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023

エイジ783ーー世は稀に見ぬ平和である。


「あ、センパイおはよーございまーす。また二日酔いですかー?」

「おはよう、ルーちゃん。二日酔いじゃなくて、寝不足」


パタンと力なくロッカーを閉じてハンドバッグを手に取った。下着姿の後輩に「遅れるわよ」と言い、一足先にロッカー室を出る。

歳をとった。幾つ歳を取った?数えたくもない。父と母は相変わらず世界中を飛び回っている。趣味で。私は高校卒業とともに家を出た。もう親が、なんて歳じゃない。あの人たちがどこで何をしようとも、どこでのたれ死ようとも知ったことではない。

あぁ、歳をとったな。

年甲斐もなく夜更かしなんてするもんじゃないなと凝った肩を撫でた。


「センパーイ。もう待って下さいよー」


黄色いトーンの後輩、さっきロッカーで置いてきぼりにされたのが不満のようだ。はち切れんばかりの豊満な胸に、わざとワンサイズ下のワイシャツを着ていると聞いた時はさすがに引いた。睫毛バーで、唇プルンで朝からバッチリメイクはふりそそぐ太陽の如く眩しかった。


「ルーちゃん、もう少し早く来たら?君、支度時間掛かる子でしょう?」


「はーい」軽い返事に駄目だなこれはと呆れつつもどうでも良いと思ったのも本音。正直、この後輩は好まないのである。

何の縁あってか、というかブルマさんのコネなのだが、今はカプセルコーポレーションで働いてる。もちろん技術開発部ではなく、ただの事務だ。若い頃は受付嬢なんてやらされてたけれど、今はもう引っ込ませて頂いた。


「あ、センパイセンパイ、今日社長のご子息が来るらしーんですよ!」

「……へぇ」


カプセルコーポレーションは今や世界規模である。そのため街中に『CP』と掲げられた高いビルが何軒か聳え立っているのはもう当たり前の景色だ。ブルマさんやブリーフさんは基本は自宅の研究施設にいるが、会社がここまで大きくなるとそうも言ってはいられない。たまに名目は視察、本人は遊び感覚で来る。

就職する際、ブルマさんに「だったらうちに来なさいよ」と言われ軽く返事をしたもののまさか本社の受付嬢にされるとは思わなかった。まぁ、学がないことはブルマさんも知ってたから。


「将来は社長!しかもイケメン!今は高校生らしいんですけど、優良株ですよねー」


後輩のルージュはまだ若い。受付嬢をしてても良いぐらい。ただ、見た目は可愛く、美人。誰彼構わず誘惑するらしく、裏に引っ込ませてられたのだ。


「あーあ、知ってたらもっとバッチリメイクしてきたのにー。てか、事務の制服ってイマイチですよねー、受付の時はー」


ペラペラとよく回る口をBGMに私はパソコンを打ちながらも思考はどこかへと飛び去っていた。

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