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「会議の内容には興味は無い……暇つぶしだ」
しれっと云って、ミホークはコーヒーを啜った。
「フフ! おいワニ野郎、無視すんじゃねェよ!」
「――あァ、揃ったか。よく来たな、海のクズ共」
すると、ドアが開き、海軍本部元帥・センゴクが入って来る。浮かべる不気味な笑みと言葉は“仏”の名にはそぐわない。
「四名も七武海が集まってくれるとは有り難いな。早速、会議を始めるとするか……いいか? おつるさん」
「構わないよ、早く始めてくれた方が私も助かるからね。ドフラミンゴ、ちゃんと椅子にお座り」
円卓にて静かに七武海の様子を観察していた海軍本部中将・つるが頷くと、一人の海兵が席を立ち上がり、今回の召集の意図と書類の説明が始まった。
ドフラミンゴは納得の行かなそうな顔をしつつも、テーブルから下りて椅子にだらしなく腰掛ける。ミホークはテーブルに足を投げ出し、手と組んで目を閉じているし、くまは書類も見ずに聖書を捲っている。
センゴクは、会議に参加する姿勢のまるで見えない三名に溜め息を吐いたが、一名だけはしっかり話を聞いているようで少し安心していた。
それはクロコダイルだったが、実際はその説明を流し聞き、書類をぼんやり眺めながら、ナセの事を考えているのだが――。
そんな者達の集まる会議で話がまとまる訳も無く、大半は海兵らの説明とセンゴクの難しいお言葉とドフラミンゴの悪ふざけだった。
とりあえず、クロコダイルも着いたばかりであるしと、本格的な会議はまた明日と云う事でその場は解散になった。
「おーおーワニ野郎、ちょっと待てよ!」
解散になると、クロコダイルはそそくさと部屋を出て行く。
ドフラミンゴがちょっかいを出そうと追いかけるも、もう廊下にもその姿は無かった。
「――何だァ? アイツ、妙にせわしねェなァ」
「ああ、きっと連れが気になるんだろうね」
首を傾げるドフラミンゴの後ろで、大参謀・つるが笑う。
「連れェ?」
「可愛い女の子だよ、ワニ小僧なんかにゃ勿体無いくらいのさ。何処で拾ったか、その子を連れて来てるんだよ」
その言葉に、ドフラミンゴだけでなく、ミホークもくまも反応した。
「……ほう、クロコダイルが娘をな」
「フフ! フフフ!! おもしれェ!! こりゃァ、またとんだゴシップじゃねェのか!?」
「……だが、的を得ている……」
そんな盛り上がりもつゆ知らず、クロコダイルは自室へと急ぎ足で戻っていた。
部屋の前で髪の乱れを直し、深呼吸して葉巻をくわえ直す。急いで来たのがバレないようにだ。
ドアを開けて広い部屋に入ると幾つかの大きな窓が開いていて、心地良い風が流れている。そして、大きなベッドにナセが眠っているのに気付く。
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