朧月夜-捌- ※軍人臨也×男娼静雄 |
「何考えてるの?」 「あぅん!……は、っぁ!あぁっ!!」 握り込まれた熱にぐり、と弱く爪を立てられ、現実に引き戻される。まさか先ほどの言葉を口にするわけにもいかず、静雄はただ黙って首を横に振った。 「俺としてるのに、考えごと?」 耳たぶを湿った感触が包み込み、静雄は思わずくぐもった悲鳴を上げた。ねっとりと絡ませた舌をそのまま首筋から背中へ移動させ、時折肌の表面を吸い上げながら、臨也の唇は徐々に静雄の下半身へ向かっていく。腰骨を通り過ぎ、臀部を舐め上げられて静雄は思わず肩越しに臨也を振り返った。 「い、臨也っ」 止める間もなく、立てていた膝を強引に割り裂かれ、ぐいっと尻たぶを開かれる。 「やめっ……ああぁっ!!」 やめろ、と言いかけたところで、秘部にぬるりと舌を這わされ引きつった声を上げた。意図せずとも静雄のそこは臨也の舌の動きに敏感に反応を示し、はくはくと収縮し始める。上体を支えきれなくなった静雄は、布団に頬を擦り付け固く目を閉じた。 「ん、なとこっ……ひぁッ、きたね、からぁっ…やめ、ぁっ、あぁ!!」 ぴちゃぴちゃ、にちゅにちゅと嫌らしい音を立ててなぶられ、やめてくれと心の中で何度も懇願するが、臨也はしつこく舌を突っ込んでくる。 「汚くなんかないよ」 「やあ!……やだっ…ひ、っ…臨也ぁっ、いや、だぁっ…んんッ!」 「ん、……汚くなんかない。シズちゃんの全部、俺に頂戴?」 熱っぽく囁かれ、静雄の目からボロリと涙が溢れた。 こんな、何人もの男の欲望を注がれ続けた身体、汚くないわけあるか。そう怒鳴りつけてやりたいが、静雄の身体は本人の意思に反して浅ましく快楽を拾い上げる。惨めな気持ちを堪えきれずに、静雄は敷布を噛んで嗚咽を殺す。あふれ出した涙は音もなく布団に染み込んでいった。 「ひぅっ……!」 窄めた舌でぐりぐりと中を抉られ、たまらずに唇をかみ締める。熱い舌は、静雄の入り口を執拗に抜き差ししていく。 嫌でも耳につく、ぬぷぬぷという卑猥な音に静雄の性器がぶるっと小さく震えた。腹につくほど反り返ったそれは、絶えず先走りを溢れさせまっさらな布団にいくつもの染みを作っていた。 「舌だけじゃたりないのかな?」 「ひぃんっ……ふ、あ、っ…ぁ、」 ひくつく孔を指先でつつかれ、静雄の腰が戦慄く。臨也の指先が悪戯に入り口を引っかく度、まるで誘うように腰を揺らめかせた。過ぎる快楽からまともに膝に力が入らなくなっている静雄をもう一度仰向けの体勢に戻してやると、涙で濡れた瞳が臨也を捕らえた。 「……意地悪しすぎちゃったね」 ごめん、と眉を下げた臨也の首にしがみついて静雄はず、と鼻をすする。 「い、から……はやく……っ」 快楽からぐずぐずに溶けはじめた静雄の思考回路はすでにまともに機能していない。身体の内側で暴れまわる熱を吐き出したいという欲求と、臨也を受け入れたいという想いだけが静雄を突き動かしていた。 熱の篭った吐息を絡ませながら、どちらからともなく唇を重ねる。 「ん……、んぅ」 夢中で舌を絡ませながら、自身の秘部にそろそろと手を伸ばす静雄。 性器の先からあふれ出した蜜は陰茎を伝い、ひくつく孔にトロトロと垂れていく。それを潤滑油代わりに二本の指を挿入し、にちゅにちゅと掻き回した。すでに臨也の舌でやわらかくふやかされていたそこは、静雄自身の指を難なく飲み込んだ。 「はっ…ぁん、んん……ッ」 「ん、は……シズ、ちゃん」 飲み込み切れなくなった唾液が白い喉元を流れ胸元を濡らし、上気した肌はほんのりと薄紅色に染まっている。自身の孔を掻き回す指が動くたび、静雄の身体はびくびくと小さく痙攣を繰り返した。 「……いやらしい格好」 静雄の媚態に、臨也の喉がごくりと上下する。 「は、はぁ……いざ…や、……臨也の、…くれよぉっ……!」 ゆっくりと自らの指を引き抜くと、代わりに張り詰めた臨也の熱にそっと触れた。脚を開きながら、誘うように掌の中の熱を擦り上げる。 「っ、あんまり煽らないでよ、ね……っ」 臨也は余裕のない声で呟くやいなや、静雄の太股を抱え上げた。図らずとも目の前に晒される形となった赤く熟れた秘孔に自身の先端を押し当て、息を詰める間も与えずに腰を推し進める。 「……ぁッ!んあ、ああぁっ!!!」 挿入する瞬間こそ僅かに抵抗があったものの、一番太い雁首の部分を飲み込むと静雄の内壁はまるで誘い込むように収縮し始めた。 「は……ぁ、すご…」 「ぁっ、あぅっ……!!」 足の指をぴんと突っぱねて全身を硬直させている静雄の緊張を解そうと、無意識に動き出しそうになる腰を何とか抑え、静雄の髪を柔らかな手つきで梳いてやる。 「っ、シズちゃん……平気?」 静雄がいくら慣れているとはいえ、男の身体は本来挿入されるようには出来ていない。内臓を押し上げるような圧迫感に耐えつつ、こくこくと頷く静雄。臨也は布団を握り締め小刻みに震えている手を取り、しっかりと指を絡め合わせた。 「ん……へ、きだ…からっ……」 「辛かったら言うんだよ」 小さく頷いた静雄の額にひとつ口付けをして、臨也は緩く律動を開始させる。静雄の負担をできるだけ軽減してやろうと、慣らすように浅い注挿をだけを繰り返した。 「くぁっ…あっ……ん、…はっぅ?!」 僅かに苦悶の混じった声が、ある一点を突いた瞬間はっきりと濡れた喘ぎに変わる。それに伴うように、臨也自身を締め付ける内壁はひくひくとうねった。 (そういえば・・・) 以前、悪戯に静雄の中に指を埋めた際に彼が異様に反応を示した一点があったな、と 臨也はおぼろげな感覚だけを頼りに、何度か角度を変えて腰を突き動かした。 「……ぁあっ、や、ぁっ!!」 下から抉り込むように突き上げた瞬間、臨也の手を握る静雄の指に痛い程に力が篭った。絞り取られるようにきゅうっと自身を締めつけたそこに、臨也が微かに笑みを浮かべる。 「……見つけた」 今しがた確認したばかりの箇所に重点的に狙いを定め、徐々に打ち付ける速度を上げていく。浅く抜き差ししていただけの動きから、内壁を穿つような動きへ変えてやれば、静雄の口からは艶めいた啼き声だけが絶え間なく溢れ出すようになった。 「ぁっ!…っあん!いざっ、ああぁっ……ふか、いっ、ひんッ!」 腰をぶつける度、肌と肌がぶつかりあう乾いた音とは対比的に静雄の秘孔からはじゅぷじゅぷと濡れそぼった音が零れ落ちる。 「ぁあッ!!ん、んんっ……はぁっ、やあぁっ!!」 「く、……はっ、シズちゃん…気持ちいい?」 静雄はもはや臨也の声が聞こえていないのか、それとも聞こえていても返事をする余裕がないのか。問いに対する答えはなかった。 「あっ!ぁっ、あんっ!んんッ!いあぁッ!」 臨也の腹に擦れる静雄の性器を見て、彼の限界が近い事を悟る。生理的な涙が伝う頬をべろりと舐め上げ、先走りでぐしょぐしょのそこに指を絡めた。 「はあぁっん、いざ、……いざやぁっ…!」 「……っ、うん、一緒にイこう?」 静雄の熱を絞り込むように扱きながら、激しく中を抉る。 「あっ、あァ、……臨也っ!いざ、やぁっ!!ぁあああッ!!」 「静雄……っ」 全身をかけめぐる熱と、互いへの想いとがぐちゃぐちゃに絡まり、二人は互いの名を何度も何度も口にしながら白濁を吐き出した。 荒い呼吸だけが降り積もる空間で、霞み行く意識の底。静雄は臨也の囁く声を聞いた気がした。 「 あいしてる 」 → ← |