TFADV短編 | ナノ





未来恋愛昇華(ビーオプ、オプビ)



彼のことは戦前から知っていた。

メガトロンのクーデターから始まり荒廃した故郷から飛び出した後に地球にコッソリと移り住み、戦争に勝利した後は束の間の別れをしてーーまた再び出会った時、少年は青年へと成長していた。
再開した時にどんな言葉を言うべきか、少し悩んだ。
懐かしさと同時に湧き上がる不可思議な感情をどう処理すればいいのかまるで分からなかったからだ。
オプティマスは柄にもなく動揺していた。プライムである自分が目の前の青年に対して酷く臆病になっている自分に。
だから今の自分は間抜けだとつくづく思う。持て余す思いの謎を当の本人に正直に打ち明けてしまったのだから、やはり自分は間抜けなのだろう。
そんなオプティマスにバンブルビーはやや呆れた顔をして「あのですね」と排気しながら口を開く。
「そう言う時は下手に言葉を選ばない方がいいです。オプティマスの気持ちはよく分かっていますから。…それにしても、貴方にも可愛らしいところがあるんですね」
「私が可愛い?別に可愛くはないと思うが…」
素直にそう言うと、何がおかしいのかバンブルビーはクスクスと笑う。
「そういうところが可愛いんです」
「そ、そうか」
「姿は変わっても中身は変わらないですね。何だか安心しました」
「君の方は随分と成長した。体も心も逞しくなっているよ。私は歳を取ってしまったかな…」
「確かに。昔はもっと腰がくびれていましたよね?」
「それを言わないでくれ…」
意地悪げな笑みを浮かべながら言われ、オプティマスは少し落ち込んでしまう。
やはり彼は以前のスタイルの方が良かったのだろうか。
「あ、今前の姿の方が良かったんじゃないかって考えてません?」
ずいっと身を乗り出して来る彼に気圧され、つい顔を反らしてしまう。
「い、いやそんなことは」
「ほらほらオプティマス顔に出てますよ!俺は貴方がどんな姿になっても関係ないですから」
ドギマギするオプティマスを見上げるバンブルビーは何だか無性におかしくてたまらない。
あのプライムが自分に対して慕情を募らせているのだと思うと、優越感と嬉しさで胸がいっぱいになって来る。
(ああ、この人は行動で示さないと先に進めないんだろうなぁ)
誰よりも優しい人だから。
そう思うと堪らなくなってきたバンブルビーは、両腕を広げて力いっぱい抱き締めた。
「ば、バンブルビー?」
急に抱き締められ、驚きつつも振り解くつもりなどなかった。
オプティマスは恐る恐る黄色い背中に腕を回して抱き締め返す。
ますます腕に力を込めて来るバンブルビーにただ戸惑う。
昔、あんなに小さかった背中が今はこんなに愛おしい。
「私は…」
(いつまでも君の隣に立っていいのだろうか?)
プライムとしては失格なのだろうが、それでも叶えたい願い。
「俺は、ずっと貴方と共に生きたいです」
それなのに、秘めた想いすら容易く君に見透かされている。
じっと見上げて来るバンブルビーの顔が何だか近付いているのは気のせいだろうか。
「体格差が憎いですよ。貴方にキスするのですら苦労しなきゃいけないなんて、こう言う時は自分の身長が憎たらしい」
忌まわしげに唸る声に、ブレインの理解が追い付かない。
「すみません、情けないんですが少し屈んでくれませんか?」
「あ、ああ。これでいいか?」
「ありがとうございます!」
嬉しそうに笑うバンブルビーに釣られて思わず口の端が上がりそうになったが、その前に素早く唇を押し付けられた。
「バッ」
名前を口にするのを拒む様にさらに角度を変えながらも深く重ねられ、身を引こうとすれば逃ささないと言わんばかりに首筋にしがみ付いてくる。
「ンッ」
「好きっ、大好きです、ずっと昔から、これからもずっと好きです」
「……あっ」
「好きです、オプティマス」
「〜〜〜っ!」
…やはり私は歳を取ってから間抜けになってしまったらしい。
後にも先にも、この時ほど顔を真っ赤にして泣きそうな顔になった事などないだろうから。


(終)

11



目次 MAIN




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -