はじめてのチュウ (宮城リョータ)


「……あー、眠れねー」

訳もなく寝返りを繰り返しみても眠気は襲ってこないどころか頭はだんだん冴えていく。瞼を閉じてみても、暗闇の中で目を見開いてみても、思い浮かぶのは彼女の姿ばかりで。
彼女を思い出していく度に彼女が恋しくなる。さっき別れたばっかりだってのにもう会いたくて声が聞きたいだなんて。

だから、眠れねーのだってきっと、君のせいなんだ。

**

今日の彼女は、……いや、今日の彼女も可愛かった。

オレを見上げると頬を染めて笑って、オレの名前を呼んで。嬉しそうに、大切そうにオレの名前を呼んでくれるから幸せで。そんな君がオレはやっぱり大好きで。だからもう我慢の限界だったのかもしれない。
あの時は、みみたぶがもえているのかと思うくらいに熱くって、周りの音も聞こえねーくらいに心臓の音がうるさくって。
それでもふと目が合った君の名前を呼んだら、君が目を瞑ったから。すげー緊張したけど両肩を掴んで顔を近づけた。それから自分の唇と彼女の唇とをくっつけて、チュウをした。

はじめてのチュウを。君とチュウを。

一瞬とも数分とも思えたその時間がものすごく幸せで。彼女の温かさと柔らかさに涙が出そうになって。でもそんなカッコわりぃ所は見せたくねーからグッと飲み込んで。それからゆっくりと離れたら、ふふっと照れくさそうに笑った君はとても可愛かった。
そんな君を前に、胸をきゅっと掴まれたような気がして、やっぱり我慢が出来なくなって。君に優しくしたくて、君を大切にしたくて。あー、やっぱり好きだって抱きしめたら、「私も」と返ってきたからそういえば声に出てたのかもしれねー。今にして思えば。
それでもそんなことも気にならねーくらいに、はじめてのチュウというか、君とのチュウは最高で。オレの好きを全部君にあげるし、これからも好きだよなんて思いを込めながら抱きしめた腕にぎゅっと力を込めたら、やっぱりまた目が潤んだ気がした。


今日の君は可愛くて。君とのチュウ一つでオレはもういっぱいいっぱいになるくらいに、やっぱりキミが大好きで。
オレに向けられる視線や表情、それにオレを呼ぶ声だって。そんな彼女の言動一つ一つを、眠れねーからって一人でじっくり思い出してみてはやっぱり君が愛おしくて恋しくなる。

そんな幸せな気持ちで布団の中がいっぱいになると、明日は花道にドリブルでも教えてやるか、なんていう優しい気持ちだって何故だか出てくる。


そうして目を瞑ったから、次に君の姿を見たのは瞼を閉じた時なのか暗闇の中でなのか、はたまた夢だったのかはわからないけれど、オレの君への気持ちをもっと伝えて、もっと色々な君を知りたくなった。

だからきっとまたオレは、明日だって明後日だって変わらず君に好きを伝えるんだそう。


[ 1/6 ]

[*前] | [次#]

[目次]

[しおりを挟む]
[top]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -