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強い女だと思っていたんだ。でも、彼女はどこまでも弱く弱く弱く。


「里、ぬけ?」


片目だけが見開かれた。隠された目は果たして閉ざされたままなのか、それとも。

Family nameFirst name並びに鈴音リツ、両名が里抜けしたという声はあっという間に里中に広まった。


「シカマル、笑えない冗談だ」

「冗談じゃないっすよ。現にナズナが探しに飛び出して行きました」

「……ユキ、真白ユキは」

「すぐに火影様に呼び出されたようです。でも、真白さんも知らされてはいなかったようで」

「……ッ」

「どこ行くんすか?」

「……決まってるでしょーよ」

「……こんなこと俺が言える立場じゃないっすけど」


カカシ先生、あんたが行って何か変わりますか?


「シカマル、本当お前言うようになったね」


カカシは、息を吐いた。今まさに飛び立とうとしていた羽を下ろした鳥のように。

空を仰ぐ。

晴天だ。


「強い女だと思ったんだ」

「……」

「弱い女だと安心したんだ」

「あの人は、あの人たちは強い人間ですよ」

「……あぁ、そうだな」


自分たちの道を自分たちで決めたんだ。

ここではなく、どこか違う場所で。

でもきっと彼らは、この里が窮地に陥った時、どこからともなく現れて、惜しみなく手を貸してくれるだろう。


「あぁ、俺は本当に馬鹿な男だな」

「……そっすね」


シカマルはカカシに倣うように空を仰いだ。きっと今頃、自分の恋人は親友の背を探して森を大地を駆けて駆けて駆けて、声が嗄れるほど名前を呼んでいるだろう。そして、絶望と落胆を背負って帰ってくるに違いない。

そしたら、そっと背を撫でてやろう。

ここには自分がいると。

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