act 9

「とりあえず待ってろィ。逃げも隠れもしねぇよ」

神楽を連れて出ようとする。しかし、磯崎はそれを許さなかった。当然といえば当然だった。沖田の行く先を阻み、沖田共々囲む。沖田よりがたいがいい男がずらりと並ぶ。さすがに神楽も少し不安がでた。無意識に沖田の制服の裾を掴む。下に引っ張られた沖田の制服は、沖田の体に感触が伝わる。後ろをチラと沖田は振り返り、神楽の表情を見る。普段見せない様な不安な顔。軽く舌を鳴らす。出来れば神楽だけでも外に出したい。今の神楽は、皆への半分脅しの入っている磯崎からの注文により、戦闘態勢に入れていない。それが厄介だった。

「出すつもりもねーが、一応聞いとく。さっきの条件飲むのか?」
「飲むわけねぇだろ」
「な!違うアル。飲むネ。コイツの事はほっとくアル」

沖田に向って、何を言い出すんだと言う表情をむけ、必死に磯崎に要求を飲むというが、沖田は駄目だと言うばかり。

「ばらしてもいいんだな?一位は剥奪だ」
「あぁ。一位なんかくれてやらぁ」

ポーカーフェイスを崩さないまま、沖田は言う。神楽は一生懸命違うといおうとするが、沖田の手で口を押さえられ、何も言う事が出来なかった。沖田の手の中で、む〜〜〜と何か言いたげに叫ぶだけだった。しかし、面白くないのは磯崎だった。正直一位なんぞ、どうーでも言い話だった、様はそれをダシに神楽を服従させたい。それだけだったのだが、沖田が出てきた事で、まとまりかけた話が振り出し、イヤそれ以上に悪い方向へと進んでいく。

「面倒くせぇ。テメーの所為で、計画がパァじゃねーか。」

そういうと、ニヤニヤ笑いながら、神楽を見始める。ゾクリと背中から、嫌なものがこみ上げてくる。神楽は気持ちが悪かった。しかし今でさえ、頭の中は、クラスの事が引っかかっている。動きが取れなかった、下唇をかみ締め、動けない呪縛にもがいている。

「オイ。キタねぇ目で、コイツをみんじゃねぇ」

沖田は神楽の前に丁度立ち、神楽を隠した。磯崎は、強行突破に踏み切ろうと考える。沖田の後ろに居る神楽を引っ張り出そうと、3人がかりで服を引っ張る。いくら沖田とはいえ、この人数では敵わないだろうと言う勝算が磯崎にはあった。神楽の手に3人の手がかかる。その手を沖田は吊り上げた。手からはミシミシと音がする。

「ギャー!!痛てぇ!!は、離してくれ・・・」
「さっきもいっただろィ?汚ネェ手でコイツに触れるなってよ」

神楽は沖田を見上げる。正直こんな時にだが、守られてるのが心地イイと思っていた。自分に触れろうとする手を阻む沖田の手。こんな時に不謹慎だとも思うが、顔がにやける。笑いを堪えるその下唇をギュッとかみ締め、平常心を保とうとするが、どうしてもにやけてしまう。思わず手で口を隠す。神楽は、こんな危機的な状況を楽しんでいた。沖田に守られている自分が、嬉しくってくすぐったくて、沖田の制服にぴとっと体を寄せた。

「な、何やってんでさぁ。おめー今の状況分かってんのかィ」

沖田は、半分驚き、半分照れて居るように慌てる。それを見た神楽はますます嬉しくなる。クラスの命運がかかっている大事な時。それなのに自分は楽しんでる。罪悪感はあるが、やっぱり自分も女の子だと思う。

「だって・・嬉しいんだもん・・」

思わず神楽から出た言葉に、そこの場が凍りつく。沖田は真っ赤になって固まる。神楽は照れたように笑いながら、頬を染めて、俯く。狭い個室の中、男の熱気で暑くなり、更に自分の体温が上がり、眼鏡が曇り外してしまったのだった。磯崎は、お遊び半分で、気の強い女を服従させたいと思っていたが、あまりの可愛さに、その場に居た全員が固まる。その 雰囲気が分かってない神楽は、一人モジモジとする

<<<<<<<萌え〜〜〜〜〜〜>>>>>>>>

鼻血が出そうだったのを堪え、神楽に見入る。

「ば、馬鹿じゃねぇ?ほら早くいくぞ」

沖田は力任せに神楽の手を引く。場の男たちは、まだ動くことが出来ない。神楽は、沖田の手をスルリと抜け、固まっている磯崎に近づいた。

「クラスの皆から、一位取り上げないでヨ。お願いアル」

磯崎を見上げ、神楽はお願いする。見上げられた神楽の瞳は蒼く綺麗で思わず見とれる、ねぇねぇと神楽が服を引っ張ると、ようやく意識を取り戻し、どもった声で分かったと答えた。それを聞いた神楽は、先程までの雰囲気が嘘見たく、顔を輝かせ、

「ありがとうアル!!」

と満面な笑みで答えた。イライラしている沖田の元へと帰ると二人は部屋を後にする。磯崎を含め、その場の男たちは、放心状態のまま、とにかく可愛い〜と連発していた。




手を沖田はドンドン引っ張っていく。痛いと神楽が言うが離してくれない。神楽は逆に沖田の手を両手で持ち、力ずくで止める。するとさすがに沖田も止まった。後ろを振り返る沖田の顔は不機嫌そのもの。

「沖田。何でそんなに怒ってるアルカ?」

「別に」
「さ、さっきはありがとう・・それと、ぶ、文化際、一緒に回ろうヨ」

しかめっ面だった沖田の顔は、瞬く間に緩んだ。神楽は耳まで赤くし、一生懸命に沖田を誘う。その態度にイラつく気持ちも消え去り、沖田は神楽の手を取り、自分の手と絡めた。神楽は顔をあげ、柔らかく微笑み、手を握り締めた。やっとの事で神楽は沖田と文化祭を楽しむ。水風船釣りに、金魚釣り、一緒にメイドカフェに行く。客は少なくなっており、安易に席につき、談笑を楽しむ。そして、行きたかったお化け屋敷に着いた

「ココ、入りたいアル」

小さな声で言う神楽を、小さく笑いながら中に入る。神楽は先程お化け屋敷には入っている。なので本当は恐くない、少しでもこの状況を利用して、沖田にくっ付いていたいだけだった。それが分かったのか、沖田は神楽の腰に手を回す。さすがに神楽は離れろと言うが、沖田は耳元で、くっ付きたいんだろィと囁いた、一気に思考が停止した神楽を笑い、ドンドンと進んで行く。女の子同士で入るのと、沖田と二人で入るのは全然違った。別の意味でドキドキする。別の意味で心臓がもたなかった。短いながらも、神楽は甘い時間を過ごす。徐々に明るくなる出口が憎らしくなるほどに。


……To Be Continued…

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