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あぁ、本当、趣味が悪いというか、なんというか。私の一番ナイーブなところを突っついてくる連中だ。

拳に着いた血が固まりパラパラと落ちていくのを眺めながら、First nameは長い息を吐いた。

そんな姿を少し離れた場所からサクラは見ていた。否、見ていることしかできなかった。


「……怖い」


思わず零れた言葉に、ハッと口を覆う。凄いと言おうとしていたのに溢れ出たのはそれ以上で真逆のもの。

まるで何かを振り払うかのように、 吐き棄てるかのように、慈悲もなく男たちに暴力を振るうFamily nameFirst nameはサクラが知っている女性とは掛け離れていた。


「あー、しんど。ピンクちゃーん、そっち終わったー?」

「……」

「ピンクちゃーん?」

「あ、は、はい!終わりました!」


サクラの手は汚れ一つなく綺麗なままだった。


「Family nameさん、大丈夫ですか?怪我は」

「大丈夫大丈夫、怪我なんてしてないよ。これ私のじゃないから安心して」


服に付着した赤黒いそれを見せ付けながらへらりと笑った彼女に、サクラはいつもとは色の違うゾワリと肌が粟立つ感覚を覚えた。

あぁ、この人は、私とは違う。


「First nameさん!」

「あ、リツ。お迎え来てくれたのー?って、ユキもいる!うっわ!これもしかしなくても火影様に叱られるパターン?」

「First nameさーん!」


脱兎の如く現れたリツは何の躊躇もなく血塗れのFirst nameにぎゅっと抱き着いた。何やら小声で言葉を交わしているようだが、サクラの耳には届かなかった。


「まったく、リツは。無事か?」

「うん、へーき。それより」


すぐさま状況説明を始めたFirst name。ものの数秒で理解した真白ユキはすぐさまシカマルとナルトに指示を出した。未だに立ち尽くしたままのナルトをシカマルが小突き、我に返ったナルトはサクラの元へと駆け寄ってきた。


「サクラちゃん!大丈夫か!?」

「うん、私は大丈夫。それより」

「これ、あのねぇちゃんが一人でやったのか?」

「……うん」


きっとナルトも自分の同じ気持ちだとサクラは察した。


「えーっと、春野さんだっけ?」

「あ、はい!春野サクラです!この度は」

「あー、そういうのいらないから。同じ里の仲間でしょ?お互い様お互い様。さぁ、あの女性たちを家に帰してあげよう。そして」


僕らも帰ろう?

帰ろう、真白のその言葉にサクラはどっと肩にのし掛かっていた重たい何かが消えた気がした。


「はい!」


Family nameFirst name、彼女は恐ろしい人だ。きっと鈴音リツも、そして真白ユキも。

彼らは、闇夜の鴉。慈悲もなく、狙った獲物はその鋭い嘴で命を奪う。ただ、彼らも同じ木の葉の里の人間だ。

里を帰る場所だと慕い、里の人間を仲間だと護る。

彼らは恐ろしい。だけど、味方である。

サクラは楽しげに笑い合う三人の背に、いつかの自分とナルト、そしてもう一人の大切な仲間の姿が重なって映った。

あぁ、彼らも私もなんら変わらない。

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