侵入

エンガさんに一喝されてしまったので、避難する生徒に紛れて赤司くんと一緒に廊下を走ってる途中。

「あら、征ちゃんとなまえちゃん?!」
「赤司ー!校庭やっべーよ!見た!?」

実渕さんと葉山さんと根武谷さんといういつもの三人組に遭遇する。
楽しそうにしている葉山さんとは対照的に、実渕さんは焦っている様子だった。

「一体なんなのかしら、テロとか!?なまえちゃんは征ちゃんから離れちゃダメよ!」
「そ、それが、えっと、どう説明したらいいか…!」
「赤司!左!」

背後から赤司くんに向けて叫ぶ声がしたと思ったら、視界に何か黒いものが見えた直後その黒が赤に塗りつぶされた。
赤は赤司くんの髪の色だったらしく、揺れるその赤の隙間から見えたのはダーカーの姿で。

「え…ダーカー!?」
「みょうじ連れて逃げろ、赤司」
「黛さん…生身じゃ無理です!」
「注意を引くくらいできんだろ。…例のやつだな?」

そう問いかけてくる黛さんに赤司くんが頷くと、近くにあった消火器を構えてダーカー…ダガンとクラーダに向けて放った。
他のシップに遠征中の実渕さん達には話していないため、状況がわからないようで首を傾げている。

「生徒会室に味方がいます、そこまで走ってください!」

赤司くんが叫んだあと、黛さん達は私達が来た方向へ走って行った。
ダガン達もそれを追いかけて行ったのでこの隙に学校を出る為に走る。
私がここにいたら被害が広がるだけだ。

「赤司くん…ごめんね、巻き込んで…!」
「オレにも少なからず原因があるんだ、今はとにかく走れ!」

ダーカーを見た他の生徒たちも驚いているようで、廊下も階段もパニック状態だった。
今は二階なので、階段を降りないと校外には出れないんだけどどうにも降りれそうにない…。

「ど、どうしよう!」

人波に飲まれそうになりながらあたふたしていると、赤司くんはなんと私の手を握って上層階へ向かう階段へ駈け出した。
焦ってその手を引き彼の足を引き留める。

「あ、赤司くん!そっち上だよ!」
「屋上なら誰かを巻き込む事はないだろう」
「確かにそうだけど、それなら赤司くんは下に行ってよ!」
「オレがなまえを見捨てて一人で逃げるような男だと思うのか?」

まっすぐ目を見つめられてそんな風に言われてしまったのでちょっとときめいてしまったけどでもダメだ。
今朝のこともそうだけど、ダーカーが狙っているのは紛れもなく私なわけで。

「…じゃあ、赤司くんは生徒会室に行って」
「頑固な所は変わらないな…大丈夫、おいで」

呆れたような溜息と共に微笑む赤司くんがそっと頭を撫でてくれる。
結局私はそうやってあやされて、甘えてしまうことになるんだ。



(頑固なのは赤司くんじゃん…)
(何か言ったか?)
(いいえなにも!)



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