02
 ミス・オールサンデーの計らいで、バロックワークスの事務所に身を置く事になったナセ。
 “ボスの計画の邪魔をしない”と云う条件のもと、ナセはミス・オールサンデーと共に日々を過ごしていたが、彼女が指令で外に出向く時などは事務所で留守番をしなければならなかった。
 ついて行った事で任務に支障が出てしまえば、仲良くミイラになるのが約束だからだ。
「――また置いてけぼり。つまんないなあ……」
 レインディナーズの地下のミス・オールサンデーの部屋で、ナセは嘆いていた。
 借りた本は読み終わってしまったし、他にも本は沢山あるが大半が難しい古文書のようで自分には読めない。何か暇潰しになるものはないかと部屋を出て事務所を覗く。
「あ、クロコダイルさん!」
 珍しく事務所にはクロコダイルがおり、燭台の並ぶ長テーブルや大水槽など洒落た部屋に、唯一そぐわぬデスクで何やら書類に目を通していた。
「クロコダイルさーん」
 重苦しいオーラを纏うクロコダイルに、こんなに気軽に話しかけられるのはナセくらいだろう。
「……」
 そんな彼はと云うと、黙ったまま書類を見つめているばかりでナセに視線すら寄越さない。
「ねえ、クロコダイルさん! 暇なの私!」
 ナセはデスクのすぐ脇に立ち、クロコダイルの顔を覗き込む。
「おれァ暇じゃねェんだ。邪魔するな」
 仕事の手を止めずにピシャリと返されたナセだが、そんな事で折れる娘ではなかった。
 気を取り直して今度はクロコダイルの横に立って、その腕を掴む。
「――あ?」
 眉間に思い切り皺を寄せたクロコダイルが、書類を捲る手を止めてナセを見る。その事にナセはにっこりと笑った。
「やっとこっち見てくれた!」
「!」
 クロコダイルは目を見開くと、何故か一瞬、視線を泳がせて咳払いをした。
「……。何の用だ」
「姉さんが居ないから暇で仕方ないの。何かいい暇潰しはない?」
「暇潰しか……」
 ふとクロコダイルは自分の腕を見て、尚も掴み続けているナセの白くて細い腕に目を留める。そして何か考え付いたのか、ニヤリと笑った。

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