TFAお題小説4. | ナノ





優雅なひとときに薔薇色を添えた(メガププ)



*無花果さんリクエストのメガププです。以前お題で書いた初恋気分の前後というリクエストで、今回は前を書かせて頂きました。






爽やかな風に澄み切った青空。
そして甘いお菓子に美味しい紅茶。
もちろんトランスフォーマーであるオプティマスとバンブルビーはエネルゴンが原料のお菓子とオイルをちゃんと用意していた。
オイルはともかく、人間が食べるクッキーに似たトランスフォーマー用のお菓子を作れるなんて、サムダックさんはやっぱり優秀な技術者なんだなぁ。もぐもぐとエネルゴンクッキーを口いっぱいに頬張るバンブルビーは素直にそう思った。

「ね、そのエネルゴンクッキー美味しいでしょ?私も味付けに拘ってみたんだ〜。ちゃんと甘い味する?」
「うん、これすっごく甘くて美味しいよ!そっかぁ、サリが食べるクッキーってこんな食感なんだ。サクサクして食べ応えあるし、ラチェットやプロールもきっと喜ぶよ!あ、あの双子達も喜ぶかも!」
「そう?なら良かったわ。実はプロール達の分も残してあるから後で持って行きましょうね!もちろん双子達にも…あれ?オプティマス、さっきから黙ったままだけどどうしたの?」
「………え!?な、何がだい?」

急にサリに問われ、それまで俯き加減だったオプティマスはビクッと顔を上げた。

「何がって、貴方さっきからボーッとしてたから声掛けたんだけど…考え事でもしてたの?何か、珍しいわねー」
「僕も思った」
「そ、そうかな?」
「…ひょっとしてクッキー美味しくなかった?」
「いやそんな事ないさ!とっても美味しいよ、サリ!本当にボーッとしてただけだから…心配掛けてすまないな二人共」
「ふぅん…ならいいけどさぁ」
「憂いを帯びたオプティマスの横顔ってなんかこうエロい…」
「………え?」

ボソッと、何かとんでもない台詞を聞いたような気がする。
思わずバンブルビーを凝視するが、はっと我に返ったバンブルビーがあたふたと両手を振り回す。

「は!?えーとえーとさっきの無し!聞かなかった事にして!あ、そうだサリ、あっちで遊ぼうそうしよう!あ、はははははっ」
「ええ?…もーしょうがないなぁバンブルビーはっ。じゃあオプティマス、私達向こうで遊んで来るからのんびりしてて?」
「あ、ああ」

真っ赤になりながら乾いた笑い声を上げるバンブルビーにサリはこっそり呆れる。
脱兎の如く走り去る彼を、ロボットモードにトランスフォームしたサリが飛んで追い掛けていくのをオプティマスは茫然としたまま見送った。
しばらくして、小さく排気する。

「…本当に何にも考えていなかっただけなんだけどなぁ」

こんなに穏やかな時を過ごすのは久しぶりだから、思わずボーッとオイルを味わっていただけなのだ。
オプティマスは手に持っているカップをシートに置いてゴロンと寝転がる。
遠くの方で無邪気に追いかけっこを始めた二人の姿に思わず頬が緩む。

「たまにはこんな日も悪くないな…」

心地良い秋晴れの風を感じながら、眠気に誘われたオプティマスはそっとカメラアイを閉じる。
だんだん眠気に誘われてスリープモードに入りかけた時、何やら頬に擽ったい感触がしてカメラアイを開く。
そっと頬に触れて見ると、小さな花びらがくっ付いていた。
手に取ってよく見ればそれは薔薇の花びらだった。
しかも、デカい。人間サイズでは無く何故かトランスフォーマーに合わせてデカい薔薇花びらに首を傾げた。

「何だこれ………て、うわぁっ!?」

珍しいなぁと不思議に思いながら眺めていると、今度はいきなり目の前に巨大な花束を突き付けられて思わずオプティマスは仰け反った。
視界いっぱいに広がる真っ赤なバラの花束に圧倒され、呆気に取られる。濃厚な香りにブレインがクラクラしそうだ。
こんなベタな事、明らかにサリやバンブルビーの悪戯ではない。
思い当たる人物…と言うかトランスフォーマーと言えばあいつしかいない。

「…メガトロン。これは何の真似だ」
「フッ…さすがだなァオートボット。やはり我に気付いたか」
「普段から妙な事言ってるディセプティコンはお前ぐらいだから当たり前だろう!後、機体のサイズも考えろ!て言うか堂々と敵の前に花束持って現れるなぁ!?」
「ふはははは!まあそう照れるなオートボットよ!」
「誰も照れてない!」

一体何が可笑しいのか、破壊大帝メガトロンは薔薇の花束を抱えながら豪快に笑っているのを見たオプティマスはなんだか眩暈がした。
しかも遠くの方へ視線を向ければ、メガトロンの部下であるラグナッツやサウンドウェーブがサリとバンブルビーに対して何やら突っかかっているのが見えた。
オプティマスはニヤニヤするメガトロンへ振り返ると静かに睨み付ける。
ギュッとアックスを握り締めた。

「一体何をしに来たメガトロン…!」
「まあそう怒るでないオートボット。今日は別に戦いに来た訳ではないのだ」
「ふざけるな、そんな話を誰が信じるか」
「そんなに我を憎んでいるとはな。悲しいぞ…せっかくこうして貴様に想いを伝えようと思ったのに」
「だからふざけ…………え?」

メガトロンは花束を抱えたまま悲しそうに呟く。臨戦態勢で武器を構えていたオプティマスは何の事か理解出来ず、ポカンとした。
目の前に立つメガトロンは、いつもの覇気に満ち溢れた破壊大帝の威厳が今は見られない。
代わりにー何と言えばいいのか、本当に純粋に悲しんでいるようにしか見えなかった。
まるで遠い昔にクラスメイトから告白を受けたあの時の甘酸っぱい雰囲気のような。
そこまで考えたオプティマスは嫌な予感がして、再度ラグナッツやサリ達のいる方に向いた。
すると、彼らは何故かポンポンを振りながら「がんばれがんばれメガトロン様〜ッツ!」だの、「薔薇の花束で告白なんてロマンティックー!」だのと叫びながら応援しているではないか。

(え?告白?誰が?メガトロンが?…私に?)

オールスパークを発見した時よりも凄まじい衝撃がオプティマスを襲った。
よく考えてみれば、普段からいつもいつもメガトロンはオプティマスに対してしつこいぐらい口説きまくっていた。
まさか。敵同士なのに本気じゃないだろう。あの狡猾なメガトロンの事、絶対に悪意が込められている筈だとオプティマスは意に介さなかった。
しかしこれは。
この状況は。

「オートボットよ」

どうしていいか分からないオプティマスに、花束を持ったメガトロンが一歩ずつ近付いて来た。
真剣な表情が怖くて、無意識にオプティマスは後退る。

「逃げるでないわ」
「に、逃げてなんかいないっ。だいたい何でわざわざこんな真似をするんだ!まさか私が好きだとでも言うつもりか?ディセプティコンのお前が…欺瞞の王が!」
「ディセプティコンなど関係無い。今の我は、トランスフォーマーとして貴様に想いを伝えたいだけだ」
「それをどうやって信じろと?」
「そうだな。まずは貴様を抱き締めるとしよう」
「あっ…」

いつの間にか距離を詰められ、あっという間にメガトロンに抱き締められた。彼らしくない優しい抱擁がオプティマスから抵抗する気力を削いでゆく。ふと、顎に手を添えられて強引に上に向けられた。
至近距離で見つめ合う。一瞬殴ってやろうかと思ったが、あまりにも真剣な表情に実行を躊躇う。
時間が止まったような感覚。このまま永遠に続くのかと思われた時、メガトロンの顔が迫った。
何故か避けようとは考えなかった。
一瞬で重なる唇の感触にオプティマスは慄く。なんて柔らかく優しい口付けなのだろう。
愛おしくて堪らない者へするような、そんな馬鹿な事を。

「泣きそうな顔もそそるな」
「…誰のせいだと…!わた、私はどうしたらいいんだっ…」
「言った通りだ。我は貴様が欲しい」

優しく頬を撫でる温もりが信じられない。
しかしメガトロンは更に信じられない事を言って来た。

「貴様が好きだ。だから我のものになれ」
「嘘だっ!私がまだ若い未熟者だから、簡単に騙せると思ってそんな心にも無い嘘を」
「違う!さっきも言ったが、ディセプティコンだのオートボットだのは関係無い」
「名前で呼ばない癖に、何が関係無いだ」
「ーーーオプティマス」

聴覚センサーで甘く名前を囁かれ、スパークが妬かれたような衝撃にオプティマスは震えた。
ディセプティコン。破壊大帝。ぐるぐるとオプティマスのブレイン内で巡る否定的な事実を、彼の一言一言が崩してゆく。
認めたくないが、でも。
信じたい?
彼の愛情を受け入れれば何かが変わるのだろうか?
ブレインが真っ白になって固まったままのオプティマスにメガトロンは苦笑するしかない。

「これは我自身の意思だ。すぐに信じろとは言わんが、今はこれを受け取ってほしい」

差し出された、鮮やかな真紅の薔薇の花束をオプティマスは受け取った。
受け取ってしまった。

「…どうして薔薇の花束を?」
「地球には花言葉とやらがあるらしい。もちろん薔薇にも意味があって、我は99本用意した」
「何故99本なんだ」
「99本は、永遠に愛している、ずっと前から好きだったという意味があるらしい。今の我にピッタリだろう?」
「…ぶ、くくくっ。お前が、花言葉?」

そんなキザで恥ずかしい台詞を得意げに言うものだから、オプティマスは思わず吹き出してしまった。
笑われたメガトロンは憤慨する。

「笑うな!せっかく我の一世一代の告白を!」
「あははは…っああ馬鹿馬鹿しいな。だったら私も返事するよ」

笑過ぎてカメラアイに滲んでいる冷却水を拭いながら、オプティマスはおもむろに薔薇を3本取ってメガトロンに差し出した。
差し出されたメガトロンは意味が分からず3本の薔薇とオプティマスを交互に見る。

「ぬ?」
「花言葉を調べたんならこの意味も知っているだろう?薔薇が3本なら…」
「お、おぷてぃます?ほんとうにきさっ…お、おまえはわれを」
「貴方を愛している」

薔薇よりも真っ赤になるメガトロンが可笑しくてまた笑った。


(終)

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