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「そんなに揃う事って珍しいの?」
「くま野郎はいつも来るみたいだが……おれなら、こんな場所はなるべく来たくねェな。政府の人間にも海軍の人間にも出来れば会いたくもねェ」
 ナセはふと思う。もしかしてクロコダイルは、ナセをアラバスタの外に出してやる為に、色んな景色を見せる為に、召集命令に応じたのではないだろうか、と。いつもなら蹴る筈だったその命令を、あの時受けたのはどういう考えに及んでの事だったのか――。
 自分の考えだったから違うかもしれない。けれど、そう云う事にしておこうと、ナセはふふっと笑った。
「何だ、ニヤけやがって」
「ううん……早く着かないかなって」
 サーは優しい――そう思うと、胸の奥がトクンと揺れる気がする。けれど、クロコダイルにわしゃわしゃと頭を撫でられると、そんな事はどうでも良く思えた。ふと零れてしまいそうだった言葉をかき消して、ただその心地良さに目を閉じるのだった。



「海軍本部からマリージョアへ――王下“七武海”、サー・クロコダイル様がお着きに……!!」
 聖地・マリージョアの港にそんな放送が響き渡った。
 船を下り、海兵が見守る橋の上を、クロコダイルにひっ付きながら緊張の面持ちでナセは歩く。
 二人はドーベルマンに案内され、荘厳とした世界政府の城へと入って行った。
 初めて見る聖地も政府も珍しく、ナセは目を丸くしたままキョロキョロとしていたが、海兵と何やら話していたクロコダイルに名前を呼ばれて顔を上げる。
「来て早々に会議があるんだとよ。まァちょうどいい……部屋で休んでろ。疲れてるだろう」
 云われてみれば、とナセは小さな欠伸をした。軍艦とは云え快適ではあったが、やはり長い船旅は初めての事で、揺れる事の無いベッドに横になったらすぐにでも眠れそうな気がする。
「でもサーも疲れてるのに、私だけ休んじゃっていいの?」
 疲労があるのはクロコダイルも同じだったが、召集に応じた七武海が揃ったとなれば、有無を云わさず会議が始まるのが常なので、構わねェ、とクロコダイルは云った。
「一人にさせるが……悪ィな」
「ううん……! じゃあ会議頑張ってね!」
 政府の侍女に連れられながら手を振るナセを見送り、クロコダイルはいつもの円卓の間に向かった。
「おーおー! おいでなすったか、ワニ野郎!」
 部屋に入ると、既にそこには三名の七武海と、会議に常に参加している中将らが坐していた。やかましいピンクの塊は無視して、クロコダイルは自分の席に着く。
「よォ鷹の目……余程の事が無い限り、お前がここに来る事は無ェと思ってたがな」
 くまとミホークの間に座り、円卓に置かれた書類を手に取る。

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