たのしいスクラッチ

とある境界を超えたRPGでの、日常の一コマ。

「赤司くん今日何時にインできるのー?」

生徒会室にするりと入り込み、役員でもないのに生徒会長へ声をかける。
他の役員の子からは疎ましそうな呆れたような視線を送られるけどそんなの関係ない!
エーテルインフラの発達によって仮想空間であるPSO2の世界へ行き来できるようになったこの時代。
幼馴染の赤司くんや、そのお友達の黒子くんたちとPSO2の中で遊ぶことがもはや日課となっていた。

「あぁ、もうじき業務が終わるからこれからイン出来るよ。黒子達は?」
「部活終わったらインするって!じゃあ一緒に帰ろう」

と、赤司くんの仰々しい椅子の隣にしゃがみ込んだ。
今日は新しいコスが出る日だから、期待に胸を躍らせながら公式サイトを開いてスクラッチの詳細を確認する。
あ、これ赤司くんに似合いそう。これほしいなぁ!

「終わったよ、なまえ」
「はーい!じゃあみなさん、お邪魔しましたっ」

小さくお辞儀をして生徒会室を後にする。
赤司くんと並んで歩くと女の子の視線が痛いんだよなぁ、でも一緒に帰りたい!
うきうきしながらスクラッチの詳細を赤司くんと一緒に見て、このコスがどうこうっていう話をしながら帰路を辿った。

『シャラ:なまえっち、遅いッスよー』
『まいう:もうスクラッチ回しちゃった〜。みてみてこのコス〜』

帰宅して、アップデートが終わった所でチームチャットから早速黄瀬くんと紫原くんのメッセージを受信した。

『ぷそこ:ずるい!私もこれから回してくるね!』
『征:無駄遣いするなよなまえ』
『ぷそこ:はぁい!』

先にインしていたらしい赤司くんに釘を刺されて二つ返事を返すとすぐにスクラッチ端末にアクセスして、いざ!と意気込みながら三つの選択肢から一つタッチすると軽快な音楽と共にアイテムが排出された。
うーん、これじゃない…。
目当てのアイテムが出るまで繰り返していると、背後に気配を感じてスクラッチ端末から出る。

『ももくろ:なまえちゃんやっほー!お目当てのアイテム出た?』

声の方向を見ると、新コスをフル装備した桃井ちゃんがいた。

『ぷそこ:でないー…』
『ももくろ:どれ?私持ってたらトレードしよっ』
『ぷそこ:天使かな?えっとねー、これなんだけど…』

と、目当てのコスを桃井ちゃんに送るとすぐさまトレード希望の通知が入ってきた。
承認してトレードが始まると、目当てのコスが桃井ちゃんのトレードボックスに入ったのが見える。

『ぷそこ:お返し何がいいー?』
『ももくろ:大丈夫だよ、私ほしいの全部そろっちゃったから』

と、なんとも天使な発言をしてくれたので有り難く頂くことにした。
早速身に着けてみると思ってた通りかわいい!
嬉しくてぴょんぴょん飛び跳ねていたら、いつの間にか桃井ちゃんの隣に小さなラッピースーツをまとった誰かがいることに気付いた。

『ぷそこ:あれ…もしかして、黒子くん?』
『テツ:はい。ちなみに最初からいましたよ、桃井さんと一緒に』
『ぷそこ:えぇ!?ごめん!』
『ダイキ:お前らどこにいんだよ』
『シャラ:緊急来るッスよー、ちなみにオレらはB29にいるッス!』
『ぷそこ:私達も29だよ、ショップ裏のスクラッチ端末のところー!』

そうチャットするとすぐにパーティ申請が青峰くんから届いた。
ほんと桃井ちゃんといい青峰くんといい行動が早いな…。
そう思いながらパーティに参加すると、青峰くんと赤司くんと黛さんが既に揃っていた。
なんか不思議な組み合わせだなって思って聞いてみたら、目の前にいたから、だそうだ。
青峰くんらしい。

『ダイキ:パス1234で部屋立てとくわ。こっちなまえと赤司と黛さんな』
『シャラ:んじゃオレは黒子っちと火神っちと桃っち拾うッスね!』
『みほーく:真ちゃんとはもうPT組んでっから、紫原と氷室さんに投げるわー』


スクラッチしたばっかりなのでアイテムを整理しながらキャンプシップに向かっているといつも通りにぎやかになるチームチャット。
その通知音の中で、一つウィスパーチャットの着信を告げるものがあった。

『征:なまえ』
『ぷそこ:赤司くん!コス似合ってるね、やっぱり』
『征:ありがとう。なまえもそのコス似合ってるよ』
『ぷそこ:えへへー、かわいいでしょ!』
『征:あぁ、すごくかわいいな』

ウィスパーだから表情とかはわからないけど、さらっとそう言われるものだから逆に恥ずかしい。
彼からしたらこのコスに対して言ったんだろうしそれなのに照れている自分が恥ずかしくなった。

『ぷそこ:ちょ、暇だから遊んでくる!』

と、照れ隠しの為にテレプールに飛び込んだ。
もう、昔はあんなこと言う子じゃなかったのに!とか思いながら、ウーダンやアギニスやらを蹴散らしていく。
ノーマルだからか、ジェットブーツの通常攻撃で倒せてしまうからなんとも手ごたえがないな…とか考えていたら突然キャンプシップに戻された。
クエスト情報を見ると緊急クエストの名前があったので、もうそんな時間かぁ、と納得した。

チームメンバーで挑む緊急が一番楽しいなぁ、って、前に赤司くんに言ったらそうだね、って微笑まれたのを思い出す。
ちなみにチームマスターは赤司くん。
チーム立ち上げるって話になった時にさも自然な流れのように決まっててちょっと面白かった。
いつまでもこうやって、みんなで遊んでいたいなぁ。
そんな些細な夢を見ながら、テレプールに飛び込んだ。


(ぷそこ:あ!ドリンク忘れた!)
(林檎:待機中に飲んでおけよ)
(ぷそこ:ちょっとそれどころじゃなかったの!ごめーん!)


[ 2/24 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -