11/04/26〜11/10/25
トラファルガー・ロー

ぐるぐる



「ロー、どこー?」
「ここに居る」
 ぽかぽか陽気の航海日和、と云うかピクニック日和な今日この頃。
 生憎、島はまだ見えないし、潜水艦の甲板は狭いけれど、気分だけは味わいたいと思って、カゴを手に外に出た。
「食い物の匂いがするな」
 眠るベポに寄り掛かって日向ぼっこをしていたローを見つけ、歩み寄ると鼻をひくつかせるベポとロー。しかしベポはまだ起きる気配は無さそうだ。
「サンドウィッチ作ったの。あと紅茶も淹れたし、お菓子もあるし!」
「厨房でゴソゴソと何かやってるのは見たが、コレの為か」
 ローは小馬鹿にするように笑ったけれど、ちょうど腹は空いていたらしく、私よりも先にサンドウィッチに手をつける。
「海王類のハムとノースのチーズを挟んでみたけど……美味しい?」
 いまだにベポに寄り掛かったまま、だらしない姿勢でモゴモゴと口を動かしながら、ローは紅茶を、と手を伸ばす。
「ん、まァな」
 その手にマグを渡しながら、私は思わず微笑んでしまった。
「ふふっ」
「笑うような事は云ってねェが……」
 そんな私を怪訝そうな目つきで見つつ、ズズ……と紅茶を啜るローは、もう一つとまた手を伸ばす。
「ふふ、ちょっと可笑しかったから……、あ」
 自分もサンドウィッチを手に空を仰ぐと、遠くの方に海上をぐるぐると旋回する海鳥が見えた。
「! ロー、魚が! 鳥がぐるぐる……いっぱい!」
「もう少し整理してから話せ」
 ガタ、と立ち上がって指をさせば、ローはかったるそうな顔をしながら腰を上げる。
「あァ……こりゃァ魚群が居る証拠だ。進路をそっちへ少しずらすか」
 晩飯決定だな、とローはサンドウィッチを咥えながら、操舵室の方へ向かって行く。
「ベポも起こす? 釣り大会でしょ?」
 その背中に声をかけると、ローは少し考えるようにベポを一瞥し、私を見た。
「その前に“それ”はしまっとけ。ベポに全部食われちまうからな」
 それ、と顎で指したのは“ピクニックのお弁当”だ。
「しまっちゃうの?」
「それは後でおれが食う」
 微かに口角を上げてそう云うと、ローは船室の方へと入って行ってしまった。
 私は足元でぴーぷーイビキをかくベポを見下ろして、ちょっと申し訳無くなりながらも、しゃがみ込んでお弁当をカゴに包み戻す。
「……ひょっとして独り占めしたかったのかな」
 くすりと笑いながら、これから賑やかになるであろう甲板をカゴを持って歩く。
 滅多に口にはしないけれど、きっとローも同じ気持ちだったに違いない。
 ――この時間が少しでも長く続くようにと。
 ローの指示で潜水艦は二時の方角へ、漁船を呼ぶと云う海鳥の方へと舵を取り始める。
 ぐるぐると飛ぶ彼らが方々へ去る頃には、今度は二人きりの、のどかなピクニックが始まるのだろう。








 Fin.










→→→→→→
 長い間拍手お礼になってくれていました。お題が「ぐるぐる」と云う事で色々考えた結果、何故か旋回している海鳥の話って云う……海賊船じゃなくて漁船だよ!
 後にベポが目ざとく(鼻ざとく?)空のカゴを見つけて、文句ぶーぶー云って、結局みんなでもう一度ピクニックしそうだね。
 次ページは「キッド」です。

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