11/01/01〜11/02/12
ユースタス・キッド

狼と兎と流れ星



「何やってんだ、こんな寒ィとこでよ」
 乱暴なブーツの音に毛布から頭を出して振り向く。
「キッドの方が寒そうなんですけど……。一緒に観る? 流星群だって」
「リューセイグン……。ほォ……」
 この反応だと流星群を知らないらしい。けれど分かってるフリをしてるのも可愛いので、そっとしておいてあげようか。
「流れ星が沢山観れるなんて素敵でしょ? 夜の海の上では大体満天の星だけど、流れ星って易々と観れるものじゃないし」
 そこはかとなく説明を交えてそう云うと納得したのか、キッドは私にバレないように小さく頷いていた。
「だからこんな時間にこんな所にいやがんのか」
 後甲板で毛布に包まって座り込んでいた私の隣にキッドがドカッと座る。毛布を分けてあげようとしたら、首を振って制された。
「どうして? 寒いでしょ……?」
 首を傾げた私は黙ったままのキッドにグイッと引っ張られて、キッドの足の間に座らされる。そして背中から腕が伸ばされると、いささか手荒く、けれどゆっくり抱き締められた。
「こうすりゃイイじゃねェか」
「そう?」
 フフッと笑ってその温もりに安堵しながら、星空を見上げる。キッドも一緒に見上げているのだろう。
「……――なァ、これどんくれェで終わるんだ」
 暫く流れ星を堪能していると、焦れたようなキッドの声が聞こえた。
「さあ? ピークが過ぎるのはあと一時間くらいだと思うけど」
 沢山観れるのなら観れるだけ嬉しいものだから、体力の限りは居続けたかった。
 しかし、何だか私を抱き締めるキッドの手つきの雲行きが怪しくなってきた気がする……んですけど!?
「ちょっと……! なに、キッド!」
「リューセイグンは飽きた。んで、次はお前を食う」
「は、いィ!?」
 こんな寒いのに不思議なくらいに温かいキッドの手が、私の服の中に忍び込む。
「ちょちょちょ……!!! ま、まだ観てたいんんですけど!!?」
 何とかもがいて抗議しようとするけれど、スイッチの入ってしまったキッドの腕を止める事が出来る筈も無い。
「充分観ただろ。次はおれを見とけ」
 ここでするのか部屋に行くか、と私の顔を覗き込んできたキッドの顔はまさに狼だった。
「…………。……ゥ、部屋、いい……」
 それに負けた、云わば兎の私はキッドに抱き上げられ、星空に泣く泣く別れを告げる。
「ハハ……部屋じゃァ、おれしか見れねェなァ」
 甲板を去る上機嫌なキッドの肩越し、最後に見た大きな流れ星は、溜め息を吐く私に肩をすくめたように流れていった。








 Fin.











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 流星群絡みの話をよく聞くシーズンだったので書いてみたのですが、キッドが少しアホな感じに! すみません。そんでもって、キッドの手が凄く冷たかったらかなりの嫌がらせですよね。
 拍手して下さった皆様、どうもありがとうございました!

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