TF親子パロ | ナノ





TFあどべんちゃあ:親子パロ@



ディセプティコンとの戦争が終結してから、サイバトロン星では早くも地球時間で15年ほど経過していた。
見渡す限りの荒野でしかなかった首都アイアコーンは多くのオートボット達の尽力によって奇跡的に短期間で復興を遂げ、かつて失われた賑わいを取り戻しつつある。
復興を遂げた後も、多くのオートボットが私にプライムとして残留し、これからも導いて欲しいと望む声が多かったが、私はあえてプライムの任を辞任と言う形で終えることに決めた。
今や、古き時代は終わりを告げ、新世代こそがこれからの星の未来を紡いで行くのだと思ったからだ。
そのためには、いつまでも私のような古参のプライムがいるべきではない。
この星には、新しい風、新たなプライムが必要なのだ。
もちろん、渋る評議会を説得するのは骨が折れたが…意思の硬い私に半ば諦めるように辞任を認めたのだ。
もちろんプライムの証であるマトリクスは評議会に返還した。プライムはマトリクス、そして評議会により選任されるが、私の知る限り未だ新たなプライムは選ばれていないらしい。
それもプライマスの意思なのだろうか。
神の御心は誰にも知りえないがーー
そして…星を救う責務から解放され、再び一市民権を得た私は、もはやプライムではなくただの【オプティマス】になり、首都を見渡せる郊外へ中古の屋敷を買い取って静かに暮らしている。
私一人では無く、息子と一緒に。
その息子の名前は、

「サイドスワイプゥゥーー!!どこだぁ!?オプティマス、サイドスワイプを見なかったか!?」

怒号と共に玄関を蹴破る勢いでヅカヅカ入り込んで来たのは、戦後屋敷の隣で個人クリニックを開業した古き友、ラチェットだ。
鬼の形相で部屋中を見渡す所を見ると、私はまたあの子か…とため息をつく。

「ラチェット、今度はどうしたんだ?」
「あのクソガキ、また私の仕事道具に悪戯して壊したんだ!屋敷の中にいるんだろう、早く本人を連れ出してくれ!今日という今日はお仕置きしてやる…!」
「ま、まあ落ち着いてくれラチェット。サイドスワイプはついさっきお使いに行かせたら、今ここには居ないんだ。代わりに私が謝罪しよう。道具も弁償するから…」
「オプティマス、君は息子に甘過ぎるぞ!」

憤慨して間近に接近して来るラチェットに気圧されつつも、なんとか彼の怒りを和らげようと心みる。

「分かったよ。今からサイドスワイプに連絡を入れてすぐに帰るように伝えるから、まず私が拳骨を一発落としておく。その後は君に引き渡すから好きにするといい」
「あ、ああ。君がそれでいいのならそうさせてもらうぞ。じゃあ、帰って来るまでここで待たせてもらうからな」
「仕事はいいのかい?」
「…どうせ今日の診察は午前で終了なんだ。午後からは暇だから問題無い」
「ふふ、そうか。なら…」

私は通信機能を起動させ、おつかい中(のはず)のサイドスワイプへ通信を入れる。

《サイドスワイプ、今どこにいる?》
《あー、親父か?何だよ?》
《緊急事態が起きた。今すぐ家に帰って来い。ラチェットがお前に話があるそうだぞ》
《うげ…!何でラチェットがいるんだよ!?だいたい俺まだお使い終わってねーし》
《ほう?お使いに行かせてから3時間も経つのにまだ終わっていないのか?どこまで走りに行っているんだ?》
《うぅぅ…!それはその…》
《サイドスワイプ、とにかく今すぐ帰って来るんだ。言っておくが、逃げるなよ》
《え、でも》
《逃 げ る な よ ?》
《………はい》

何度も念を押して、最後は涙声になる息子に苦笑しながら通信を切る。
ラチェットはどこか呆れた顔で私を見ていた。
私はゆったりと微笑んだ。

「今、あの子に連絡を入れた。すぐに帰るそうだ」
「そりゃあ君のドスの聞いた脅しを聞いたら誰でもそうだろうな…」
「失礼だな。昔は私より君の方がずっと怖かったと、バンブルビーやバルクヘッドに聞いたぞ」
「あの二人は昔から嘘つきだ」
「それは酷いな」

可笑しそうに笑う私を見たラチェットは、感慨深げに嘆息した。

「何だい?」
「しかしまぁ…今の君を見ていると、ようやく戦争が終わったんだと実感するよ。戦時中の君はまるで感情が抜け落ちているように見えて仕方なかった」
「そうだったかな…あの頃は正直、笑う余裕が無かったのかもしれないな」
「戦争終結と言っても、あれからまだ15年…だ。この15年の間にサイバトロン星は激変した。君はプライムを辞任して、しかも子持ちになろうとは。当時の君を知っている私から見れば本当に信じられないよ」
「それは、私もだよ。まさか自分のスパークが二つに分かれて、その内の一つがプロトフォームに宿るとは思わなかった」
「そのおかげでサイドスワイプが生まれた…まさにプライマスの思し召しだな。こんな事態は前代未聞だぞ」
「だからこそ、私は地球の家族と似た関係をあの子と築きたいと願ったよ」

私のスパークを受け継いだあの子の幼体を見た時、確かに新しい風を感じたのだ。
生命の息吹、その鼓動の力強さに希望の未来を見た。
そう語ると、ラチェットはクッと吹き出した。

「君はずいぶんと親バカになってしまったな?」
「よしてくれ。私はそこまで甘くするつもりは無いよ」
「で、彼はそろそろ帰って来そうか?」
「そのはずなんだが……うん?」

ふと、屋敷に近づいて来るスポーツカーのエンジン音が聞こえてラチェットと顔を見合わせる。
直後、慌てるようにトランスフォームする変形音と同時にすっ転ぶ音まで聞こえ、私とラチェットは思わず笑ってしまった。


(終)

2



目次 MAIN




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -