何気ない、何気ない一日…。
そんな日常が、ほんの少し前から、突然、変わった…。

沖田から、何気ない放課後に、告白されたのは、まだ10本の指で足りる程前の事。
簡単に言われた『好きだ』と言う言葉。
純粋に嬉しかった。なぜなら自分も同じ気持ちだったから。

ホームルームを終え、銀八はダルそうに教室から出て行く。
神楽は鞄を持ち、いつもの指定の場所へと視線を移した。

少し離れた沖田の席。
いつもなら視線を交すとすぐに神楽の元へとやってくる。
しかし鞄を置いたまま、本人の姿だけが無い…。
たまに、いや、ちょくちょくこの様な事はある。
はっきり言って日常茶飯事。ゆえに神楽は沖田が何処に行ったのか大体想像が出来ていた。

無言のため息を神楽は吐いた後、自分の鞄を持ったまま教室のドアの外へと出た。

軽くパタパタと走ると、丁度階段のある踊り場で、声がした。
その声は色々な生徒の声が、確かにパラパラと混じってはいたが、聞き覚えのある声も混じっているわけで。
神楽は背を壁にピタリとくっつけ、思わず隠れ耳を澄ませた。

「好きです…。」
「―――てか、あんた、俺に彼女居るって知ってるよな?いつも一緒に居るんだから。」

あぁ、やっぱりいつもの…。
神楽は自分の予想が当たった事に、分かっているががっくりと項垂れる。
沖田と自分は付き合っている。それは紛れもない事実だった。なんせ沖田の方から告白してきたのだ。
しかし、どうしてか、こうも次から次へと相変わらず呼び出されるのはハッキリ言って面白いわけがない。

聞きたくもないが、何故かそこから足は動かなく…。
そのまま女の声を聞いていた。


「…はい、でも、あの子…。」

神楽は目をぎゅっと瞑り、瞬間耳を塞いだ。
もう何度と聞いている。その言葉の先を知っているから…。

気付いたら、もぅ足が駆け出していた。
もとの教室へと…。

走りこむように教室へ戻ると、クラスメイトである山崎が居た。
本当は、まだ生徒は他にも居るのだが、転校して来た神楽にとっては、数少ない話せる友達と言うものだった。
息を整え、自分の机につくのを見た山崎は神楽に声をかけてきた。

「どうしたんですか?」
「あ、わ、忘れ物ネ。」
「あぁ、今日先生が言ってた課題の事?」
「な、何ソレ?知らないアル!」
「ちゃんと帰り間際に言ってましたよ、ほら…ココ。」

山崎は鞄の中から教科書を取り出し、それを丁寧に神楽に教えてくれた。
神楽は危ないトコだったアルと山崎に礼を言う。山崎はかまわないと笑い、しばしの、
どうでもいい雑談に話がさいた。

山崎は、独特の雰囲気を持ってるゆえ、神楽にとって、安心と言うか、とにかく肩の力を入れなくていい存在であり、くったくのない笑顔を振りまいた。
瓶底眼鏡でその綺麗な藍色は見えなかったが、笑った貌はとても可愛らしく、思わず山崎は頬を赤くする。

人の気配がなくなったと、辺りを見渡せば自分達だけになっていた事に気付く。
シンとした空気の中、山崎はどうにも気まずくなり、帰ろうとする。
すると神楽は、まだ一緒に居てほしいのか、山崎の制服の袖を掴んだ。

本当は、このままもぅ沖田を無視して帰ってしまいたい。神楽は思っていた。
しかしそれはあまりにもヒドイと常識ある自分が囁き、ならばせめて帰ってくるまで一人にしないでとの思いからの行動だった。

山崎は、困ったなと頭を掻く。そんな山崎を神楽は必死に引きとめる。
神楽が必死な面持ちで山崎を見ていると、一瞬で山崎の顔から血の気が引いたのを気付く。
首をかしげる神楽を見ようともせず、山崎は教科書をしまい、鞄をしめ、逃げるように教室を出て行った。まるで幽霊にあったかの様な、悲鳴を残して。

「オイ…。」
背中から聞こえるいやに低い声に思わず神楽はヒクリとなる。
ゆっくりと後ろを向くと、そこには沖田が教室の入り口の所で立っていた。
その盛大にご機嫌が悪そうな面持ちで…。」

.....

「――はぁ、心臓が止まるかと思ったよ。あんな目で睨むんだもんなァ。ほんっと、沖田さん嫉妬深いから…。」
自分へと向けられた、その視線は、殺人的な要素が入っていると真面目に山崎は考えながら、下駄箱をあとにした。


……To Be Continued…


作品TOPに戻る



















人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -