1


***

洗濯物を勢いよく広げて干した。
昨日煤に汚れた服は気にしていた通りに黒い跡が残った。
溜め息をついた。

「これって短くしたら夏服でも通用するかしら」

特に汚れている裾を手で掴んで隠し、長さを見てみる。
これぐらいなら模様の一部に見えるかもしれない。
それとも、いっそ黒く染めてしまって柄にしてしまおうかしら。
帰ってから考えよう。

汚れても構わないような服でも接客に失礼でない服。

「そんな都合のいい服は無いって」

長袖のエプロンを一枚鞄に忍ばせて家を出た。
いつも通りの大通、人混み、並ぶ商店、看板猫。
一昨日まではこの路を真っ直ぐ進むと仕事場の茶屋だった。
でも、今日は右に曲がって新しい仕事場の事務所に行く。

「まだ壊れてる」

事務所の入り口は昨日訪れた時に私の額に激突した上に傾いていた。
帰る時は訪れた時よりも傾いていた。
昨日のままだ。

「違う! 直したら壊した馬鹿がいるだけだ、うん」

背後から雇い主の一人、デイダラさんが声をかけてきた。
何故か特徴的な黒地に赤い雲のコートは少しだけほつれている。
隣には無傷で服の汚れもない、人相の悪いサソリさんが背中を丸めて立っている。

「どうしたんですか、その服! どこかお怪我でも?」

振り返って傍に駆け寄るべきか、躊躇った。
まだ親しい間ではなく、距離間が掴めていない。

「うん? オイラは怪我なんてしてねぇ。そうだ、you、裁縫は得意か?」

もしかして、縫えと?

[no back] | [next]
-home-
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -