短編 | ナノ


・たしぎちゃんと助けられた女の子の話
・百合注意!



「栄養失調と軽い脱水。怪我は深くないから、すぐによくなるわ」

「そうですか、ありがとうごさいます」

 何かあったら呼んでね、と部屋を去るナースさんに頭を下げてから、ベットの横に置いた椅子に座って、横たわる彼女に笑いかける。

「もう大丈夫ですからね」

「……」

「私はたしぎ。あなたの名前を教えてくれませんか?」

 つとめて優しく呼びかければ、消え入りそうな声がソフィアと名前を紡いでくれた。

「そうですか。ソフィア安心してくださいね。もう大丈夫ですから」

 そっと華奢な手を握る。けれど、彼女はその手を引いてしまって、少しだけ悲しくなった。

「……私、穢れてる」

「っ、そんなことありません!」

 痛々しいその言葉に、思わず大きな声で否定を返してしまう。
 海賊船に監禁されていた彼女が、どんな目にあったのか想像できないほど馬鹿じゃない。それでも、私は彼女が穢れてるだなんて思えなかった。

「あなたは穢れてなんかいません。絶対に」

「……じゃあ、キスして」

「キス、ですか。…いいですよ」

 思わぬ提案に戸惑いながらも、母親が子供にするようにその額に唇を落とす。それでも、彼女の顔は晴れない。

「やっぱり、穢れてる」

「…そんなことありません」

 そっと、今度は唇を重ねて柔らかなキスを交わす。ゆっくりと離れて微笑めば、ソフィアはようやく笑ってくれて、私まで嬉しくなった。

だから、私はキスをした


 あなたに笑って欲しいから



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