Dolce | ナノ


▼ photograph / 坂田銀時 / 彩様request



「なまえ、ちょっとこい」


年末に向けて私の家の大掃除を付き合ってくれていた銀ちゃんが、何故か不機嫌そうに私に手招きをした。何か怒られるようなことをしたかと、台所の掃除を中断して居間へと向かった。


「なまえちゃん、正直に白状しなさい」

「はい、何でしょうか」


銀ちゃんの口調に合わせて首を傾げた私の前に、ダンと音を立てて置かれた缶の箱。私はそれを理解するなり、顔が真っ青になった。


「……こ、これは」


ぱかっと開けられたその缶の中には、何枚もの写真が出てきた。ヤバイ、ばれた。私は心の中で白目を剥いてしまった気がする。そんな私をよそに、銀ちゃんがその中から出した写真を見て、私は拍子抜けをした。


「何でマヨラーとの写真、こんな大切にしまってあんだよ!!」

「……えっ?」


私を恨めしそうに睨みつける銀ちゃんの手には、確かに土方さんと写っている写真があった。これは確か、今年の春にみんなでお花見をした時に撮った写真だ。でも別に二人で写っているわけではなく、後ろに山崎さんと近藤さんの姿もある。何かそんなに怒られるようなことはないはずだが。


「それに、これも。あとこれも!」


煮え切らない私の態度に、更にまた缶の中から写真を取り出した。去年の冬に万事屋のみんなとスノボをやりに行って、たまたまそこで真選組と遭遇した時の写真。これに映るのは私と万事屋の三人。…確かによく見ると後ろに土方さんも写り込んでいる。
そしてもう一枚は、あ、これは懐かしい!真選組の人たちがお登勢さんの店で忘年会をした時の写真だ。顔を真っ赤にする銀ちゃんと私のツーショット。あ、これもよく見たら顔が半分切れた土方さんが写ってはいる。


「…これが、何か?全然普通の写真じゃん」

「何かじゃねェだろ!こんなの隠し持ってやがって!お前本当はあのマヨ中毒のこと好きなんだろ!」


眉を吊り上げて私を咎める銀ちゃんに、思わずハテナマークが浮かんだ。確かにたまたまだが、土方さんも写り込んでいる写真が他にも何枚もある。でも、それ以前にその全てに銀ちゃんや新八くん、神楽ちゃん、そして真選組のみんなも写っているではないか。


「どう考えてもたまたま写ってました、て感じじゃん!隠し持ってなんかないよ」

「じゃあ、何でこの缶出した時、お前真っ青になってたんだよ」

「…う、いや、それは」


…言えない!絶対に言えない!これは私の宝物を入れている缶だなんて。銀ちゃんはそれに気付いていないことに、安心してるなんて、言えない!
私は思わず銀ちゃんから目を逸らして、銀ちゃんの手がその缶から緩んだのを見逃さずに、その缶を奪い取った。そしてそのままその缶を抱え込んだ。


「あ、お前!やっぱり他にも何か隠してんだろ!」

「隠してない!隠してないけど!!!」


私から缶を奪い取ろうと、銀ちゃんは私の背後から抱え込んだ缶に手を伸ばす。こんなことしてれば、怪しさ全開なのだが、見られたら何を言われるかわかったもんじゃない。背に腹はかえられないのだ。


「あ、そぉ。なまえがそんな態度なら、俺にも考えがあるもんね」


そう言って銀ちゃんは私の背後に回り込んだ。缶を抱えて丸くなってる私は銀ちゃんの動向が掴めずにいた。何、と聞き返そうとした私は突然銀ちゃんに背後から抱きすくめられた。


「え、ちょ、何?!」

「なまえが離すまで、俺も離さねェから」


そう耳元で囁かれて、図らずも私の心臓が大きくときめいてしまった。温かい銀ちゃんの息が耳にかかるたび、私は先ほどとは違う汗を流す。背中、銀ちゃんの体温であったかいなぁ。


「ってそうじゃない!やめて、掃除しててたから汗かいてるから!やめて!離れて!」

「お前がそれ離してくれたらな」


離す気がないこと、わかっているくせに。意地悪な銀ちゃんの言葉に唇を噛み締めた。と同時に銀ちゃんはそのまま耳にキスをし始めた。ピクリと反応してしまう私を嘲笑うかのように、何度か唇を合わせた後に、耳の形状に沿って舌を這わせだした。


「ちょっと、…銀ちゃんッ、やだ…」


年末ともなれば、いくら屋内にいたって耳はひんやりと冷えてしまう。このボロ長屋に住んでいれば、尚更だ。そんな私の耳を温かい銀ちゃんの舌が弄ぶたび、私の体温が上がっていく気がした。


「やめて、…あっ、銀ちゃ…」

「別にそれ離したくないんなら、離さなくていーけど?その代わりずっとこのままだけどな」


こんな大掃除の合間に、変な声を出してしまって、私は何をしているんだろう。というより銀ちゃんも何をしているんだ!!汗もかいていたのに、そんなことされて、先ほどまで頑なに離す気が無かった私の心が葛藤を始めた。うなじにキスが移ったところで、私は観念したように抱え込んでいた腕の力を解いて、素直に缶を手放した。


「もうちょっと頑張ってくれたら楽しかったのによォ」


どちらに転んでも、結局銀ちゃんの思い通りになるんだから、本当にこの男は悪知恵が働くというか、何というか。意地悪く笑う銀ちゃんは、その缶をひっくり返して私が隠していたものは何かと探し出す。私はまるで悪事がばれた子供のように、正座をしてその行動を見つめていた。


「ん?何これ?」


写真に紛れて茶色い封筒が一枚。とうとう見つかっちゃった。私は思わず項垂れた。その封筒をガサガサと漁った銀ちゃんは、「えっ?なにこれ?」とまた声を上げた。思わずその写真をひったくって、私は銀ちゃんから顔を逸らした。


「お前、それ、付き合う前の、…?」

「そうだよ!バカ!神楽ちゃんとか新八君がこっそりくれたんだよ!」


その封筒に入っていた写真は、私たちがまだ付き合う前に撮られた銀ちゃんの写真だ。万事屋のソファでジャンプ片手に寝ている写真。お登勢さんの店で酔っ払ってカウンターに突っ伏して寝ている写真や、定春と遊んでいる写真。その他数枚も同じように隠し撮りとは行かずとも、銀ちゃんの意思に反した写真ばかりが並んでいた。


「…何でお前がこんなもん持ってんの?」

「その時まだ銀ちゃんから告白されてなかったし、神楽ちゃんや新八君によく恋の相談してたの!したら気を使って、何枚か写真を…」


言ってるそばから私の顔は真っ赤に染まっていたと思う。こんなの隠し持っていたなんて、ストーカーみたいじゃん。しかも、大切にしていたなんて、バカみたいだし、本当に恥ずかしい。穴があったら入りたい、本当に。暫く続いた沈黙に耐えられなくなり、顔を上げて銀ちゃんの顔色を伺った。…何故か銀ちゃんはニヤニヤを隠すように鼻の穴がヒクヒクと動いている。


「お前、そんなに俺のこと好きだったの?」

「あーもう、…そうです!好きだったんです!もーバカ、本当銀ちゃんのバカ」

「ふぅーん」


今度は隠すことなくニヤリと笑ったと思いきや、腕を掴まれて唇を奪われた。突然のことに目を瞑ることもできずに、それを受け入れた。


「ふーん。へぇー、俺のこと大好きなんだ?へぇー」

「大好きとは言ってない!いや、そうなんだけど!って何か銀ちゃんムカつくんですけど!?」

「あーもう、ダメ。我慢できない。」


えっ?と私が言ったと同時に、ガバッと銀ちゃんは私を押し倒した。よくわからない展開に、銀ちゃんの胸を必死に押し返そうとするが、敵うわけもない。


「え、待って待って、なに?!」

「あんあん可愛い声出しやがって、挙げ句の果てに可愛い告白ときたら、もう銀さんの銀さんがコレよ」


ぐいっと太ももに硬い何かが当たって、私はみるみる慌てふためく。汗かいてるって言ってるじゃん!ていうか缶渡したのに、何で結局こうなってんの?…っていうか。


「大掃除は!?!?!」


結局銀ちゃんのペースに持ち込まれて、大掃除は夜中まで長引いてしまった。
皆さん!大切なものは、人目につくところに置いておいたら、ダメですよ!





photograph
(銀ちゃんは何か隠し持ってないの?)
(も、も、持ってるわけねェだろ!)
(どもったー!ちょー怪しい!!!)





-----------


彩様 初リクエストありがとうございましたm(_ _)m
甘いお話とのことでしたが、期待に添えたか心配で年を越せそうにありません(泣)
また感想でもありましたら、拍手にてお願いします。
いつもありがとうございます。

12/29 reina.


prev / next

[ back to main ]
[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -