警告

黒子越しに天井が見える。
頭の中で警笛が鳴り響いていた。

「こうやって押し倒したりして、めちゃくちゃにしてやりたい、とか」

そう言葉を紡ぐ黒子は私がよく知っている黒子で、それが逆にたまらなく怖かった。
迫ってくる黒子の顔に、せめてもの抵抗として顔を背ける。

「…分かりましたか?」

背けたことで黒子に向いていた右耳に、優しい彼の吐息がかかって変な声が出た。
恥ずかしい。

「あの、一応これでもかなり自制しているのでそんな声出さないで下さい。本当に襲いますよ?」
「ちが、わざとじゃ…って、え?」

慌てて弁明しようと黒子に向き直ると、存外すぐに彼は離れて行った。
なんだ、からかってたのか。
先に起き上がっていた黒子に手を引かれて身を起こす。

「ここで僕が手を出してしまったら反則だと思うので、しません。今は」
「いつかするってことみたいじゃない…」
「またみょうじ先輩が不用意に僕を家に上げるようなことがあれば、次は自制しませんよ」

そう言って笑っている姿は可愛い後輩のままなのに、どこでこんな腹黒さを学んだのやら。
と、まだ少し熱い頬を押さえて黒子を見た。

「今日は帰ります。言いたいことも言えたし、確認も出来たので」
「あ…うん、わかった」
「本当、次は覚悟しておいて下さいね」

そんなことをいつも通り表情筋を使っていないような顔でしれっと言ってくるのでまた顔が熱くなる。
もう、赤司と言い、最近の高校生ってみんなこうなの?

「お邪魔しました」
「うん、また遊びに…みんなで!来てね」

うっかりまた遊びにおいで、なんて言いそうになってしまったので、慌てて"みんなで"と少し強調して付け加えてから黒子を見送った。
気持ちを落ち着かせる為に洗濯でもしよう…。



(僕は一度振られている身ですから)
(その点赤司くんたちより大胆に行動できていいですね)
(そう簡単には諦めませんよ)


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