act 18

泣かせたかった訳じゃない。こんな事になるなんて思わなかった
ただ、アイツを大切にしたかった
欲に負けて、勢いでしたくなかった

本当は、負けてしまいそうだった
アイツが、精一杯頑張って、誘ってるのも分かった
でも、対抗心からきてるものだとわかってるからこそ、止めたんだ

初めから、もう一度、同じ場所を探す。部屋も、海辺も、民宿の周りも・・
声を張り上げた。その後から聞こえるかも知れない声に耳をすませて・・
けれど何も聞こえてこなかった

休む暇も無く、ただただ全力で走り続けた

あれから、かなりの時間が経つ
妙には言ったが、不安は大きくなり、どうしようもなく本当は恐かった
失う事が恐かった。息も途切れ途切れ・・それでも走り続ける

・・・・・・・・・・・・・・・・・

一通り泣いた。頭はもやがかかったように、ガンガンと痛む
それでも、本当にここから動かないわけには行かない事くらい、神楽も分かっている
でも、本当に闇雲に走って、どう来たのか分からなかった
携帯を取り出すが、どうやら本当に充電が切れてしまったらしい

もうすぐ、夜中に近くなる。本当に帰りたくない訳じゃない。
会いたい・・どんなに拒絶されても、私は会いたい・・
こめかみを押さえながら、ゆっくりと立つ。頭が割れそうだが、こんな所に居るわけには行かない
ゆっくりと、もと来た道を戻る。とりあえず山に・・・
真っ暗。視界は無い。それでも、土地勘が無いので、元に戻る可能性は、山しかなかった

戻りたい・・・沖田の元に・・・
それだけを願い。足を踏み入れる。頭がガンガンと、思わず顔をしかめる
こめかみを押しながら、ゆっくり、ゆっくりと降りる。足はすべりそうになるが、木々に捕まる
なだらかな斜面なのが救いだった

耳鳴りがしてくる。キ〜ンと言う甲高い音
「っ痛・・・・・」
思わず声が出える。意識が遠のいた。体はふらつき、そのまま持っていた木の枝から手は離れ、体は倒れた・・・



その倒れた体を支えたのは、沖田だった




「総・・・」

薄れ行く意識の中で、会いたかった人に会えたと、笑みをこぼす。そして本当に気を失った

意識がない神楽・・先程拒絶した男が、気絶した後に、どんな顔をしたか見せたかった
切なそうに、今にも泣きそうに、幸せそうに、ほっとした様に、怒ったように・・・
言葉では表せないような顔・・・
気絶した神楽を、大事に、大切に、強く・・・抱き締めた。   強く  強く
愛しそうに髪を何回も撫で、頬に何回もキスをする体に巻きつけた腕を抱き締め、放さないとでも言う様に・・・


...........

闇雲に走る。妙には、あぁ言ったが、内心冷や汗が出始めていた
いけるトコは、どんなトコでも行った
それでも見つからない・・・恐怖が出てきた

ふと視線をおとすと、いつも神楽が使っていたミニタオルが落ちていた
拾い上げて見上げてみると、其処には、真っ暗な山

まさか山に・・?考えたが、神楽ならありうる。しかもこの状況悩んでる暇は無かった
視界はゼロ。それでも其処に足を踏み入れた

もし・・ここも違うかったら・・考えたが今は上る事に集中する事に決めた
耳を澄ますと、上のほうから音が漏れる。パキパキと木を踏む音

もしかして・・足は速くなる。声を出し、呼べば分かる。しかし肝心なトコで、声が出てくれない
心臓はバクバクと音を外に出す。頼りは上がっているこの足だけだった

小さく、掠れる様に、声が聞こえた。聞き間違うわけが無い。確かにアイツだ
願いは確信へと変わっていく

疲れなんて吹っ飛んだ

足場の悪い山を登っていくと、影がうっすらと見えた
目は大きく開かれる。やっと口から出そうな声。大切なその名前を呼ぼうとした時、その名の持ち主はぐらっと傾く
咄嗟、空気に声が溶けた。口だけ開いて、声は飲み込まれる

間一髪。その体を抱き締めた

「バカヤロウ・・・もう絶対ぇ・・・離さねぇ・・・」
気絶しながら、微笑む神楽を、強く強く、離さないと抱き締めた

……To Be Continued…

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