act 6

「こんばんわネ」
「カグヤ!」
神楽が席に現れるなり、分かりやすく顔を輝かせた

右手に座るのは、30歳前の男性、宗<しゅうと言う>
この人は、私が気に入ってくれてるのかよく来ては指名する、要らないというのに、色んな贈り物をしてくる。

「今日も又、露出の激しい服きてんなぁ」
にやける訳ではなく、どちらかと言うと、イタズラな目に近いものがある

「そうアルか?」
こんなのは、範囲内だと、神楽は気にするようでは無かった

「あれ?誘ってる?」
ドレスに手をさしかけ、上目で神楽を見る

「んな分けないだろ、バカアルか?」
そんな宗を、いつもの様に、覚めた目で、軽く一喝した

結構ズバズバいってもへこたれない。こう言う性格だと知った上、通ってくれる
神楽的にも、結構気兼ねすることないので、イヤではない
ただ、結構きわどく触ってくる。しかも、今は沖田が離れているとはいえ座ってる
向こうの様子も気になるし・・気が気ではないのは確かだった、こんな所を見られたもんなら・・・

宗はいつもの様に、神楽の太股に手を軽く起き、ワザと、スリスリと寄せる

「触るなバカヤロー」
その手を、パチンと神楽は叩くが、いつもの事なので、特に宗も悪びれることは無い

「少しくらいいいだろ」
イタズラな目をし、神楽にくっ付いてくる

「よくないアル。追い出すぞアンタ」
まるで吹雪が振るような冷たさで、宗を睨んだ

「キツイねーアンタも」
ふぅっと息を付き、はいはいっと手をどかした

取り留めのない口げんかをする。そうか少し沖田に感じが似てるんだ・・と気付く
顔は、沖田には敵わないが、上の上だ。女に不自由することはまずないだろう・・
だったら、ココに通うなよ・・と客なのに失礼なことを考える
2年間会えなくて、頑張って自分から会いに行って、又会いたくなって、そしたら会えて、話せて・・今は席に付いている・・そう思うだけで体が熱くなる。感じの似ている宗の隣に居る事で、更に考えてしまう神楽だった


「カグヤ・・」
神楽が、物思いにふけっていると、宗が呼んでいるのに気付き、慌ててごめんヨと謝る

「何アルか」
今は集中シロ・・仕事中だ・・と自分に言い聞かせ、宗の会話に耳を傾け、思わず耳を疑う言葉が出てきた

「結婚してくれ」
一瞬、は??っと放心状態になる。口は空き、目はパチクリ・・・何をコイツは言ってるのだろう・・と
そして、意識を戻し、現実世界に帰って来て、思わず声をあげた

「け、結婚!!??」
思わず立ち上がる神楽、しまった。沖田の所に気付かれるとすぐさま席に座る
しかし、当に気付いた後だった。結婚と言う言葉もバッチシ。
沖田の顔は一瞬にして変わる、神楽の慌てよう・・結婚の言葉・・・

沖田の周りには、女の争奪戦が繰り広げられ、6人の女が付いていた
もちろん、普通はそんな事許されない。ボーイの言うことも聞かず、是非私が!!と席に座って沖田に
甘えたのだが、沖田はただめんどくさいのと、神楽が気になって仕方なかったのだ

トイレに行ってくると、席を立ち、丁度トイレのすぐ側の神楽の席に目を耳を凝らす
周りの女は、思い切りブーイングを出し、早く帰って来るようにと急かし、今度は、誰が沖田の隣に来るかと又も争奪戦を始めた

「何言ってるか?お前。まだ始まってもいないのにいきなり結婚てバカアル!てか死ねヨ、お前」
神楽は、平常心を取りつつ、いつもの様子で毒舌を吐いた

「お前・・きっつー。」
少し切なそうに、顔を歪め、神楽のオデコを人差し指でツンと付いた

「い、嫌なら帰るアル」
思わず顔を赤らめた神楽の、精一杯の今の毒舌

「帰らねぇ」
急に真顔に戻る宗。沖田までとは言わないが、整った顔
ビューティーフェイスには間違いなかった。

「カグヤ・・俺移動になるんだ。本社に。だからもうココにも通えない」
俯き、宗はゆっくりと言葉を話す

「本社?出世アル。よかったネ。」
そんな宗を、特に取り留める事無く、おめでとうと言う

「おまえ、悲しむとかないのかよ・・」
ため息を思わず吐いた
「ムゥ・・・」
神楽は、頭の中で、悲しむと言う単語を、ごちゃごちゃと探したが・・・見つからなかった


「ないんだな・・」 
再度、ため息をもらす

「カグヤ・・」
真顔は、更に真面目な顔になり、真正面から、神楽を見つめた

「一度だけでいい、お前が欲しい・・。」
宗から出てきた言葉に、神楽は固まる
目はキョロキョロと忙しなく泳ぎ、思わず自分の膝に置いてある両手を、握り締めた
宗は、そんな神楽の様子を、ただじっと見つめた。ただじっと・・・

明かに神楽が戸惑う
「何言ってるカ・・」

何の冗談・・・と言おうとする神楽より早く、宗は言葉を出した

「好きだよ。お前の事、女として。出来ればずっと側にいて欲しい。」

キョロキョロと泳いでいた目は、見開かれ、思わず宗の方を見た
今まで見たことも無いような顔。自分の事を、ただ見つめる宗に、思わず神楽は、頬を染めた

今までも、客に告白はされたが、特に気にするような事は無く、軽くあしらった

ただ、この目の前に居る男は、何かいちいち心に刺さるものがあるんだ、この男

「本社に行く前に一度だけでいい。お前を抱きたい。後腐れはねぇよ。一回きりだ。
気持ちはある。でもたった一回・・好きなのにたった一回。その宗の感情がいまいち神楽には分からなかった

「お前、この仕事辞めたいんだろ・・前に言ってたもんな。お前の生活俺が見てやってもいい。」

「な、何言ってるね、まるで援助交際じゃねーか」
神楽は、思わず噛み付く、しかし、自分の言葉が間違っていて、確実に失礼な事を言ったと思う

「惚れた女の面倒見んのが、援交か?惚れた女を抱くのがそんなにきたねぇ事か・・?」
宗は、見せたこともない様な、傷ついた目をしていた。思わず神楽はハッとし、自分の顔をしかめ
自分が吐いた言葉に恥ずかしくなった・・言うべき言葉じゃなかった・・と。

神楽は言葉につまった。確かに何か違う  
「ゴメンなさい・・ヨ」

「お前可愛すぎ・・自分に駄目なトコがあるとすぐにそうやって比を認める。いい女だ」
宗は、顔を崩し、くしゃっと笑う。神楽の頭に手を乗せ、ナデナデと・・顔には、愛しい・・・それが間違いなく溢れていた

「宗・・・」
思わず神楽は名前を呼んだ

沖田は、側で変なモヤモヤに襲われる、沖田自身も気付いた・・・・

<こいつ、俺と何か似てらぁ>

考え方、仕草、沖田をもう少しストレートに素直にした感じ

沖田の背中に冷や冷やしたものが流れ落ちる
顔だって全然悪くない、アイツが嫌がってる風でもない・・・・

神楽が、きっぱりと断れないのも、多分そのせいだ。
自分ににかぶせてる??・・・・・・・

「一度でいいんだ・・。俺の事、そんなに嫌いか・・触られたくない?」
もう一度、宗は台詞を言った。顔は不安に取り付かれ、切なそうに曇らす

う〜と神楽は唸っている

宗は、神楽の手をぐいっと引っ張り、丁度神楽の耳が、自分の口元当たりになる

「神楽・・・」 
低い声で、宗は囁いた・・神楽の体は火が付いたように、熱を帯びた
顔は真っ赤、恥ずかしくて見れないと、そのままの体制のまま、口を開いた
  
「私の名前・・なんで」

「この間、帰りぎは、話してるとこ聞いたんだ。カグラって言うんだな。名前」
沖田に似ている宗・・・思わず意識してしまう。
<アイツは、私を名前で呼ばない・・呼ばれたことなんて・・ナイ!!>



源氏名ではなく、本名で呼ばれ、余計赤くなる
心臓はドクドクと音をたて、体の体制が崩れてて、自分の背中辺りの上には、宗の顔がある
考えただけでも、体温は上昇した

「神楽・・俺、お前の事愛してるから・・」

深くにもドキリとしてしまう。これは沖田じゃない・・どっちにも失礼だ・・こんなの。
「桃色の柔らかい髪も、細くしなやかな腰も、折れそうな手も、細く華奢な足も・・全部好きだ」

宗の言葉が、ストレートに自分の中に浸透する
この言葉が、アイツだったら、そんな事、絶対言わないけれど、もしアイツだったら・・・

分かってる。違うんだって・・・・失礼すぎる

頭に置いてあった手は、スルリと移動し、神楽の頬へ置かれた
そのまま、真面目な顔をして、口を開く

「神楽・・好き」

 駄目、どうしても重なる。ずっと二年間欲しくてやまなかったもの、アイツの気持ち。コイツ。似すぎてる。流される・・。私が欲しい言葉、全部宗が言う・・・・

宗の顔は、ゆっくり傾き、神楽の顔に近づいた、思わず神楽はギュッと目を塞いでしまった

「っ・・・ふぁ・・・ぁ・・・・」

唇がちゅくちゅくと音を鳴らす
恐くて瞳が開けられない。ただ、自分を激しく求めるように舌を絡ませ、吸い付いてくる
頭は真っ白になり、何も考えられない・・・ただ自分を求める舌に・・口に・・ただただ何となく、付いていった

だから、誰の口で、誰の舌なんて・・・分からなかった。

「え・・・・・」
惜しむように話される唇
神楽の瞳は、ゆっくりと開き、そこに居る人物を確認する、まだ頭は余韻でボーとし、何も考えられない

宗は、一瞬の事でわからなかった。
神楽の唇に触れる瞬間、自分の体から神楽を奪って、さらにその唇に口を重ねた人物
見たことも無い顔、自分の面より、更に磨きがかった面・・・・

神楽は沖田の腕の中に居た


……To Be Continued…

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