0.まだこれから


真っ青な空に白い雲、照りつける太陽に今にも皮膚を焦がそうとする日差し。日焼け止めはいくら塗っても意味はなく、汗と共に流れていく。

今日は夏の大会の開会式。制服の夏服に身を包んで、選手たちと同じ帽子を持って。既に様々な学校のマネージャーたちで溢れかえっている座席へと向かう。先輩マネージャーと一緒に座ってからきょろきょろと辺りを見回す。

『……すごいですね。マネージャーだけでもこれだけの人数がいるなんて』
「これでも選手たちの数に比べたらまだまだ少ないけどね。入場行進が始まったらもっと驚くよ」

先輩はふふっと不敵に笑った。その笑顔が不思議で首を傾げながら先輩の横顔を見ていたら、吹奏楽部の演奏が始まって合図のピストルが鳴った。そして、「選手 入場」のアナウンスが入った。


──いっち にい いっち にー

掛け声が聞こえてくるやいなや、校名札を持った女子生徒に続いて選手たちが三列になって球場内へと入ってきた。


揃った行進に大きな掛け声、そして吹奏楽部の演奏。初めて生で感じる“高校野球”に圧倒される。

続々と入ってくる選手たちを必死に目で追っては校名札も視界に入れて、アナウンスを聞き逃さないために耳をすます。うちの学校を見るために。


…………あ……!!


『先輩!今、』
「……うん、入ってきたね。うちのみんなも。始まったよ、夏が」
『……はい!』

先輩の目にはうっすらと涙が滲んでいて、やっぱり高校野球は特別なんだとそんな突拍子もないことを思った。これから私にもそんな特別が待っているのかと思うとこの夏が少しでも長く続いてほしいと願うばかりで。

前を向いて、もう一度目に焼き付けた選手たちの姿はとても輝いていた。



――――――

まだこれから


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