな神楽の目の前に、土方は携帯を差し出した。手の隙間から見えた携帯・・
首を顔を覆ったまま、ブンブンと振る

「お前に代われだとよ。」
土方は言うが、神楽は頑なに拒む。恐くて・・・・恐くて・・・・仕方なかったのだ・・

又もや、深いため息を土方は付く。
周りを見回す土方。山崎はどうにも困りましたね・・そんな表情を見せた
近藤とて、苦笑をしている。
沖田は、神楽の背中を擦りながら、ったく・・・そんな面持ちで土方を見た

出ないんじゃ話が進まない。
かといって、銀時本人はここには居ない・・・仕方なく土方は、携帯をスピーカーにして畳に置いた
....

「この馬鹿野郎ォォォ!!!何してやがんだテメーはァアア!!」

キーンとなるほどの大きな声で、スピーカーの向こうからは、あのいつもの銀時の声で叫ぶ。それをなだめる声が聞こえ、新八にかわった

「神楽ちゃん、もう絶対そんな馬鹿なことしちゃ駄目だよ。大切な家族なんだから・・」

ぐいっと、携帯を取り戻した銀時が変わり、声が聞こえてくる
「神楽ァァ。馬鹿だろ?お前馬鹿だろ?誰もそんな事望んじゃいねェよ。あのままお前が身売りなんてした方が、よっぽど俺ァ怒ンぞ。マジに追い出すから!!んで、テメーを買った奴見つけ出して、とりあえずぶん殴るからァァァ!!」

図太いいつもの調子の銀時の言葉・・コレには、沖田も賛同した。

「っ・・・・ぎ、銀ちゃ・・・ごめんなさいィィィ・・・・・・」
いつものあの銀時の声・・言い方・・・その『いつも』が、神楽をすくった・・・
素直に出てきた言葉・・安心したように別の意味で涙が溢れた・・。恐怖ではない、素直に謝るための涙が。

スピーカーから出てくる銀時と新八に、泣きながら謝り続けた。
新八が気を利かせて、向こうもスピーカーにしたおかげで、神楽の謝った声は、ちゃんと二人に届いた。
かすかな声で、携帯の向こう側から、安堵のため息と、すこしの笑い声が聞こえた

「もう、こんな事すんじゃねーぞ。分かったかコノヤロー」
「そうだよ神楽ちゃん」

いつもの銀ちゃん・・いつもの新八・・いつもの日常の会話・・・
日常が帰って来たとこに、神楽は嬉しくて、安心してたまらなかった

「ウン。もうしないネ・・絶対しないアル・・」

涙は止まり、濡れたほっぺの筋だけになるのを近藤、土方、沖田、山崎は確認し、それぞれ視線を交差させ、大きなため息を付いた
少なくともその顔は、一警察官の補導された人間に向ける表情ではなかった
付き合いがある、神楽へ向けられた、ただの一人間としての優しい表情だと汲み取れた・・・・。



……To Be Continued…

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