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国境警備、
文字通り国境の警備を意味する。

表面上、電気の安定供給で戦争は無くなったが、
同時に他国よりも電気を確保することは国として重要な役割を持つようになっていた。

事実、電気の安定供給は尾獣とその媒体、人柱のような存在である人柱力によって支えられていた。
その人柱力の保護と確保が電気の安定供給そのものだった。
その為、人柱力は常に他国から狙われている存在でもあった。

国境警備はその外壁の一部でもある。

「砂嵐は、去ったか」

黒い頭巾を被り、黒い服を着、黒い靴を履いた全身黒尽くめ。
さらに、顔には黒い隈取をした男は、風が吹き抜ける砂漠で呟いた。
国境警備地点の一つ、黒尽くめの男・カンクロウは長い砂嵐に溜息をついた。

砂漠で砂嵐は珍しくない。

砂嵐が来れば壁に隠れ、地下に隠れる。
そして、ただ通り過ぎるのを待つ。

砂の国は耐えることの多い国だと言われる。
昼は灼熱の太陽と照り返す砂、
夜は真逆の寒さ。
土地柄、育つ植物は限られている。
食べ物も少ない。
そして砂嵐の脅威。

砂漠は侵略する価値すらない、そう嫌味を言われたこともある。

しかし、カンクロウにとっては掛け替えのない故郷だ。
それに他国の者が言うほど悪い土地でもない。
太陽と風に(過度に)愛されている土地だ。

「もう交代の時間だ、我愛羅の奴はまだか。
遅いじゃんよ」

先程の砂嵐で国境警備の交代が遅れていた。
仕方ないことだが、国境警備はあまり面白い仕事ではない、早々と代わってほしかった。

ふと、宙を舞った視線が捉えたのは奇妙な砂煙。
いや、白い煙だった。
先程の砂嵐とは明らかに違う煙に目を凝らした。

「なんだ、あの煙は?」

カンクロウの喉で止まっていた言葉は我愛羅によって吐き出された。

「遅いじゃんよ、我愛羅」

弟の耳に兄の言葉が届いたかどうか、確かめる前に弟は自ら操る砂に乗って飛んでいた。
未だに舞い上がる砂に紛れ、我愛羅は異常な白い煙に接近した。

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