act 9

「ともかく…。このままにしとく訳にもいかねーだろうが。」
高杉の声にまた子は鼻を啜りながら頷いた。自然と向けられた彼らの背を確認すると、ミツバとお妙はゆっくりと男モノの制服を神楽から剥ぎ取った。夕焼けへと変化した朱色の光が高い窓から射し込み、ちょうど神楽の体を照らした。

そんなに簡単に破れるものじゃないハズの制服はビリビリに裂かれており、やはり下着どころか、こぶりな乳房も露になっている。真っ白い綺麗な肌には、男の手と思われる痣が丁度乳房を包むようにつけられていた。

お妙はまた泣きそうになるのをグッと唇を噛むことで我慢した。少しでも隠してあげたいと思うが、布が足りない。どうやっても晒されてしまう。その下の方ではまた子が膝元にある神楽の下着を見て、我慢が出来ないように嗚咽をあげた。

ミツバはゆっくりとそれを【元の場所】へともどしてやろうとするが、手が震えてなかなか上に上がらない。もどかしくて、けれどこんな格好から早くちゃんとした姿にしてあげたく顔をくしゃりとさせた。

そんな反響する少女達の声を彼らは何も言わず無言で背中に受け止めた。夕陽が当たらず彼らの表情は見る事が出来なかったが、時折聞こえる歯をくいしばるその音と、拳を握り締める鈍い音がその心境を表した。
そんな中だった。甲高い着信音とバイブの振動する音が、土方の尻ポケットから鳴ったのは。

音も何もないこの場所、反響するこの天井の高いこの場所だからこそ、それは皆の耳へと届いた。
皆同時に体をビクつかせた。その着信音は、つい今朝、土方がコイツの電話だけは出たくないと指定した、【沖田専用】の着信音だったからだ。

一声に土方の方を皆が向いた。尻ポケットから出された着信音は更に反響音をだした。
そしてその音に、神楽の人差し指がピクリと動いた。それに気付いたのはお妙…。
「神楽ちゃん。神楽ちゃん!」
着信音をそのままに、土方を含め皆は、お妙の声、そしてボロボロの神楽を見つめた。

神楽の反対側の手もピクリと動いた。思わず男も駆け寄った。からからになったであろう眼球が一度瞬きをした。
皆息を呑んだ。もう一度、もう一度と瞬きをした。神楽はその綺麗な空色でゆっくりと仲間の姿を確認した。

「神楽ちゃ…。」
また子はあっと言う間に唇を震わせ顔を崩し、神楽の頬にしとしとと涙を伝わせた。お妙は神楽の細っこい腕をぎゅっと掴むと暴れてボロボロになった細い手を自分の頬に当て、俯きながら嗚咽を漏らしはじめた。そして近藤や、稀に見るほど、心配してくれている土方や高杉の顔と瞳を潤ませながら何度も頷くミツバ…。

「あたし…あたしねェ―――。」
完全に壊れたと思った神楽の人形の様な表情がパリンと崩れ、瞬く間に崩れたと思ったら泣き始めた。
瞬間また子がたまらず神楽に抱きついた。我慢することなく限界まで出し切った嗚咽と共に。

着信音が反響を重ねる空間の中で土方は僅かだが安堵した表情を浮かべた。しかしまだ鳴り止まないこの音…。帰り際、銀八に呼ばれ、後で追いつくからと先に帰った自分達だが、今更ながらに、もっと遅く帰ってこいよと言う思いに駆られた。しかし意を決して土方はその光が射す方へと足を進めた。
そんな彼の足が、その男の影を見つけると同時に止まった。

「土方さーん。こんな所で何してんですかィ。」





……To Be Continued…

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