*倉持と酔っ払い彼女 (倉持洋一)


倉持のこと最初は怖いと思っていたんだけど、実際はそんなことはなくて結構よく周りのことを見てるし笑顔は意外と幼くて可愛いしそれなのに野球をしてる時は真剣でかっこよくて、いいなぁって思っていたらそのいいなぁが積み重なっていつの間にか好きになってたの。

……と、彼女は幾度となく嬉しそうに話す。彼氏である俺本人に。



「……お前さ、それ何十回目だよ」
「え〜何十回だって何百回だっていいじゃん」

酒でなのか先程まで言っていた愚痴でなのか、思考が疎かになっている彼女の口から紡がれるのは十八番である俺の話へとすり替わる。彼女にそこまで言ってもらえるのだ。当然悪い気はしない。が、未だにお前が好きなのは初めて出会った頃の学生の時の俺なのか、今の俺よりも良いのかと昔の俺に妬けてしまう。そんなアホみたいな悩みを溜息と共に吐き出すと、いくらかはすっきりとする。

そんな俺の胸中なんて知らずにまだ酒を飲もうと冷蔵庫を物色する彼女に、もうやめとけと水を汲んできて飲ませれば、赤い顔をして両手でコップを受け取り、洋一が優しいとほわほわ笑う。

「お前酔いすぎじゃね?」
「洋一と飲むお酒が美味しいから」
「あー、まあそうだな」

ぽんぽんと彼女の頭に手をやると、洋一は楽しい?と彼女が首を傾げた。

「楽しくなかったらお前と一緒にはいねぇよ」
「洋一の、酔った私の面倒をちゃんと見てくれて相手もしてくれる所が好きだよ」
「……そりゃどーもな」

脈略もクソもないその言葉に力が抜けた気がして口元が緩む。


好きだよと再び笑って俺の手に顔をすりすりと擦りつける様に胸が締め付けられて、これからも離れられねぇし離してやれないなと思った。だから俺も好きだと唇を重ねてみたのだけれど、彼女の温度が伝わって、俺まで熱く思考が鈍くなった。




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