05
玄関に立ち尽くす二人。気まずいなんて思っているのはきっと私だけなのだろう。爽やかな笑みで私を見下ろしているオジサンの視線から逃げるように真っ直ぐ家の奥を見据えていた。
「First nameちゃん、すっかり大人びちゃったね」
「はぁ」
「あれ?もしかして俺のこと覚えてない?」
ぎくり。
こんな素敵オジサンなんて知りません。
「あはは、そっか。まぁ、俺も歳とったからなー」
「……失礼ですが、お幾つで?」
「ん?四十一、かな」
アラフォーですか!?
「あはは、そんなに驚かなくても。酷いなー」
驚きを口に出さずも顔に出てしまったらしく、彼は困ったなと笑った。
いや、しかし、この驚きは年齢に反する見た目の若さへの驚愕ですから。
「昔は理一くんなんて言いながら引っ付いてたんだよ。って、覚えてないか」
「あー、ごめんなさい?」
きっと、この人の中の私はまだ真っ白で無邪気に笑う無垢な幼い少女なのだろう。だけど、実際はこれだ。社会の波にしっかり揉まれて、やさぐれたオバサン。
可愛げ?あぁ、それどこに捨ててきたんだっけ。
「お待たせ。じゃあ理一、よくお礼言っておくのよ」
「わかったよ」
一人で登った坂道を、今度は彼と肩を並べながら下った。そして、またスイカを抱えながら二人で登るのだった。
[ 130/141 ][*prev] [next#]
[目次]
[栞]