10/08/26〜10/10/01
ペル
待合室
今日と云う今日は絶対に云ってやる!
いつもいつも! ビビ様ビビ様と、アラバスタ王国の王女を溺愛している護衛隊副官・ペルに!
王国の見回りと訓練を終えて、ペルは夕方頃、宮殿に帰って来る。必ず中庭に下りて来る筈だからと、中庭にある渡り廊下に背を預けて空を見上げる。
私はビビ様のお世話役(遊び相手)として、ビビ様のお傍にずっと仕えてきた。そして、その傍には必ずペルが居て、いつも私達を見守ってくれていた。だけどもう私は子供じゃない……今日こそ、幼い頃から憧れだったペルに、この想いを伝える日なんだから!
ふいに風を切る音がして立ち上がると、いつの間にか中庭にペルが下り立っていた。
「ペル!」
「――? どうしてこんなところにあなたが……ビビ様は?」
ほら、またビビ様、だ。
「ビビ様はお勉強中」
「そうでしたか……さ、中に入りましょう。直に夜になります」
アラバスタの夜は冷える。日が暮れると温度が急激に下がるのだ。
「……ちょっと待って。話があるの」
「何でしょう?」
ペルは嫌な顔一つせずに、微笑んで足を止めた。アラバスタ最強の戦士と云われているけれど、ペルの笑顔も性格も本当に優しい。そして空を飛び回るハヤブサの姿と、疾風の如く戦う姿は本当に格好良いのだ。そう思いながらペルを見つめていると、ギュッと胸が切なくなる。
「どうしました?」
そんな様子に気付いてか、ペルが腰を屈めて私の顔を覗き込んでくる。
「……ペル」
「はい」
すかさず、ペルの唇に短くキスをぶつけてやった。離れ際、“大好き”と云う言葉も添えて。
「――! ……!!? ……!!!!」
白い肌のペルの頬がカァーッと赤く染まり、らしくなく酷く動揺して声も出ない模様。
「……ふふっ! “ビビ様”ばっかり云ってないで、たまには私の名前も呼んで?」
また明日、ここでお迎えするから!と云って、茫然と立ったままのペルを置いて、渡り廊下から宮殿に駆けて行った。
「……大好き、か……ずるい娘だ――」
去り際に小さく聞こえた、柔らかく微笑んだ様な声が、また私の心をギュウッと掴む。
次の日、ペルからキスを貰うのはまた別のお話。
Fin.
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お題タイトルからペルが浮かんだものを選んだのですが、なかなか好評で安心しました! ペル大好きなのですけど、余裕があれば是非とも連載とか書きたいですね。イケメンで優しいってすふぁらし過ぎます。
拍手ありがとうございました!
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