07
「は?ちょちょちょちょ、First nameさん?またまたぁ、そんな冗談」
「じゃないから」
真顔で言ったFirst nameの言葉にリツの顔からもスッとふざけた色が消える。
宿場に泊まった翌日のことだ。朝から宿場は騒がしかった。何事かと近くの仲居に聞けば客の娘が攫われたと。しかも三人。しかもしかも。
バタバタバタバタバタバタと床板を煩く鳴らしながら下りてきたのは。
「さ、サクラちゃんがいねぇってばよ!」
どーん。
まさかの忍まで連れ攫われた始末。
「リツ、昨日の気配は?」
「うーん、消えてるねぇー」
「え、何、じゃあ私たちのせい?」
「そんな!First nameさんの所為なんかじゃないっすよ!連れ攫われたの連れ攫われた奴のせい!自己責任!だから、気にせずこのまま帰り」
「ちょっと、そこの青年」
「First nameさーん!?」
えー、巻き込まれちゃうのーってボヤいてるリツを放って素人丸出しの金髪の青年に声を掛ける。
巻き込まれるのではない、巻き込んだのである。ちゃんと後始末しなければ、後味悪過ぎるじゃないの。
「あ!昨日の!」
「うん、私、Family nameFirst name。ねぇ、シカマルくんは?」
「今、サクラちゃんの部屋だってばよ!俺、シカマルにねぇちゃんたち連れて来いって言われて」
「あぁ、なるほど」
話しながらも既に足はピンクちゃんの部屋へ向かってる。
「俺らが呑気にまぐわ、がふっ」
リツの顔面にFirst nameの裏拳が決まった。
「うずまきくん、うずまきくん。うずまきくんたちってピンクちゃんの隣の部屋だったよね?」
「そうだってばよ!シカマル!連れてきた!」
私たちが泊まった部屋と変わらぬ畳の上で片膝をついていたシカマルは、すっと立ち上がった。
「First nameさん」
「シカマルくん、何か見つけた?」
「何も」
First nameはぐるりと部屋を見渡した。荷物はそのまま。布団も乱れたところはなし。ピンクちゃん、春野サクラは現火影様の直属の弟子だ。あの怪力も伝授されていると聞く。さらに医療忍者なだけあって頭もそうとう切れるはず。
その忍が、何の形跡も残さず消えるとは。
「よし」
First nameは一つ瞬きをした。
「ここに木の葉隠れ上忍Family nameFirst nameの名に於いて緊急任務発動を認許する。各自、情報収集に当たれ。何も得ずとも暮れにはここに戻れ。では……散 」
「え、え?えっとー」
影のように消えたシカマルとリツ。そしておいて行きぼりをくらったのは、うずまきナルト。
「はぁ、うずまきくん。君、噂通りね」
「噂?そ、それより、サクラちゃん助けに」
「動くな」
今にも飛び出しそうなナルトをFirst nameは制止した。
「任務が始まった。私はそう言った。そして、ここでの上は私だ。私の言うことを聞いてもらう」
「な!?なんでだってばよ!俺は!」
「ここにいる上忍の中で、私が一番最適で最善だと私が考えたからだ。現に二人は既に任務に走った」
「でも!」
「逸る気持ちは分かる。私も人間だ。ただ私は君よりも冷静だ。今、私たちには何もない。それこそのその助けに行く場所も分からない。闇雲に探す?馬鹿馬鹿しい。私たちは忍なのに?」
「……ッ」
「分かったら、散れ」
First nameは目を閉じた。もう話は終わりだと言うばかりに。
「……ふぅ」
行ったか。
次に目を開いた時には、そこにはうずまきナルトの気配さえ残ってなかった。
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