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もうもうと白い煙を上げつつ、走っているのは忍ではなかった。
額に忍が持つ額当てはしておらず、腕に大きく企業名を掲げ、荷台を引いていた。
煙はその荷台の箱から出ていた。

走る男の前に、砂を広げその先を塞いだ。

「な、なんだぁ! また砂嵐かっ?」

足を止めた男の前に、カンクロウが姿を現した。

「国境警備隊だ。その荷物、改めさせてもらうじゃん」

「国境警備? ちゃんと通行手形は持ってます、ほら此処に」

男は腕に掲げた企業名を示し、縫い付けられた布の通行手形を指さした。

下手に懐に手を入れたり、手を隠すような真似をすれば忍相手では殺されかねないため、
通行手形のように直ぐ提示しなければならない物は布製の簡易手形と板状の正式手形が存在する。
通常は簡易手形を示した後に、正式手形を提示する。

「これで良いですか? 正式手形も出します?」

「出せ」

カンクロウは、さり気なく人形を操る時に用いるチャクラの糸を男に飛ばし、男の挙動を見極めた。

男はゆっくりとした動作で首から下げた紐を手繰り、紐の先にある板を表に向けてカンクロウに見せた



通行手形は本物らしく、通行の許可も出されていた。

それでも今現在、異常な煙を上げている物を通すわけにはいかない。

「その荷物も改めさせてもらう」

カンクロウが一歩進んで、荷物を示すと男は両手を広げた。

「それは出来ません! これはお客様から預かった大事な荷物です。しかも、この炎天下でお見せする

わけにはいきません!」

慌てた様子で荷物を守ろうとする男に砂が巻きついた。

突然の事に慌てた男は砂で持ち上げられ、身動きがとれずに叫びを上げた。
カンクロウの隣から姿を現した我愛羅は、カンクロウに開けるように目で訴えた。

「俺が開けるのか?」

渋々、荷物に近寄るカンクロウの目には、
普通の断熱材を用いた配達用の箱にしか見えなかった。
ただ宛先が問題だった。

「ぐぅっ」

「どうした?」

カンクロウのぐうの音に我愛羅が問いかけた。
額に日光の為でない汗を浮かべて、カンクロウは宛先を指さした。

「宛先がチヨ様だ。こいつは面倒な荷物だ」

興味がない荷物ではない、ただ興味を持っても良い荷物かどうかさえ迷う荷物だった。

宛先のチヨ様は砂の国の相談役だった。
しかも、砂の国の相談役は姉弟で、チヨ様は姉だった。
相談役が宛先の荷を改めるには勇気が必要だ。
何せ、現実的に首が飛びかねない。

「カンクロウ」

我愛羅は久しく兄の名を呼んだ。

「開けろ」

「……我愛羅が止めた荷物じゃん。我愛羅が開けろよ」

互いに責任を負いたくないのか、開けたがらない。
それでも関心を引く荷物に、好奇心が黙っておかない。

「あぁ、もうこれも仕事だ!」

我愛羅は決して自ら荷を改めないだろう、損な役割はいつもカンクロウに回ってくる。
それを多少は仕方がないと思いつつ、カンクロウはチャクラ糸で煙が出る箱を開けた。

「あ? なんだこりゃ」

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