021
まとわりつくような暑さが去ったと思えば憂いた秋空が私を見下ろしていた。
「First name、帰らないの?」
「ん?帰るよ」
ただいまを言ってもおかえりのない独りぼっちの我が家へ。
教室を出るFirst nameの背中をビーデルと悟飯はそれ以上声を掛けれず、ただ見送った。
「元気、ないですね」
「……」
悟飯の言葉に応えず、ビーデルはFirst nameが消えた扉をじっと見つめていた。否、恨めしげに見据えていたと言った方が正しいだろう。
「First name、どうしちゃったのよ」
ようやく出てきたビーデルの声が今にも泣きそうなほど震えていて、悟飯はそっと彼女を抱き締めた。
「私は幸せね。こうやって私が少しでも不安になったり、泣きそうになったら支えてくれる腕があるもの。でも……」
あの子はいつだって「平気」って泣きそうに笑うのよ。その笑顔は誰の手も受け入れはしないと言ってるの。
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