act 7

「急がし過ぎるアルぅぅ!!」

教室から廊下を何回も往復する神楽。あの甘い時間。あれは嘘だったのではないだろうかと思う程の急がしさ。
甘い時間に酔うあまり、自分が実行委員だと言う事を忘れていたのだ。沖田らのライブは、既に始まっている。だが確実に行けないのは分かっている。もう何度となく聴いた歌。それでもやっぱり聞きたかった。沖田らは歌うごとに、深みを増していく。聞くものを魅了する。頭の先から、足のつま先まで、鳥肌がたった。体育館がライブと化す。

「あぁ〜〜〜!!行きたいアル〜〜!」

全力疾走しながら神楽は叫ぶ。次から次へと自分に降りかかる雑用。ゆっくりなんかしてられない。これで、新八がライブに出ていたらと今更ながら神楽はゾッとした。自分ひとりじゃさばききれない量。新八も同じく目を見張る忙しさだ。体育館の方から、沸きあがるような声が聞こえた。一曲目は土方。二曲目は高杉。そして三曲目が沖田だった。あれは一曲目の土方の歌が終わったらしい。ライブは、はなっから決着が付いたといっても過言ではない。比べ物にならなかった。まずライブの前に配られた顔写真つきの3zのライブ紹介。女の子が殺到した。他校から来る生徒たちで溢れた。現在の体育館は人が波のように押し付けてうねっている。中には、沖田らが一時ライブしていた時からのファンもチラホラと見え、大変な混雑になっていた。歌が始まると、その熱気は頂点に達する。

イライラしてはいけない。自分がやらなければ、必然的に新八にその重みは降りかかる。それは絶対したくないと、雑念を振り切り、何回も見たじゃないかと自分に言い聞かせ、神楽は疾走し続けた

「あっ!!神楽ちゃん!!」
声に気付き、ツン止めりながら、体を立て直し、後ろを振り返った。立っていたのはミツバだった

「あのね、総ちゃんラストでしょ?私十四郎さんの楽しんだから、変わるね。お妙ちゃんももう見たから、今頃新八君と補助に入ってると思うわ。しっかり楽しんできてね。またちゃんも、今見に行ってると思うから。あと、入るときは裏口から、表は入れないだろうかって。十四郎さん達が言ってくれたのよ。」

ミツバは、柔らかくふふっと笑うと、まだ迷ってる神楽の背中をポンと押し、楽しんできてねと体育館の方へ促した。ゆっくりと神楽は走り出す。新八が大変な思いをしている中、自分が楽しんでいいものかと迷っていたが、吹っ切れ、その足を、体育館に向け強く蹴りだした




「神楽ちゃん!!こっちッス!!」
裏口から入ったら、其処には既に、袖口から4人を見るまた子がいた。
凄まじい爆音に会場は包まれている。音と熱気が、体に纏わり付く。クラクラしそうな感覚に襲われる。練習と本番とではこんなにも違うのかと神楽は唖然となる。会場が一つとなり、歌ってる高杉はなんて気持ちよさそうなんだろう。見ているまた子は、うっとりと見つめている。こいつら本当に素人かと思うようなライブ・・。少しだけトッシーのも見たかったと思う神楽だった。

「あっ。神楽ちゃん、次は沖田君ッス!!」
食い入る様に見ていたまた子は、袖のカーテンから身を引き、神楽を立たせる。
「ほら、よく見えるッス!」
また子は、微笑みながら沖田を指差した
耳打ちするまた子からは、私も委員会の仕事手伝ってくるから楽しんでとの事だった
本当にいい友達を持てて、自分は幸せだと思う

ライトの眩しさに神楽は思わず一瞬目を瞑った。その時
神楽は、言葉を失う。土方とギターを交代させ、中央に沖田がたった。ドキドキと体からは大きな音をだし、緊張と興奮が交差する。無意識に手をギュっと握り締め、心臓の前に置いた。
「あっ・・・」
沖田が、袖口の神楽を見た。思わず声が出てしまった。心臓の音はありえないくらいにドクンドクンと大きくなる。生唾を飲みこむ。いつものサド笑い。口元をあげ、ニヤリと笑う。柄にもテメーが緊張すんじゃねぇ・・・。まるでそう言ってるようだった。急に神楽は恥ずかしくなる。バ・カ・ヤ・ロ・ウと口を動かすと、マイクから離し、ボソッと動く。それがステージ内だけで聞こえるような、いつもの<うるせぇ・・>だった

勢いよく音楽がかかる。神楽は沖田から目を離せない。沖田が歌いだす。
<コイツ・・こんなに格好良かったアルカ・・・?>
発音のイイ英語を、自分のモノの様に操り、音楽にのせていく。今までの、どんな歌より、練習中のどんな歌より、今この瞬間の沖田が、一番いい・・。神楽は思わず体をブルっと震わせた。これで一位取れなかったら、この学校は狂ってる・・そう思えるほどに・・。会場からは、溢れんばかりの熱気がこもる。

こんなに人を感動させる事が出来る・・。
私、今こんなに感動してる・・気が付けば目が熱くなり、潤む

曲が終わるとほぼ同時に、客からの大歓声が沸く。割れそうなほどに響く声。
「わっ!!!」
放心状態の神楽を、今しがたステージを終えた沖田らが袖口に戻ってきて、沖田は神楽を抱きしめた。突然の事に神楽は慌てふためく。
「ヤベー。気持ちよるぎでさぁ」
沖田を含め、土方、高杉、近藤は、見た事もないような顔だった。歓喜でいっぱいいっぱいな顔。それはとても眩しかった。神楽も自然とぎゅううと力強く抱きしめる。それは、今更ながら、歓喜余った事で、体から溢れてきた涙を隠してしまいたいとも思ったからだ。しがみつく神楽を沖田は受け止め、ゆっくり体を離す
「っ・・お・・前ら・・カッコ・・よすぎアル・・」
顔をあげた神楽は、もうどうしようもなくらい涙が溢れてきた。純粋にこのライブに感動したのだ。神楽を見る男たちは、嬉しいような恥ずかしいような・・言いようのない感情に、顔をくしゃっと子供みたいに崩さした・・

……To Be Continued…

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