はい、手作りお菓子です。(ADVオプティマスとラッセル)
スクラップ工場をオレンジに彩るハロウィンのランタンの淡い灯火は幽暗の世界を道標のように照らしている。
四方を見渡せばジャックオランタンの戯けた笑みがこちらを見ている。さすがデニーとラッセルの自信作だ。どこか無邪気なようで不気味でもある。
そして遠い日の懐かしさも思い出してくれた。
そんな懐かしげにランタンを眺めるオプティマスに声を掛けたのはラッセルだった。
「オプティマスはハロウィンを知っているの?」
「ああ。昔知り合った人間達からハロウィンを教えてもらったことがある。もちろんバンブルビーも一緒にハロウィンを楽しんだよ」
「へぇ〜。今でもその人達に会ったりするの?」
ラッセルが興味深そうに聞くと、オプティマスは寂しそうな笑みを浮かべながら首を横に振る。
「いや…彼らとは連絡を取っていない。私やバンブルビーが地球に来ている事も知らないはずだ」
「え、何で?会いたいなぁって思ったりしないの?」
「もちろん会いたいさ。だが、彼らはあまりにも我々トランスフォーマーに拘り過ぎたばかりに危険な目に合わせてしまった…また再会すれば、きっと彼らは積極的に関わろうとするだろう」
「そんな…寂しくないの?」
「ないと言えば嘘になるな」
本音を言えば彼らに会いたい。
オプティックの光を消して在りし日の彼らの姿を思い浮かべる。
優しく勇敢な人間達。特に子供達にはどれだけ助けられたことだろう。今でもラッセルやデニーが機転を利かしてバンブルビーや仲間達を助けている。
本当に人間とは不思議な生命体だ。的には優しく時には愚かさを見せ付けることもあるが、それら全てがきっと人間という命の魅力でもあるのだ。
我々と何も変わらない、同じ命を持つ仲間なのだと。
「ラッセル、心配はない。たとえどこにいようと彼らと私達は固い絆で結ばれている」
「…それは僕やパパもかな?」
「もちろんだとも」
「よかった。あ、そうだ!オプティマス、トリックオアトリート!」
笑顔で右手を差し出され、一瞬呆気に取られるオプティマスだったがすぐに察した。
「ああ、そう言えばそうだったな。なら……これをあげよう」
そう言ってスッと差し出したものは、ラッセルの頭ほどにもあるカボチャのキャンディーだった。
受け取ったラッセルは角度を変えたり底を覗いたりと、しばらくカボチャキャンディーを眺め回しながらポツリと呟く。
「あ、ありがとう!でも、お、重い…これどうしたの?」
「バンブルビーと一瞬に作ってみたんだが…どうかな?ちなみにオレンジ味だ」
「これ手作り!?でもどうやって食べようかな…」
「食べやすいようにハンマーで砕こうか?」
「…粉々に粉砕しないかなぁ…」
その後も巨大カボチャキャンディーの食べ方について語るラッセルとオプティマスの議論は、そろそろ止めてやるかとデニーが声を掛けるまで熱く続いた。
(終)
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