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  その手を取れなかった人の話



バーニッシュになってしまった男主の手を取れなかったレミーさんの話


まずあの人ちょっと頭固いところありそうだから、男同士っていうことを随分気にしていた。たぶん主くんが口説いて口説いて口説き落としたお付き合いだったんだ。
学生時代の秘密の恋かもしれない。

で、レミーさんの知らないところで、ひっそりと変異を起こした主くんだ。
ああ、これはもう普通ではいられないや、ってどこか他人事のように考えてた。

それから、レミーさんをどこか人のいないところに呼び出して、大事な話があるんだって切り出した。
「別れ話なら聞きたくないからな。お前から口説いてきたくせに勝手なこと言うな」「いや、違うんだけど」
勘違いさせてしまったらしい、って謝ってから、それよりもっと酷い話だよ、って手のひらに炎を灯したんだ。
「おれ、バーニッシュになっちゃったみたいなんだ」
だから、一緒に逃げてほしい、って困ったみたいに笑う恋人を、抱きしめたいのに、動けなかったレミーさん。
「……やっぱそうだよな。ごめんな」「っ、待ってくれ、違うんだ」「いいよ、大丈夫。愛してるよ、レミー」
おれのことなんか忘れて、普通に幸せになれよ、と手を振った彼の顔が涙で滲んで見えなかった。
そうして、その日、レミーの恋人は姿を消した。

あの時、一緒に生きよう、とその手を取れなかったことを後悔している。バーニッシュだって人間だ。それをレミーさんは痛いくらいに分かってる。

なんだかんだで本編後に再会します。「よ、よう、レミー」ってなんとなく気まずそうな主くんの襟元引っ掴んで「まだ好きでいてくれるか。それとも、あの時、その手を取れなかった意気地なしになんて愛想をつかしたか」って恫喝するよ
「ちょ、おいレミー! みんなが見てる」「それがどうした! 答えろ!」
男同士だから、と周りの目を気にしまくってたレミーがいつになく大胆で、ずっとずっと彼を思い続けてた主くんはとりあえず抱きしめるとこからはじめた。
「…愛してるよ、レミー。おれのことなんて忘れて良かったのに、馬鹿だなぁ、お前」「次は、躊躇わないって決めたんだ。誰に何を言われても、後ろ指さされてもいい。お前が好きだ、愛してるんだ、だから」
って衆人環視の中で熱烈なラブシーンやっちゃう2人ですよ。レミーさん色々吹っ切れてた。



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