04
「んー、と……じゃあ赤の25!」
「黒の8だ」
 カジノはいつもと同じく賑やかだ。しかし、ルーレットが行われているこのテーブルの周りだけは酷く静かである。
 ディーラーの投げたボールがホイールをくるくる走り、綺麗に赤の25番に落ちた。
「やった! また私の勝ちね!」
 ナセが嬉しそうにチップを受け取る。隣の鰐は苦々しい表情で葉巻の煙を吐いた。
 ルーレットコーナーの少し離れたところでは、カジノの客が好奇の視線でナセを、憧れの視線でクロコダイルを見ていた。
 オーナーのクロコダイルは、カジノにはあまり顔を出さない。更にはゲームをする事も無いので、従業員ですら興味津々の様子で二人をチラチラ見ている始末だった。
「……では、次のベットをどうぞ」
 ディーラーが清算し終えてそう云うと、ナセはレイアウトをザッと見る。
「次は黒の2にする!」
「……赤の36」
 ルーレットをしているのは二人しか居ない。クロコダイルがナセと席に着いた時にルーレットに居た客は、七武海と戦えるワケもないと早々に退散していた。
 ボールはまたもナセの言葉通りに黒の2に落ちる。
「やった! これで10連勝!」
「……てめェ、何か細工してやがんじゃねェだろうな」
 クロコダイルはディーラーを睨むが、ディーラーはとんでもない!と首が取れるのではと思うくらいに振った。
「ちょっと、クロコダイルさん」
 ナセがクロコダイルの腕をつつく。
「あ?」
「あなたの店なんだから不正なんてあるワケ無いでしょう? それに、負けてる人がそんな事云うのは大人げないと思う」
 ナセの言葉にクロコダイルとディーラーは目を丸くした。ディーラーは冷や汗までかいている。
「ね?」
 ナセはそんな事はお構いなしに、澄ました顔で小首を傾げた。
「……。そういうお前はやけに強ェじゃねェか。ここで散財したとは思えねェ……嘘じゃねェだろうな?」
 渋い表情から、いつもの――眉間に皺がある――表情に戻ったクロコダイルは、自分の賭け金が没収されていくのを見ながら、短くなった葉巻を灰皿に潰した。
 ディーラーはホッと息を吐いている。
「カジノでスッたのは本当。恥ずかしいけど」
 次はどこにしようかと、ナセはレイアウトを見る。
「ルーレットにすれば良かったのかな? ポーカーみたいに頭を使うのは駄目だったみたい」
「フン……運がいいのか悪ィのか分からねェな」
 新しい葉巻に火をつけるクロコダイルの横で、ナセはクスクスと笑った。

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