TFADV短編 | ナノ





狼の望むこと(スチ→オプ)



「私に用事があるとは珍しいな。スチールジョー」
「そりゃあディセプティコンの新たなリーダーとしては、復活したプライムの面を一度は拝んでみたかったからな。貴様こそこんな人気の無い森の奥までわざわざご足労願ってもない」

ククク…と鋭い爪を口に当てて笑うスチールジョーを、オプティマスは目を細めながら無言で睨む。

「まあそう警戒するな。と言っても無理だろうが」
「当たり前だ」
「罠だと思わなかったのか?」
「狡猾で策士家のお前のことだ。当然丸腰では来ない。だが…周りに部下達の気配が無いのは何故だ?」
「俺としては、今アンタと争うつもりは全く無いからな。信じてもらえないだろうが、今日はただ本当にアンタとお喋りをしたいだけだ」
「お前の特技は嘘だとバンブルビーに聞いたが」
「これは耳が痛い。だが、偉大なプライムの誠実なご判断を願いたいね。とにかく、俺は今は争うつもりはないんだ…」
「………」

やや芝居がかった仕草で、あくまでも対話がしたいと訴えるスチールジョーをオプティマスは凝視していた。
立場上、長年にわたり様々なディセプティコンを見てきたが、スチールジョーのように大胆に単機で接触して来る者は数えるほどしかいなかった。
対話を希望する者もいれば、暗殺しようと目論む者もいた。
中には、あの破壊大帝メガトロンも対話を望んで単機で接触して来た時もあったのだ。
争うのではなく、ただ単に会話するだけの奇妙な逢瀬を密かに心待ちにしていたなど、当時も今も誰も知る由はない。
メガトロンはもういない。
生きているのか死んでいるのかさえも分からない。
だから、もう二度とこちらと対話を望むようなディセプティコンなどいないと思っていたのだが、目の前の笑みを浮かべるスチールジョーは、果たして何を考えているのか。
オプティマスには判断が付きかねた。

「なぁ。そろそろ剣を下ろしてくれないか?このままじゃあアンタとゆっくり会話もできない」

スチールジョーは悲しそうに表情を歪めながら、剣先に爪を引っ掛けて軽く下に降ろそうとする。

「私一人をここへ呼んだ目的は何だ?」
「さっきも言ったが、俺はプライムのアンタと話がしたいだけだ。アンタならいろいろ聞けると思ってな…」
「聞ける?何を」
「そうだな…戦時中の話とか、特にかつての破壊大帝メガトロンのこととかな…同じディセプティコンとして興味深い」
「………っ」

メガトロン。
その名前を聞いただけで、忘れかけていた記憶が蘇る。
そんなオプティマスの動揺が伝わったのが、スチールジョーはニヤリと笑いながらさらに距離を詰めて来る。

「なぁ…アンタになら分かるんだろ?アンタが復活したぐらいなんだ、あのメガトロンももちろん生きているんだよなぁ?メガトロンは今、どこにいる?」
「…私には奴の生死など知りえない。興味も無い」
「嘘だな。メガトロンとアンタの間は切っても切れない何かで繋がっている。アンタが生きているならきっとメガトロンはアンタに会いに来るだろうよ」
「なぜ…そんなことが分かる」
「俺とバンブルビーが、そうだからさ。理屈じゃあないだろう?…分かるんだよ。アンタも、メガトロンに会いたいんだ。会いたいよなァ。どこにいるのやら」
「お前はーーー」

言いかけて、途中で口を噤んだ。

(お前は私の何を知っているのだ?)

不敵に笑うこのディセプティコンが、オプティマスとメガトロンとの間に何があると思ったのだろう。
誰にも知られなかったことを知っているとでも言うのか。

「俺は、アンタに酷く興味がある。伝説のオプティマス・プライム。バンブルビーが憧れ、かつての破壊大帝が狂おしいほどに求めたアンタのことが知りたい…」

スッと伸ばされる長い爪が右手に触れた。
剣先が地面に落ちる。
暗闇に映える黄色のオプティックが獲物を見るかのように、こちらを見上げていた。

「なぁ、対話をしようぜ。オプティマス・プライム」


(終)

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