10.永遠にふたりきりだね

『どんな気分だ?』

意識の奥深くに沈んでいった自分自身に、自嘲気味に問いかける。
答えなんてあるはずもないのに。

あの後当然のように一緒に洛山へ進学し、当然のように一緒に暮らしていた。
最初こそ戸惑っていたものの、元々順応性が高かったなまえは何事もなかったかのようにかつてと同じように接してくれていた。
他の男と関わる事を極力控えさせたいからと、一秒でも一緒に居たかったはずなのにバスケ部のマネージャーにはせず、一人で帰宅する事も禁じて。

いつでも自分だけを見ていてほしかった。
あの時もこんな自分をすぐに受け入れてくれたことが嬉しかったし、その反面どちらの自分の為なのか、と当てのない嫉妬に苛まれたりもしていた。
"あいつ"ではない愛し方で、彼女をとことん愛したくて必死になっていたんだろう。
彼女の優しさに甘えて、彼女を壊してしまった事にも気づかないくらいに。

ウィンターカップの決勝戦、初めての敗北を喫して家に帰った時のこと。
"オレ"が声をかけても、動揺もせず何一つ変わりのない彼女がそこにいた。

今までの強引な行動を謝罪して、婚約も嫌ならば解消しようと提案しても彼女は首を横に振るだけだった。
嬉しさが勝るあまり違和感にも気付かなかった、というより、気づかないふりをしてしまったんだ。

きっとなまえの中では、オレは今にも粉々に崩れ落ちてしまいそうなくらいに弱い人間のままなんだろう。
だからきっと、守ろうとしてくれていたんだ。
それがどれだけ彼女の支えになっていたのかも知らず、もう大丈夫だ、と告げてしまった事に後悔してもしきれない。

何故こんなことをしたんだ、と問いかけると、「もう私はいらないでしょ?」だなんて弱弱しく微笑むからやっと気づいただなんて、本当に自分が情けなく思えて仕方がない。

二年に上がってすぐに、彼女は自殺未遂をした。
大量の風邪薬を飲んで倒れていたのを見た時はこのオレとしたことが一歩も動けなくなってしまったほど驚いた。

あの日から、彼女の支えは"赤司征十郎"を支える事になっていたらしい。
愚かなもう一人の自分のせいか、はたまた幼稚で逃げる事しかできずにいたオレのせいか。
少なくとも、彼女の支えであった"赤司征十郎"という人間が、何よりも彼女を苦しめていたという事は事実だ。

「大丈夫だよ、征十郎」

点滴の管が繋がれた腕でそっと頬に触れられて、優しく涙を拭われた。
自責の念に苛まれながらも彼女を見ると、とても幸せそうに微笑んでいる。

永遠にふたりきりだね

病衣に包まれた身体を起こしてそっとキスをされて、きっと自分と同じように彼女も歪んでしまっているんだな、と納得して目を閉じた。



(私は"あなた"を愛してるの)
(あなたに触れる空気さえ恨めしいほどに)
(これで、あなたも私から離れられなくなったよね?)








(壊れていたのは、自分か、君か)
(壊れているのは、私か、貴方か)



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