甘い憂鬱を君に | ナノ
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夢心地


...ん、あれ?これ夢?

目の前には、急な坂道。と、あれ...?なんか降りたところに人影がひとつ。
それ以外には、人は誰もいない。
暗い夜空に散らばった星。俺は見えない糸に引っ張られているような感覚で、あの人影にどんどん近づいていく。
坂道が急だからか歩くスピードが速くなっていく。
ふわふわした跳ねるような足を坂道で強引に引っ張る。
もう少しで、顔が見えそう?...明らかに下を向いている人影をじっと見つめた。

俺とおんなじぐらいの背丈。あの体格。ちょっと寝癖がある髪。
......健人、?
夢だからか、さっきまで捉えていた気まずさを忘れ、名前を呼ぼうとする。
でも何でうつ向いてるんだろ。

きらと光る雫が落ちて、地面を濡らす。
...泣いてる。
それが涙だと気付いた時、咄嗟に手を伸ばしてしまう。まだ、後数メートルある距離。
届かないと分かっていても。

――――後少しで、届きそう。



「おいっ!玲!れーい!起きろ」

ん、あれ届いた?......え、なにが?夢?
何の夢見てたっけ、俺。

てか、今何時?授業さぼって、休憩時間も寝て...、誰か今起こさなかった?

「玲!起きろ!」

!健人!
健人だと分かった瞬間がばっと体が勢いをつけて起き上がった。

「なーお前、号令の時も寝てたぞ。先生気づかなかったから、いーけど。周り笑ってるし」

意識したら聞こえる、クスクスといった笑い声。
うっわ、はっず。恥ずかしい気持ちを隠すために、机から教科書を出す。後ノートも。

「...寝てた?」
「はっ、馬鹿かお前。寝てたから起こしたんだろーが、玲...夢見てた?」
「え、何で...?」

てか普通に話せるじゃん。
ちょっとホッとした気持ちと、不安感。どっちもが俺の頭をかき混ぜる。
なんか今日いろんなことありすぎて、ぐちゃぐちゃだ、頭ん中。
ちら、と通路を挟んだ隣の健人を見る。
あ、夢の話してたんだ。
んー思い出せないなあ。起きた時もちょっとは覚えてたのに。なんだっけ。...届いた?
...届かない?どっちだっけ?

「ん」

通路側から、小さく折ってある紙が飛んでくる。...健人から?
隣を見ると、開けてとジェスチャーされる。
ノートの切れはしに書いただろうと分かる、罫線にそって書かれた文字。

【夢、見てみてた時、健人...って呼んでたんだけど、多分隣しか聞こえないぐらいの声の寝言で】

「えっ」

思わず声が漏れる。
すぐさま健人を見ると、にやにや悪い顔をしている。その顔、うざいよ。

「天寺...うるさい」
「、すみませーん...」

馬鹿!と言う目で鋭く健人を見つめる。
でも...寝言で健人って恥ずかしいもの以外になにもない。
んん、?俺健人の夢見てたんだっけ?
シャーペンに手を伸ばし貰った紙に、さっきの怒りと夢のことを書いた。


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