act 28

「え・・お・・キタ?・」

目は空ろ、力の入らない体を、沖田は抱き締めている。もやがかかった視界は、ゆっくりと次第にはれていく
瞬きを、何回も、何回も繰り返す、だって信じられない光景・・・
やっとはっきりした意識と共に神楽は、沖田に掴みかかる

「おま・・私に何したアルカ!!」

「何って、キス・・・」
言うが早く、神楽のパンチが飛んできた。
それを、いとも簡単に交わすと、ひょうひょうと涼しい顔をする

神楽は、怒り・・と言うよりは、むしろ混乱に近い。嫌な訳ではない、二年も片思いの相手。嫌なはずがない
ただ、沖田はとうの昔、自分を振った。今更、気持ちをかき乱す様な事をしてほしくなかった
まだ残る唇の感触。舌の心地よさ・・・・・。もうやめて欲しい・・・・そんな思いだった
頬を赤く染め、尚も沖田に掴みかかろうとする


「神楽・・コイツ誰?」
後ろから、聞こえてくる声、宗だった。
明らかに不機嫌さを前に出すような低い声、それもそのはず、後2cmでの所で神楽は視界から消えたのだ
当たり前といえば、当たり前。沖田を静かに睨む

「コイツはただの「コイツじゃありやせん。沖田総悟と言いまさぁ」
神楽の肩に手を掛け、ひょいと退かす
宗と、沖田の一騎打ち。
にらみ合う二人の横には、明らかに動揺する神楽

まず何で沖田が自分に唇を重ねたのかが分からない、そんな事をされ、それでもバカみたいに思う自分も信じられない
抱き締められた腕。二人の射抜くような睨み合いが起こっている今でも、想像すると耳まで赤くなる
しかし、目の前の二人をどうにか止めなければいけないのも事実。ここは仕事場、周りからの視線、特に従業員の女の視線が、神楽に纏わり付く。視線が痛い。とても従業員を見れない



宗は、沖田の目を、沖田は宗の目を挑むように威嚇する

「で、おまえ何してくれてんの?」
軽く言い放つ言葉、しかし目は全く笑っていない

「何ってだからキス・・・でさぁ」 
それに比べ、沖田は涼しい顔を保ったまま
笑っているようにも見える

「ちょ・・沖田・いいから帰るアル」
堪らず神楽は、二人の間に入る。まずは沖田の方を向いて、離れろと言う。強く体を押すが、さすが男と言うべきか。いくら神楽でも動かない

「い・や・だ・」
ポーカーフェイスをくずさない沖田を放って、今度は、宗に向き直り、体をグイグイと押すが、こちらも動かない

「宗も、今日はもう帰るヨロシ。」

「バカ言ってんじゃねえ、こんな状態で帰れるわけねぇだろ」
周りからすれば、こんな状況じゃなければ、思わずホゥっとため息がでそうな2ショットだ
神楽の事を、ホール全体が凝視する
ため息が出そうな2ショットに挟まれた女。嫌でも気を引いた
どう見ても、神楽を取り合うような姿勢

女の子は、嫉妬に近い目を向ける、なぜあの女ばかりが・・No1でも無いくせに・・・
お金を落としてくれる男は、自分たちも沢山いる、しかし、正直あそこに居るような男に求められたい
必要とされたい。嫉妬してもらいたい・・・
全ての女の願望が、全てまとめて神楽が持って行く、悔しくて、唇をかみ締め、舌を鳴らした

「じゃあ、俺が帰らぁ。」
手を引いたのは沖田の方だ、神楽の腕を引き、其処から連れ去る
しかし、反対側の神楽の腕を引いたのは、宗だった

「神楽は置いていけ・・・」

沖田と宗は、真ん中に神楽を挟んで体を取り合う
連れ去ろうとする沖田、ここに留まらすようにと宗。双方の腕を引っ張り始めた

「痛い、痛い・・・離すアル・・」
神楽は思わず悲鳴をあげた。それもそのはず、男の手で双方から力を入れられ引っ張られる
いくら神楽とは言え、たまったもんじゃない。細い腕が、ミシミシと言う
痛みが腕から伝わり、苦痛で思わず神楽は顔を歪めた

沖田が手を離せば、神楽は宗の胸に、宗が手を離せば神楽は沖田の胸に、反動で行く
そうは行くかと、二人は手を離さない
しかし、片方の手が、突如離れた

手を離したのは沖田だった
その反動で神楽は宗の体の中にすっぽりと入る
宗は、すかさず神楽を抱きしめる

沖田は、その光景を見ながら静止していたが、クルリと体を反転させ出口に向った



……To Be Continued…

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