14
強い女だと思っていたんだ。でも、彼女はどこまでも弱く弱く弱く。
「里、ぬけ?」
片目だけが見開かれた。隠された目は果たして閉ざされたままなのか、それとも。
Family nameFirst name並びに鈴音リツ、両名が里抜けしたという声はあっという間に里中に広まった。
「シカマル、笑えない冗談だ」
「冗談じゃないっすよ。現にナズナが探しに飛び出して行きました」
「……ユキ、真白ユキは」
「すぐに火影様に呼び出されたようです。でも、真白さんも知らされてはいなかったようで」
「……ッ」
「どこ行くんすか?」
「……決まってるでしょーよ」
「……こんなこと俺が言える立場じゃないっすけど」
カカシ先生、あんたが行って何か変わりますか?
「シカマル、本当お前言うようになったね」
カカシは、息を吐いた。今まさに飛び立とうとしていた羽を下ろした鳥のように。
空を仰ぐ。
晴天だ。
「強い女だと思ったんだ」
「……」
「弱い女だと安心したんだ」
「あの人は、あの人たちは強い人間ですよ」
「……あぁ、そうだな」
自分たちの道を自分たちで決めたんだ。
ここではなく、どこか違う場所で。
でもきっと彼らは、この里が窮地に陥った時、どこからともなく現れて、惜しみなく手を貸してくれるだろう。
「あぁ、俺は本当に馬鹿な男だな」
「……そっすね」
シカマルはカカシに倣うように空を仰いだ。きっと今頃、自分の恋人は親友の背を探して森を大地を駆けて駆けて駆けて、声が嗄れるほど名前を呼んでいるだろう。そして、絶望と落胆を背負って帰ってくるに違いない。
そしたら、そっと背を撫でてやろう。
ここには自分がいると。
[ 104/141 ][*prev] [next#]
[目次]
[栞]