act 20

沖田がそっと神楽の肩に触れると、神楽の体はおおげさびビクリとなった。
神楽を見下ろしている沖田の表情は、冷たくはなかったが、驚きを隠せないでいる。
自分を見下ろす沖田が、沖田である事を神楽は知ると、ゆっくりと沖田の袖をきゅっと掴んだ。

「なんで? 何があったアルか…・・・」
ちらりと神楽はスンと鼻を鳴らしている女子の方を見た。神楽と視線があうと、その女子達も、沖田の様に驚うた表情をさせた。先週までの神楽とは、全く予想もつかない。
口がさけても、冴えない地味な子、なんて言えなかった。
それこそ、人が思わず振り返る……。そんなニュアンスがピッタリだった。

「あァ、別に……」
「別にって……。っだってさっき聞いたもの。お前が怒ってるって! 一体どんな風に怒ったら、こんな風に――」
沖田に迫る勢いだった神楽の肩をお妙が掴んだ。
瞬間、神楽は振り返った。しかしお妙はそんな神楽に優しく微笑んだ。
「とりあえず、ちょっと引きましょう。後始末もあるようですし、ね? 沖田さん」
もうなんだか分からない。神楽は沖田の顔を見たり、お妙の顔をみたり……。
銀八は、神楽の頭をぽんぽんと叩くと、神楽の側から離れていった。
神楽は、何故自分だけが分かっていないのかと不満そうな面持ちをしながら、お妙に引きずられていった。

神楽に見つかるのは、沖田にとって、想定範囲内だった。
もし聞かれちゃ上手く誤魔化す自信はあったし、別に誤魔化さず、そのまま口にしても良かった。
だが、その神楽の姿を見た途端、沖田には、言いたい事が一瞬で胸の内をしめた。
沖田はつかつかと元居た場所に戻ると、その中の内の一人の顔をしゃがみこみ、鋭い眼光を向けた。

「オメーらよォ。もしかして、あいつを売る様な真似、しやせんでしたかィ?」
歯をカタカタと鳴らしながら、首を振った。
「し、知りませんっ! 私何にも……知らないですっっ」
沖田はまた、残酷に微笑んだ。
女は、ゴクリと喉を鳴らした。
「た、助けてください……」
朝一番で、あれほどけらけらと笑っていた姿は、何処にもなかった。
「助けてくださいねェ?」
何度神楽はそう叫んだだろう。震える女子が、本当に知らなかったとは言え、これしきの事で助けてと言う女子達に、沖田は虫唾が走った。
神楽はどんなに叫んだか分からないが、きっと声がかられる様に叫びたかったにちがいなかった。
沖田は舌を鳴らし、立ち上がった。
「二度とアイツに近寄るんじゃねー。似たりよったりの事を考えている奴らにも言っとけ」

そう言うと、興味がなくなったオモチャを捨てるように、沖田はその場を後にした。


……To Be Continued……

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